7話 トラップエンジニア
「トラップエンジニア?それもレベル1?」
目の前の文字を読み上げると新たな光が文字を作り出した。
【LV.1 設置 解除 発動が可能。 使用可能距離2㎞ 最大設置数5】
…使い方がわからねぇ。
そもそも今まで使ったことがないものをいきなり使うのは無理だよな。
ここは大人しくリリアム様に聞くか。
「リリアム様、ここにトラップエンジニアというスキル名とレベルが1と表記されたのですが、何かご存じですか?」
リリアム様は首を傾げた後、話し出した。
「申し訳ございませんがトラップエンジニアというスキルは聞いたことがありません。レベルに関しては、最初スキルを取得した時1から始まるので年齢の割にレベルが上がっていない怠け者と思われるか、良家の出と思われるだけで特に問題はありません。」
「レベルは後から上がるのですか?」
「使用回数や熟練度でレベルが上がるほか指揮官のスキル持ちの人が10人の班長から100人の部隊長に上がったときにレベルが上がったので実績でもレベルが上がることは確認されています。ちなみに同じスキルでもレベルが高い方が性能に差が出ることも確認されていますね」
つまりレベルが低い現状だと何もできない可能性もあるって事か。
「トウヤ様のスキルは聞いたことがないので後でマキシウスに過去に同じスキルが無かったか調べさせます」
「ありがとうございます」
こうして俺のスキルの確認が終わり今日は解散することとなった。
明日軍議の前にスキルを試してみることになったので、今日はもうゆっくり休もう。
…嫌な予感がするから寝る前にゴソゴソっと。 ヨシッ!
~その晩~
トットットットット ヒヒーン!
「止まれ! この先道が崩れているぞ!」
トウヤが細工して道を塞いだ所に敵領主の部隊が到着した。
「歩兵、少しこの先を確認してきてくれ」
そう指揮官が言うと歩兵達は崩れた場所とその先を確認しに散開した。
「我が領主様はよっぽどあの二人を気に入ったのだな。私を動かしてまでも二人を確実に連れて来いと命令するとは」
指揮官はそうこぼしながら歩兵達からの報告を待つことにした。
「ミルルカ様! 崩れた道の下の方に先発部隊の亡骸を発見しました!」
歩兵の言葉に私はとても驚いた。
帰りが遅いと思って追いかけてみれば土砂崩れに巻き込まれていたのだから。
「全員今から亡骸の確認に行く。歩兵道案内を頼む」
そう部隊の皆に伝え歩兵の後を追った。
~崩れた場所のふもと~
「ミルルカ様、こちらです。6人全員この土砂崩れに巻き込まれてしまったみたいで、生存者はいませんでした」
6人全員? この規模の土砂崩れでか。 おかしいな?
不審に思った私は亡骸の確認をすることにした。
「頭に謎の穴が開いた死体が4つと体が潰された死体が2つ…潰された方は土砂崩れに巻き込まれたかもしれないがこの頭の穴はなんだ?」
亡骸を見ることで私の中でこれは土砂崩れに巻き込まれて死んだのではないと確信をもった。
「歩兵! 土砂崩れの発生地点は何処だ?」
「はっ! すぐこの上の場所でございます」
「今すぐ確認しに行くぞ! 嫌な予感がする!」
~土砂崩れ発生地点~
やっぱり、焦げた跡がある。ここで何か爆発を起こして土砂崩れを起こしたんだ。
これはめんどくさいことになった。このレベルで爆発を起こせるものが相手にいるってことだ。
「全員、一旦領地に帰るぞ! 領主様に報告しなくてはいけないことができた」
そう告げて私たちは一目散に領地を目指した。
~その頃の館では~
「さて…あの人はもう眠ったでしょうか?」
夜の廊下を無音で歩く者がいる。その者はろうそくの明かりにすら影を落とさない。
その者はそのまま廊下を進み続けてある扉の前に来ると影に沈んでいった。
次の瞬間には扉の先の部屋の中のベッドの影からその者は現れていた。
「淫魔を相手に気を抜きすぎではないでしょうか?これほど簡単だと萎えてしまいますね」
その者はベッドで寝ているものに聞こえない声量でそう言った。
「では、心の中を覗かせていただきましょうか。貴方が何者で何を目的としているのか。主様に仇なすようでしたら始末してしまいましょう」
そう言いながらベッドに向かって手を伸ばした時に違和感に気づいた。
気づいてしまった…自分が解除してしまったがゆえに。
「鋼糸…私が来ることを想定していたのですか?トウヤ様」
「いいや、けど常在戦闘っていっていつでも戦闘できるように備えろって叩き込まれたからね」
俺はそう言ってデスターニャさん向けて銃を構えていた。
デスターニャさんの足元から。
「…女性に対してそんな物騒なものを向けてはいけないとは教わらなかったのですね」
デスターニャさんは泣きまねしながらそう言ってきたがその手には引っかからない。
「デスターニャさんこそこんな時間に男の部屋に忍び込むなんてはしたないって教わらなかったの?」
「淫魔は気になった殿方の寝所には積極的に忍び込めと教わります」
…マジかー。
淫魔の教育なんて知らないしこんな形で知りたくなかったわ。
なんて思っていたら、デスターニャさんは扉の方に向かって歩き出し扉の前で一礼して最後にこう言って出て行ってしまった。
「今夜は夜這いに失敗してしまったので失礼します。ですが気を抜いていらっしゃるといつか本当に襲いますよ」
…おちおち寝てられないとか本当にいい性格してるわ。
まあこれ以上誰か来ることもないだろうし俺も寝ることにした。
「…本当に襲いたいくらいいい殿方ですね ふふっ」
~次の日の朝~
コンコンコンッ
「トウヤ様、朝食の準備ができておりますがお目覚めでしょうか?」
結局あの後誰かが来ることもなくゆっくり寝ることができた。
結構寝すぎたみたいで食卓に着くころにはリリアム様もリリアスちゃんももうすでに席についていた。
「お待たせしてしまったみたいで申し訳ございません。布団が気持ちよくてつい寝すぎてしまいました」
そうお茶目に言うと二人ともしかたないなって感じで笑ってくれた。
これでデスターニャさんの事はバレてないな。
「トウヤ様、昨夜はなかなか刺激的でした」
…デスターニャさん何言ってくれてるんですかねぇぇぇぇぇぇ!
ほら、二人の目がジト目に変わってるじゃん!
「…トウヤ様が昨晩何をしていたのかは置いておいて朝食にしましょうか」
リリアム様がその場をとりなしてくれたけどリリアスちゃんの目はジト目のままだ。
~朝食後~
「ところでトウヤ様、軍議の前にスキルの確認をしたいとのことでしたがその予定でお変わりないでしょうか?」
「はい、どこかスキルの確認ができる良い場所はないですか?」
「スキルの確認でしたら兵たちが訓練している訓練場があります。本日は軍議の関係で訓練を休みにしていたので使用者はいないはずです。使えるようマキシウスに手配しましょうか?」
「そこまでお手を煩わせるのも申し訳ないのですが、手配をお願いしてもよろしいですか?」
「かしこまりました。訓練場までの道案内をデスターニャにさせますので、1時間後位にデスターニャを部屋まで迎えに向かわせます」
こうして軍議までの間俺はスキルの確認をすることにした。