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異世界戦論  作者: kiruke
2章 争乱の時
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36話EX 聖騎士5剣

「…………たくっ、今度は急に帰るって言いだしてどうしたんだ?」


 教会の性騎士……聖騎士団長のジャンは聖女であるタリアが急に帰ると言い出したため、ウーレイスを出て現在伯爵領であるノープレスまで戻って来ていた


「…………クリューリュ、来る」

「よし帰るか、急いで帰るぞ!!」


 そう言うジャンの足取りは先ほどよりもかなり早歩きになっていた


 クリューリュ……聖騎士5剣(パラウィンアトル)の1人で教会の中ではかなりの常識人寄りだが、団長……ジャンの事になると頭のネジが全部外れるジャンにとっては苦手な相手だ

 ジャンは少しでもクリューリュと離れられるよう何時も長期任務を入れて遠くに飛ばすのだが、それを団長の信頼だと勘違いしている……とても熱い男である


 ジャンは今揉めている相手である伯爵領に長居する気はなく、また着いた時には夕方で直ぐに通り抜けようと思ったが、タリアが領都に入った瞬間何処かに行こうとするので仕方なく付きあうことになった


 タリアが向かっている先は飲食店が多く並ぶ通りで、お腹がすいたのか?と思っているとタリアが1軒の店の前で止まった


「入りたい」

「……なんだお腹がすいてたのか?だったらこんな所じゃなくてもっとオススメの店が……」

「ここ」


 タリアの押しに負けてジャンは店に入ることにした


「いらっしゃいませ……あら?いつもごひいきにして頂いていた……」


 ジャンは目を疑った

 何故なら目の前にはいつも通っていた待合酒場の受付のお姉さんが居たからだ


「いらっしゃいませ~って淫魔鳴かせ!?」


 驚いた顔でとんでもない事を言われたジャンは一瞬目を丸くした……が、その手の事は何時も言われ慣れているので気にしなかった


「…………いつも?」


 こっちは無視できない。もし回答を間違えたら……

 ジャンは冷や汗が背中を伝うのを感じ、どう言い訳するかと悩んでいた時


 カランカランカラン 「失礼します、2人なのですが空いている席はありますか?」


 店内に鎌を背負ったロングの水色の髪色をした女性が入ってきた


「いらっしゃいませ。ただいま別のお客様をご案内する所でして少しお待ち頂けますか?」

「構いません。それと2人とも大きな荷物があるのですが、何処か置き場所はあったりしますか?」


 そう言って女性は背負っていた鎌を指さした

 それと同時に振り向いたジャンが声をあげた


「……アリー?何でここに!?」


 アリーと呼ばれた女性はジャンの方を向き……鎌を振るおうとした時点でジャンに鎌を抑えられた


「チッ」

「今舌打ちしたよね!?」

「してませんわ。それより離して頂けますか?鎌が錆びます」

「いや掴んだだけで錆びないから!?」


 ジャンは掴んでいた鎌を離した


「お久しぶりですタリア様。しかしウーレイスにいらっしゃると聞いていたのですが、どうしてこちらに?」


 アリーは不思議そうにタリアに尋ねた


「………………クリューリュ」

「……あぁ」


 アリーはタリアの言葉を聞いて全てを察した

 クリューリュが来て面倒くさいことになる前に逃げて来たのだと


「アリー、何故?」

「タリア様の護衛に向かうように教皇様に言われたからです。ついでにクリューリュを連れ戻すようにと、サルゴーンも来ています」


 アリーがそう言った時再度店のドアが空いて、大剣を背負った2m程の男が入ってきた


「アリー、時間がかかっているようだが何かあったのか?……すまん取り込み中だったな、俺は少しその辺を見て来る「逃がしませんわ」よ」


 ジャンの姿を見た瞬間店の外に出ようとした男の腕を掴んで店内に引きずり込んだアリー

 その動きはジャンですら見失う程の早さだった


 ジャンはこれ以上店の入り口を塞ぐのもアレだと思い、店主に案内を頼んだ


 店主が案内してくれたのはテーブル席で4人は各自の食べたいものを注文し、料理が来るまでアリーとサルゴーンは任務の報告を、ジャンはウーレイスで起こった事を話した


「……それで団長とタリア様とは合流できたわけだが……クリューリュをどうする?」


 サルゴーンが口を開くとジャンとアリーは嫌そうな顔を、タリアはいつも通り無表情だった


「私が嫌々ながら団長とタリア様を護衛しますので、サルゴーンがクリューリュを迎えに行ってくださりません?」

「嫌々ってどういう事だよ……けど俺もその方が助かるな、タリアにとって同性が居た方がタリアも安心できるだろ」

「団長、タリア様ですわ。では団長命令でサルゴーンがクリューリュを迎えに行くということで……」


 そう言って話が纏まろうとした時、タリアが口を挟んだ


「アリー、トウヤに付いて」


 …………「「「えっ?どうしてですか?」どうしてだ?」また神託か?」


 タリアは首を振った


「トウヤ危険、アリー信用できる。お願い」


 !!!!!!…………一同は驚いて声が出なかった

 何故ならタリアは聖女になって以来、神託以外でお願いをすることが無かったからだ


「……タリア様、そのトウヤという人物の話は教皇様と道中少しばかりの噂で聞いております。はっきり言わせて頂きたいのですが、そこまでタリア様が気にする人物なのですか?」

「うん」

「理由を聞かせて頂いても?」

「それは言えない。けど大切」


 アリーはタリアの眼を見つめた


 そしてため息を1つつくと一言「承知しました」と返した


 その後4人の下に料理が運ばれて食事をとり、他のお客さんが全員帰ったのを見計らって店主に声をかけた


「店主殿、少しお時間を頂けないだろうか?」


 サルゴーンがマリアに声をかけるとマリアは


「承知しました、少々お待ち頂けますか?」


 と返し、2階に上がって行った


 少ししてマリアはトウヤとイスカルを連れて戻った

 デスターニャとサティには閉店作業を任せている


 トウヤは近くのテーブルから椅子を引き、タリア達が座っているテーブルの近くに椅子を置いて座った

 イスカルとマリアはその後ろで立っている……彼らが何かしようとした時すぐに動けるように


 席に着いたトウヤはタリア達に向かって話しかけた


「お待たせして申し訳ない。そして聖女タリア様、聖騎士団長ジャン様……先日はお世話になった事のお礼をきちんと言えていなかったと思うのでこの場で改めて言わせて頂きたい。先日は無茶なお願いを聞いて頂きありがとうございました!!」


 トウヤは勢いよく席を立ち2人に向かって頭を下げた


「いい」

「聖女様がそう言ってるんだ……俺が何か言うことはねぇよ」

「……そう言って貰えて助かります」


 そう言ってトウヤは再度椅子に座り、タリア達に話をふった


「それで話したい事があると聞いているのですがお聞かせ頂けますか?」

「……アリー」

「承知しました。申し遅れました、私聖騎士5剣(パラウィンアトル)の1人でアリーと申します。こちらは同じく聖騎士5剣のサルゴーン「よろしく」……実は私達と同じ聖騎士5剣の1人がウーレイスに…………」


 こうしてトウヤ達の話し合いは始まった



 ~???~



「もうすぐ着くぞ……気を緩めるなよ」


 走りながらそう話すのは革の鎧を着て丸い鉄の兜を被った男だった


「大丈夫ですよ……任務中に気を緩ませる奴はとっくに死んじまってます」

「そうですよ隊長」「ここに居るのは選りすぐりばっかりですから」「何年隊長と一緒にやってると思ってるんですか?」「俺まだ半年なんだけど」「半年も生きてりゃ十分よ」「俺なんて10年よ10年」「良く生きてますね」「何回死ぬかと思ったか」


 それに答えるのは9人の同じ革の鎧を着た男達、だが隊長と呼ばれた男と違い他の9人は兜を付けていなかった


 彼等はラムが選んだ暗部の強襲部隊、それも暗部の中でも上位の部隊を選んで送り込んだ

 全員が同じ様な恰好をしているのは、傭兵団が強盗に入ったと見せかけるための工作の為である

 だがその装備はかなりのモノで、革の鎧は革と革の間に薄い鉄板を挟んであり、護身用の刃物程度では刺さらないようになっている

 

 また手持ちの剣も一見すると市販品と同じに見えるが、鉄の塊を魔法で圧縮して密度を高め、出来上がった鉄の塊を削って剣の形にしているので鋳造品ではそもそも相手にならず、鍛造品でも金貨数十枚クラスの相手でやっと同等という代物である


「ふっそうだったな。だが相手に転移魔法を使う者がいるかもしれない。これから強襲する商店にいる男は教会の聖女が転移魔法使いでは無いと言ったそうだが、ウーレイスに忍び込ませていた諜報部隊の報告では何処からか物が出てきたと報告があった。その男以外が転移魔法使いでその男を守っている可能性もある……その男は確実に仕留めたい」

「「「「「「「「「はっ承知しました!!」」」」」」」」」


 暗部の強襲部隊はどんどんトウヤ達が居る店に近づいて行く

 そしてその勢いのまま……ドンッッッッ


 壁を突き破り目の前に居たトウヤ達に切りかかった


「全員殺せぇぇぇぇ!!!!」


 隊長の声が店内に響き渡った


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