表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界戦論  作者: kiruke
2章 争乱の時
49/49

49話 負は連鎖する

 ~王都 教会 聖女私室~


 コンコンコン「…………入って」 「失礼いたします」 ガチャ

「聖女様、聖女様に書状が届いておりましたのでお持ちいたしました」


 そういって聖女の部屋に入って来た侍女が書状を聖女に渡した


「…………男子禁制」

「えっ?私は…………流石は聖女様、見破られていましたか」


 侍女の姿が一瞬で変わり、そこから出てきたのはイスカルだった


「…………トウヤに伝えて。了承と」


 その言葉にイスカルは少し驚いた。なぜなら書状の中身を聖女は見ていなかったからだ。だがイスカルは笑って「承知しました」といい、また侍女に扮して部屋を出て行った


「……と言う事があったのですよ。いやーあの時は試したくなるのを抑えるので必死でしたねぇ」

「……頼むからもうちょっと穏便に動いてくれないか?」


 トウヤはため息をつきながらそうイスカルに返した


「いえいえ、かなり穏便に動いたのですがねぇ。あそこには手合わせ願いたい人がたくさんいますが我慢したのですよ。ですので少しお付き合いいただけませんか隊長?」

「……わかった後で付き合うから。それでリリアム様の方はどうだったの?」

「そちらですか?……落第点と言わざるを得ませんね。まあ以前お邪魔した際にわかってはいましたが改善していないとはがっかりです」


 トウヤはそっちじゃ無いんだよなーと思いつつ、イスカルがわかってやっているので本題を進めることにした


「で、リリアム様はなんて?」

「そちらも了承との事です。ですが本当に良かったのですか?もう少し長引かせればお金も伯爵の弱体化も進んだでしょうに」


 そう言われてトウヤは苦笑しながらイスカルに返事をした


「良いんだよ。それにマリアさんのおかげで作戦は第2段階に入ったし。ところで元子爵領……スプレイスでの買い付けどれぐらい進んでる?」

「今で500人といった所ですね。もう少しお時間頂けましたら1000人までは買えると思いますが」

「できる限り急いで買い付けをしてくれると助かるよ。教会が入った後はそういった行動がしにくくなると思うから」

「承知しました。では少しの間こちらで動きます。それに数人お借りしてもよろしいですか?」

「わかった。あっ新しく入った人達から連れて行ってあげて。彼らの家族が売られていたら優先的に買っていいから」

「承知しました。では行ってまいります」


 そういうとイスカルは行ってしまった


 さて俺も書類仕事で籠ってばかりいないで顔を出すか

 俺は店の方に顔を出すことにした


 店の前まで行くと今日もズラッと店を取り囲むように行列ができている

 俺はお客さんたちを抜かして入って行くのもなと思い裏口に回って裏から入ることにした


 ガチャ 「できたやつからどんどん運んで行って!!」「そろそろ食材が切れそうだから倉庫に補充行ってくれ!!」「洗い物は纏めてするから一旦表の空いてる食器下げてきて!!」


 厨房内はとても慌ただしかった

 俺はみんな頑張ってくれてるなーと思って見ていると1人の少女がこちらに来た


「すみませんこっちは入口じゃなくて……あっお疲れ様です!!皆っ総店長が来られました!!」              

     「「「「「「お疲れ様です!!」」」」」」


 厨房の皆を見てると訓練生時代を思い出すな

 俺は懐かしい感じがしながらも皆の邪魔をしないように声をかけた


「忙しい時に来てごめん。皆作業優先で良いから俺の事は気にしないで……ところでシル、デスターニャかマリアさんはどこにいるか知らない?」


 俺は声をかけてくれた女の子にそう話しかけた


「デスターニャさんと店長は先ほどお客様が来られたので上でお客様の相手をされていらっしゃいます」

「そっか、それなら結構かかりそうだね……わかったありがとう。一応2人に合ったら俺が探してたって言って貰える?」

「はい!!」


 俺はシルの元気そうな姿を見て安心した

 それに他の皆も元気そうに働いてくれて何よりだ


 俺はここに皆を連れて来た時の事を思い出して再度怒りがこみ上げそうになったが何とかこらえた

 今シルの前でそんな感情が漏れ出るわけにはいかないと思ったからだ


 俺は再度執務室件俺の部屋に戻ってリリアム様に報告する内容とお願い、部隊で使う統一した装備品の詳細を考えた


 しばらくして日が落ちそうになって明かりをつけるかと思った時、ドアがノックされた


 コンコンコン「遅くなって申し訳ございません。お探しとの事でしたが入ってもよろしいでしょうか?マリアも一緒です」

「どうぞ」

「失礼します」「失礼致します」


 デスターニャとマリアさんが部屋に入って来たので俺はソファーに座ってと促した

 2人がソファーに座ったのを見て俺はお茶でも入れようと思ったが、それを察してかデスターニャがお茶を入れてくれた


「まずは来客の対応お疲れ様。本当は俺がやらなきゃいけないことだけど任せっきりでごめんな」

「いえいえ、こういった事は慣れておりますので」「トウヤ様に交渉を任せると不安ですので」

「はは、それはそうだね。……で本題に入るけど、来週あたりウーレイスで余っている食料を一気に放出する事でリリアム様と話がついた。マリアさん、今の状況はどう?」


 俺の質問にマリアさんは少し考え、言葉を発した


「現状を簡単に説明しますと、伯爵領にある飲食店の稼働率は従来の1/3、それも大手商会が経営する高級店と一部の商会が運営する中規模の店が残り、個人や小規模な商会が運営していた店は完全に閉店となっております。また今回の件で失業者が大量に出たため日雇いの仕事の単価はかなり下がり、依頼する人が減ったことで仕事量も少なくなりさらに単価が下がるを繰り返しています」


 負のループの入り口に入ったわけだ


「そして元子爵領から強制的に徴収した食料や金銭を使って安定を図ろうとしたみたいですが、先の戦争で元子爵領もそこまで物資も金銭も無かったため現状を打破するには至らないうえ、大手商会の商会長達が邪魔をしているみたいで食料の配給も滞っているみたいですね」


 ……こんな状況でも自分たちの利益を優先するのはさすが商人と言えるね

 俺はどこの世界の商人も似たようなものなんだなと感心した


「つまり今大量の食料が出回ると大手商会は……」

「はい、確実に在庫を抱えて大赤字……今よりもさらに敵対するかと」

「今後の売り上げは落ちるよな?経営的には大丈夫なのか?」

「はい、今は飲食店よりも人材を派遣する方に少しずつ商売を変えていますので問題はありません。むしろ今から派遣できる人数が増えていきますので利益はさらに増えるかと」


 ……なら問題ないな

 本当ならこの冬が終わるまで食料を放出せず高値で売り捌いて利益を上げようと思っていた。だがスプレイスの状況をみて教会の支援があるとはいえこれ以上何の罪もない人達が苦しむのを見たくない……そう思ってしまった


 戦争をしようとしているのに多くの人を殺そうとしているのに今更何を甘い事をと思うだろう

 だがそれでも無くならなくていい命があるのなら助けたい……こんな所を甘いって怒られたんだっけ


「トウヤ様は優しいのですね」

「ええ、甘いと思う時もありますがその優しさが私たちを助けてくれたのです」


 マリアさんが俺を褒めてデスターニャがそれに賛同した


「姉さま……本気で好きになられたのですね」

 ブッゲホゲホゲホ「な……なな何を言うのですか!?」


 マリアさんの突然の発言にデスターニャはむせた

 そしてさらに畳みかけるように攻めていく


「ふふ、本当に姉さまは素直じゃないですね。そんな風だと取られちゃいますよあの教会の女に」


 ブチッ

 デスターニャから何かが切れる音がした


「マリア?……あなたが私をどう思っているのか少しお話しましょうか」

「……あの姉さま?その手に持ったやすりのような道具と金槌のような道具はいったい……?」

「すこーし素直にお話できるように口の周りを広げようかと思っているだけですが?」

「それは本当に少しですか?」

「……ええ、少しですよ」


 デスターニャがマリアさんとの距離をジリジリ詰めていく

 マリアさんは逃げる隙を伺っているが、今のデスターニャに隙はない


「はいはいそこまで。マリアさんもあんまりからかいすぎないでくださいね。デスターニャ……本当の事を言われたからって平常心を崩してるようじゃっていってぇぇぇぇぇ」


 金槌が飛んできて俺の足に当たった

 とても痛くて涙目になりながら俺は言った


「2人とももうすぐ作戦も大詰めに入るんだ、敵は前以上の攻勢を仕掛けてくるかもしれない……気を張りすぎるのもあれだけど緩みすぎて足元をすくわれないように注意しないとな」


 俺がそういうと二人は表情を引き締め「はい!」「承知しました」と返事をした



 そして少しの時が経ち作戦は新たな段階に進み………………………シルが死んだ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ