6話 発現
「トウヤ様着きました。こちらの部屋でリリアム様とマキシウスが待っています」
それは今までの部屋の中でも一際豪華な装飾がされた扉だった。
この扉の前に立つだけでプレッシャーがすごい。
コンコンコン
「トウヤ様をご案内しました。入ってもよろしいでしょうか?」
どうぞの声が聞こえ中に通された。
部屋の中は扉の装飾と同じ位豪華で、青を主軸とした天井に絵画で彩られた壁、
絨毯は赤で会談用なのか合わせ向きのテーブルが置かれている。
部屋の豪華さに気圧されているとリリアム様が声をかけてきた。
「トウヤ様、お力をお貸しいただきありがとうございます。そして私たちの争いに巻き込んでしまって申し訳ございません」
そう言って頭を深々と下げられてしまったので思わず、
「頭を上げてください。この争いに参加することは自分で決めた事です。気にしないでください。美人の困った顔を見るのは私にとって嫌なことですから」
と言ってリリアム様を慰めようとした。
リリアム様とマキシウスは笑っているがデスターニャさんだけ無表情…いやあれは怒っているのか?空気が怖い。
とりあえずこの場の空気は落ち着けたみたいだから今後について話すことにした。
「リリアム様、マキシウスさん。領民への演説ですがどのように進めるのか決まっているのですか?」
マキシウスさんがリリアム様を見てそれから答えた。
「トウヤ様この後の演説の予定ですが先にリリアム様がトウヤ様の紹介も兼ねてお話されます。その後にトウヤ様に出てきていただいてお話いただけたらと考えております。それと話していただけると嬉しい内容は戦の経験や武勇について話していただけると士気が上がると思います」
「かしこまりました。では士気を上げるように話せばいいのですね」
「はい、それでお願いします」
士気を上げるか…俺のいた部隊だったら相手の悪口とか国のお偉いさんの悪口で士気があがったが知らない相手だしな。
ちょうどいいしこの機会にマキシウスを持ち上げて担いでやろうか…ケッケッケ
その後広場に向かう時間までこの領地についての話を聞いたが後で自分で見て回りたかったのでその旨を伝えた。
「皆様馬車の準備ができました」
デスターニャさんが馬車の準備が終わったことを伝えてくれた。
「皆様、これから大きな戦いになると思います。ですが私たちは負けません。負けてやりません。…行きましょう」
リリアム様の言葉に皆うなずき、リリアム様と俺、デスターニャさんは車内にマキシウスさんは御者として前に座った。
~広場で~
ザワザワザワ おい急に集まれってさ。 ああ領主命令だろ。 物騒だね。
ガヤガヤガヤ ガード様が亡くなった時みたいだね。 ママー領主様見えるかな?
広場はざわつき領民の色々な声が聞こえてくる。
その中には不安そうな声や領主への不満、これからなにが起こるのか隣の人と話し合っている声も聞こえる。
そんな中広場に作られた一段高い場所にリリアム様が現れた。
それをみて領民は静まり返った。
「皆様、急に呼び出して申し訳ございません。ですが急ぎ皆に伝えなければいけないことがあり、集まって頂きました」
その声は広場全体に広がり、領民に届けられた。
後で聞いたことだが【音魔法】を使って声を全体に届けたそうだ。
「この度私は隣の領主アダムス・アルブスの手の者によって命を狙われました」
そういった瞬間領民達のざわつきが止まらなくなった。
「この領地は非常に恵まれた場所にあります。また多くの種族が共存している場所でもあります。ガードも私もそんなこの場所がとても大好きです。ですがそんなこの場所を手に入れようと、私とリリアス事手に入れようと狙われたのです」
領民たちの感情は不安や怒り、怯えが入り混じって大きなうねりを作る。
「私はこの場所を、夫が愛し私も愛したこの場所を誰にも渡したくない!だからこの場所を守るために力を貸して下さいっ!」
そう言った瞬間大きなうねりは大きな波に変わった。
「そして皆様に紹介したい方がいます。私が命を狙われたときに命を助けていただいたトウヤ・キサラギ様です」
名前を呼ばれて俺は前に出る。
そしてリリアム様の前に立ち、膝をついて頭を垂れた。
その様子に領民もリリアム様も驚き、リリアム様は慌てたようにこう言った。
「トウヤ様、頭を上げてください!命の恩人に頭を下げさせるわけにはいきません!」
その言葉に答えるように頭を上げ、領民の方を向いた。
領民は俺の行動に驚き、また色々な憶測を隣の者や近くの者と話し出した。
そして少しの間が空いた後俺は話し出した。
「諸君!私が今紹介にあったトウヤ・キサラギだ!諸君らの大切な方々は卑劣なものの手によって汚されようとしていた。だが私の手は間に合い守ることができた。諸君の顔を見ればわかる、この方々はとても諸君らに慕われていると。そのような方々を守れたことは私の生涯の中で最高の名誉である!」
領民は最初怪しんでいたが、自らの領主を褒められて悪い気を起こすものは少なくこちらの話に引き込むことができたように思えた。
「リリアム様の忠君マキシウス殿は自らの命を捨ててでも領主を守ろうとした家臣の鏡である。そしてその忠君を自らの危険を顧みず守ろうとした主君、この信頼関係に私は心打たれ微力ながら助力したいと思いこうしてこの場に馳せ参じた」
忠君と明主のストーリーなんて領民からすれば最高の話だ。
領民の感情は一気に昂っていく!
「諸君、この素晴らしき明主と忠君を悪しき領主の手に渡してもいいのか?否それは許しがたいことである!今こそ皆で力を合わせて悪しき敵を撃ち滅ぼし、この明主の下繁栄に向かおうではないか!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ リリアム様― 私も忠誠を誓います! 悪しき領主から名君を守れ! 忠君マキシウス!
決まったな。
演説というは戦争においてかなり大事な役目を果たす。リーダーの素質がフルに出るからである。
今回俺がやったのは、領民に敵ではないと伝えること、そして感動のストーリーを伝えることだ。領民に怪しまれた状態では戦地で指揮を聞かないものも出るだろう。だが自らの領主を褒めてその家臣も褒めるものを悪く言うことはしにくいし、悪く言うと悪く言った方がほかの人から悪くみられて心証が悪くなる。だから悪く言うことはできない。
感動的なストーリーもそうだ、人は感動に弱い。特に女性が感動して感情的になると男性はそれに乗るか流されるしかない。だから女性の心を掴めば勝手に男性もついてくる。一石二鳥ってわけさ。
現代で応用するなら、人の悪口や愚痴を言わない良い人に思われると敵が減るっていうことと。女性の心を動かすとお金を引っ張りやすいってところかな。
さてリリアム様とマキシウスの反応はっと…やっぱり驚いてるな!
俺がここまでやれると思っていなかったのだろう。
後マキシウスを忠君に仕立ててやったからか良い目で見てきやがる(笑)
俺達は領民の感情の波に背中を押されるように広場を後にした。
~館の応接間にて~
「トウヤ様!先ほどの演説、あれはいったいどんな魔法を使ったのですか?」
リリアスちゃんが興奮気味に訪ねてきた。
「私にも教えて頂きたいですトウヤ様」
リリアム様も興味津々のようだ。
先ほどの演説で使ったテクニックを少しばかり教えてあげると二人の目は輝いているように見えた。
「トウヤ様に助力を頼んだマキシウスの目に違いはなかったのですね。マキシウス、良き家臣でいてくれてありがとう」
そうリリアム様が告げるともったいないお言葉ありがとうございます、とマキシウスは返していた。
「さて、領民の士気を上げることには成功しました。あとは相手とどのように戦うかですね」
俺がそう言うとマキシウスから提案があった。
「今日は襲撃や演説で皆様お疲れだと思いますので一度ゆっくり休んで明日軍議にした方がいいと思います」
その提案にはリリアム様も賛成で今日はこれでお開きとなった。
「トウヤ様、後でこちらについてきていただけますか?」
俺も自分の部屋に戻ろうかなと考えているとリリアム様に呼ばれた。
リリアム様が直接ついてきて欲しいっていうことはまさか…
そんなピンクな考えを見透かされたようにリリアム様は違いますと否定した。
違うのか…残念なんて思いながらリリアム様の後をついていくと何か儀式をするような広間に連れてこられた。
「トウヤ様、ここにあるのが使った人の才能を見る導きの水鏡という魔道具です。トウヤ様、この世界では自分の才能を知らないということは自分がこの世界の人間ではないと主張するようなものなので、ここで才能を測って異世界人だと気づかれないようにしていただきたいと思いお連れしたのです」
リリアム様…そこまで俺の事を考えていてくれてたんだ。
「この水鏡をのぞき込むとその人の才能が映し出されます。このような感じで」
リリアム様が水鏡をのぞき込むと水鏡から光が放たれ、文字が水鏡の上に表示された。
「才能は本人以外にはわかりません。ですので教会は隠すことを知らない子供に使わせてその才能を読み上げさせ才能ある者を集めるなんてことをしているのです」
リリアム様が水鏡の前から離れると光は収まり、文字も消えていった。
リリアム様に促されて俺も水鏡の前に立った。
自分にどんな才能があるのか、はたまた才能が無いのかわからず不安だったが水鏡をのぞき込んだ。
まばゆい光が放たれ、文字を形作っていく。
そして目の前に現れたのは…
【トラップエンジニア LV.1】
だった。




