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異世界戦論  作者: kiruke
第1章 戦いは何のために
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3話 出会い

 

 「さて…「ビクッ」と、俺は悪い人じゃないよー 信じてよー」


 美人が顔を引きつらせながら怯える姿もかわいい…じゃなくてこのままだと話が進まないのでとりあえず人畜無害をアピールしておく。

 

 ここでマキシウスって呼ばれていた人が美人の前に立ってこちらを警戒するように尋ねてきた。


「そこのお前っ、いったい何者だっ!」


 んー20点かな。

 君が本当にその人を守りたいのなら、話しかけずに俺が相手を撃った瞬間に攻撃するか逃げる準備をしないといけなかったね。

 あと大事な人を自分の後ろに隠すのも減点だね。さっき俺が見せた攻撃は相手の体や装備を貫通してたじゃん。肉壁にもなれないなら死に物狂いで一矢報いるくらいでないと。

 そう思いながらマキシウスの質問をはぐらかすことにした。


「自分で言うのもあれだけど、命の恩人にそんな態度とるんだー ひどいなー」


 そう言うと美人のほうがすごく申し訳なさそうな顔で話し始めた。


 「取り乱してしまい申し訳ございません。私この一帯を治めておりました領主の妻でリリアム・アーテルと申します。アーテルは家名ですのでリリアムとお呼びください。遅くなりましたが命を助けていただきありがとうございます」

 「この度は(わたくし)の家臣が失礼な態度をとってしまい申し訳ございません。貴方様のお名前をお聞かせいただけませんか?」


 美人の質問にはきちんと答えてあげないといけないね!


 「こちらこそ名乗りが遅くなり申し訳ございません、私、如月(きさらぎ) 凍夜(とうや)と申します。

如月が家名ですので凍夜とお呼びください」


 …なんで二人ともそんな驚いた顔してるの?人の事礼儀も知らない野蛮人だと思ってた? 俺傷つくなー。

 

 とか思っていたらマキシウスさんが青ざめた顔で声を絞り出した。


 「家名持ちの方に失礼な態度をとってしまい申し訳ございませんっ!どうかこの首一つで収めていただけないでしょうか?」

 「マキシウスッ!何を言っているのですか。家臣の失態は主の失態。私が責任を取りますのでどうかこの者には慈悲を頂けないでしょうか?」


 二人はそう言いながら頭を下げてくる。


 …俺めっちゃ極悪人に思われてるやん。


 あっ、一瞬素がでちゃった。 スマイルスマイル♪

 現状を把握すると、家名持ちは領主家クラスって事か。領主の妻とはいえ領主ほどの権力はなさそうだし、そりゃ青ざめるし驚くわ。…一つ間違えれば自分の首だけでは済まないからな。


 さてどうするか…このまま勘違いさせるのも良いがバレた時が面倒になる。

 かと言って正直に言っても今の状況だと怪しさが増すだけだし。とりあえず…

 

 「頭をあげてください。私が居た北方(ほっぽう)の国では確かにすこしばかり有名でしたが、こちらの地では私は無名の新参者です。現地の領主の奥方に頭を下げていただくほどの者ではございません」


 そう言うとリリアム様は少しほっとしたようにこちらを見た。


 そう、俺は真実に少しの嘘を入れることにしたのだ。

 話のすべてが嘘ならほころびが生まれやすいが、一部なら相手の勘違いで押し通せるからな。 皆も嘘をつくときにはこうするとバレにくいぞ!


 さて今度は俺から話を振ってみた。


 「込み入った事情に立ち入るようで申し訳ないが、なぜリリアム様は狙われていたのですか?」


 リリアム様は話しにくそうに口を紡いだが、マキシウスが話し出した。


 「リリアム様が狙われた理由は領主のガード様が戦でお亡くなりになったからです。ガード様亡き後はリリアム様が領主の代行を務めておりましたが、隣の領主のアダムス・アルブスがリリアム様に「女に領主は務まらん。娘ともども私の側室に入れ」と迫り、それを断ったため力ずくでモノにしようとしてきたというわけです」


 …母子共々側室だとぉぉぉぉぉ 許せんっ! うらやまけしからん!


 「リリアム様が収める領地は農業に適しており、また鉱山や水源、森林など資源もあります。

 そのせいでガード様がご存命の際も他領から狙われておりましたが、亡くなられてしまった今他領の領主はリリアム様とリリアスお嬢様を手に入れることで領地を乗っ取ろうとしてお二人が狙われているのです」


 うーん…厄介ごとに首を突っ込んだかな。

 命を助けた事で恩を売って、あわよくば生活の面倒を見てもらおうかなって考えてたんだけどな。

  

 なんて考えてたらマキシウスが驚くべきことを言い出した。


 「トウヤ様は先ほど北方では少し名が通っておられるとおっしゃられていましたが、先ほどの戦いから思うに武名で名を通されたのではないのでしょうか?

 命を助けていただいた上頼み事までするのは失礼だと思いますが、お力をお貸しいただけないでしょうか?」


 …どうしようかな。今力を貸すって言ったら衣食住には困らなそうだけど領土争いに巻き込まれるのは確実なんだよな。

 この世界ではのんびり暮らしたいと思ってるし…断るか。


 そう思ってお断りしますと伝えようとしたとき、開いていた馬車の扉から誰かが降りてきた。


「お母さま…音が聞こえなくなりましたが、もう終わったのですか?」


 そこにいたのは頭にとがった耳と背中に羽、尻尾をはやした金髪の美少女だった。

 大事なことだからもう一度言う。耳と羽と尻尾をはやした金髪美少女だ。

 

 この子がリリアスお嬢様と呼ばれていた子か。美人な奥様とかわいい娘、そりゃ狙われるはずだ。


 「リリアス、もう大丈夫よ。こちらのトウヤ様が助けてくださったの。貴方もこちらに来てお礼を言いなさい。」


 リリアム様がそう言うと、リリアス様はおずおずとこちらに来て俺の前に立った。


 「トウヤ様、この度は助けていただきありがとうございます。 (ペコッ)」


 そう言うとリリアス様はリリアム様の後ろに隠れてしまった。


 だが羽と尻尾は隠れていない。


 …やだ、何この子。めっちゃ可愛い! 持ち帰っちゃダメ? あっダメですよね。


 「リリアス、後ろに隠れないできちんと横にいなさい。

 トウヤ様申し訳ございません。礼儀作法を教えてはいるのですが、娘は少し人見知りなところがございまして。それとマキシウス!命の恩人にお礼をする前に頼みごとをするとは何事ですか。命を助けていただいただけでもご迷惑をおかけしているのに、さらにご助力まで願うとは…」

 「リリアム様!家臣として言わせて頂きますが、貴方様こそ命を大事になさってください!

 私の命でリリアム様とリリアスお嬢様が守れるのなら、何だっていたします。

 トウヤ様! 先ほどのご無礼この命で償いますのでリリアム様とリリアスお嬢様をお守りいただけないでしょうか」


 …前言撤回、こいつなかなかの策士だわ。

 今俺が断ったらこいつは確実に自害するだろう。そうしたらリリアム様とリリアスお嬢様の心証はかなり悪くなるだろう。生き残った盾持ちと弓士も自分たちの指揮官が死んだとなると部隊でこの話を広めるに違いない。

 そうなるとこの周辺地域では活動できなくなる。食料も乏しいし土地勘もない現状じゃ野垂れ死ぬのが目に見えてわかる。 やられたな。


 俺はマキシウスにまんまとはめられた。

 が、ただ嵌められるだけだと悔しいので少しやり返しておくか。


 「わかりましたマキシウス殿、助力の件引き受けましょう」

 「おぉ! 引き受けていただけますか!」

 「ええ、貴方ほどの方が何でもするとおっしゃられるのですから引き受けなければその顔に泥を塗ってしまいます」

 「いえいえ、貴方様のような方の側ですと私なんかでは足手まといになってしまいます」

 「いやいや、実はわたしこの辺の土地勘がなくてですね、どなたか土地勘がある方がいればと思っていたのですよ。いやー助かりました」


 マキシウスは嫌そうな顔をしているけど無理やり巻き込んでやったぜ! ざまーみろ♪


 とりあえず協力することは決まったので、今後の行動について進言するとするか。


 「このままここに居ると兵が帰ってこないことを不審に思った相手が様子を見に人を送り込むと思います。発見を遅らせるために死体を処理して少しでも先に進みましょう」


 そう言うとリリアム様もうなずき、マキシウスは盾持ちと弓士に指示をだした。

 リリアスお嬢様は何かしようと考えている様子だが、マキシウスに馬車で待っててくださいと言われて馬車に帰ってしまった。 かわいい。


 こうして死体を片づけた俺たちは領地に向かって進むのであった。


 ピッ ピッ ピッ… ドーーーーーーーン!


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