45話 商売繁盛
「何じゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!!?」
俺は馬車から降りてすぐにそう叫んでしまった
………いや落ち着け、深呼吸だ
スーハースーハー……スースースースーハーハーハーハー
……うん夢じゃないな
俺が伯爵領を出る前には店の隣に同じような建物がもう1つあったのだが、なんとびっくり……今は隣の建物と行き来できるように繋がり、隣の建物の1階部分は一部壁が無くなってオープンテラスのようになっている
因みに店だった建物は襲撃にあって壊れる前と同じように修復されていた
「トウヤ様、何を呆けていらっしゃるのですか?」
「いやそれは……デスターニャ知ってたな?」
「はい、ですが面白そうなので報告しませんでした。予想通りの反応で満足です」
「……他に隠している事は無いか?」
「…………皆が待っていますので早く入りましょう」
そう言うとデスターニャは店のドアを開けて俺達に入るように促した
俺達が店に入るとデスターニャは馬車を預り所に預ける為に出て行き、入れ替わるように奥からマリアさんが出て来た
「お帰りなさいませ、話は聞いております。ですがまずは旅の疲れを癒されてはいかがでしょうか?お風呂も用意しましたので」
先に報告を受けようかと思ったが、お風呂と聞いてアリーさんの顔色が変わったのがわかったので先にお風呂に入って食事をしてから報告を受ける事にした
…………
「……まずは帰りが遅くなってすまない。そして俺がいない間作戦を進めてくれていてありがとう。……で、どうしてこうなったんだ?」
俺はお風呂を上がって軽く食事をとった後、マリアさんに案内されて俺達の店から裏手にすこし行った建物に案内された
そこは平屋の建物だが、玄関を入ってすぐに談話スペース、それから奥に向かって個室のドアが並んでいる建物だった
元は宿屋をしていたらしい
「こうして無事にお戻りいただけた事、とても喜ばしく思っております。それでは先ず隣の建物から説明させて頂きます。あの襲撃の後隣の店主から建物の売却の話を持ち掛けられまして、前の店の広さではお客様の数的に利益が出ないと話をしていましたので購入しました……凄く良心的な値段で私の手持ちでも足りる金額でしたので、あっ店の利益が出るようになりましたらそこから回収したいのですがよろしいでしょうか?」
「……また襲撃があるかもーとか、今度は火を付けられるかもーなんて言って脅してた……ナンデモナイデス」
マリアさんの顔が高速でサティちゃんの方を向き、サティちゃんは首をカクカク振る人形のようになってしまった
あの襲撃も利用したのか……さすがやり手だな
「店の購入代金に関しては手持ちの予算で返すので後で金額を教えてくれ」
「承知しました、ありがとうございます。それで今後の経営ですが、1階を飲食スペース、2階を宿泊スペースとして営業していくつもりです。それでこの建物の話になりますが、2階を宿泊スペースとして提供する上で私達の居住スペースが無くなったので今後も従業員が増えると見込んでこの建物を購入しました。今この裏手の建物も買収の交渉中です……これは予算では厳しいですよね?」
作戦行動に必要な経費……として落せるか?金額次第だな
「因みに全部でいくらくらいかかる予定なんだ?」
「金貨100枚もあれば……今後の人件費を考慮しても足りると思います」
「金貨100枚か。俺達に振られた表向きの予算は金貨200枚だからな……店の建物を買うのに金貨100枚使ったし予算全部使い切るのは……デスターニャ押収した商会長の資産の売却状況は?」
俺はデスターニャに以前資産を抑えた商会長の美術品や建物の売却情報を尋ねた
「そちらは金貨で150枚程売却できております」
「んーまあ金貨150枚あれば当分なんとかなるか。わかった金貨100枚用意するから進めてくれる?」
「ありがとうございます」
マリアさんは深々と頭を下げた
「それで他には何か無かったか?」
「はい、以前考えがあると言っておりました販路の拡大の件ですが、聖女様が訪れられた事がかなり影響しまして予想以上にお客様の入りが多くなっています。また教会に伝手を作りたいのかいくつかの商家からお声がけを頂きましたのでかなり前倒しで利益が出せるようになると思います。ただ……伯爵家に近い商家は逆にこちらを警戒しているようですね」
「伯爵は今回の件で何か動いたのか?」
「襲撃犯の亡骸と装備を回収していかれました。特に装備に関しては数が合っているかまで細かく確認しておられましたね」
「確かにあの装備はそのあたりで手に入る代物ではないように感じましたが、そこまでする程の物なのでしょうか?」
確かに……いやもしかして……?
「なあ、装備から作った場所や人を特定することはできるか?」
俺の言葉にデスターニャとマリアさんははっとした顔をした
「できるんだな。ならあの装備はどこか特別な場所で作られた可能性が高い。そしてそれを作ったのが誰かって話だが、十中八九商人連合だろうな」
「もしかして今回の襲撃は武器の性能を試す目的もあったのでしょうか?」
「そうかもしれない。今回の件をどう評価するかわからないが、仮に商人連合があれを量産したら俺たちの軍との装備の差はどれぐらい出そうだ?」
俺の問いにデスターニャが目を細めながら答えた
「相手にした限りの感想になってしまいますが、あの者達が持っていた装備は部隊長クラスが持つ装備に匹敵すると思います。それが一般兵にも支給されるとなると、こちらの歩兵、騎兵では相手にならないかと」
デスターニャに続いてアリーさんも答えた
「教会も同じようなモノですわ。まあ魔法士が豊富な分戦い様はありますが相手にするとしたら相応の犠牲は考えなければいけないですわね」
武器の性能の差は戦争においてかなりの差が生まれる
銃が出てきて剣が廃れたように、より高性能の銃が生まれて性能と数の差で戦争に決着がつくようになったように
けどそれだけで戦争に勝てるならアメリカはベトナム戦争で勝ったはずなんだよな
「マリアさん、商人連合や王国と戦う準備のためには莫大なお金がいります。伯爵と戦争が起こる前に稼げるだけ稼いで貰えませんか?デスターニャ、商人連合と王国に対抗する準備を進めたい。お金を稼ぎ次第極秘に製造できる人と場所を紹介して貰えないか?」
「承知しました。私の全力を持って稼がせていただきますね」
「承知しました。私達暗部が贔屓にしている人と工房があります。そちらに話を付けておきます」
「ありがとう。まあまずは伯爵との戦争に勝たないといけないんだけどね」
そう、伯爵との戦争に勝たなければ全ては始まらない
そのためにできる限りの嫌がらせをさせて貰おうか!!
こうして俺はマリアさんからの報告を聞き終わり、自室に戻った
俺の新たな自室は個人の部屋になっていてベッドと作業机、それに少しの食器と簡素だが整えられた部屋になっていた
俺はベッドに寝ころび、今後のことについて考えを巡らした
思っていた以上に伯爵領での作戦はうまく進んでいる
だが聖女様が絡んだことで俺たちの存在が公になりこっそり行動するのが難しくなった
一気に行動するとあいつらが逃げ遅れる可能性があるのか……
俺は今潜入中のトメスとミルルカの事を思い浮かべた
今はかなり警戒されているだろうからあいつらに迂闊に接触するわけにもいかないし、かといってゆっくり進めるには警戒が強くなりすぎた
俺はトメスとミルルカの2人にどうやって作戦を伝えるか、どうやってあいつらを安全に逃がすか考え……睡魔が襲ってきたので寝ることにした
戻ってきてそうそう色々起こりすぎて体が疲れていたので俺はすぐに眠ってしまった
また明日から……どうやって……ぐぅ……




