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異世界戦論  作者: kiruke
2章 争乱の時
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29話 戦勝祭…の裏側

 ワイワイ ガヤガヤ うわぁああ さあ祭りの間限定販売…見て行ってよ!


「なあ聞いたか…今回の祭り、領主様が食料を提供してくれたんだと!」

「ああ、知ってるよ。代わりに食料品の価格を下げて何時もより少し多く税を払わなきゃいけないって言ってたぜ。まあそれでもタダで手に入った物を売るから手元にお金が残るみたいだけどな」

「戦争するって言った時、他の皆は浮かれてたけど俺は逃げる事を考えてたからな。まぁ女房を置いていくわけにはいかないから覚悟を決めたが…まさか勝っちまうとはな」

「本当にまさかだ…参加したのに実感がねぇや」

「俺も俺も!!」


 町中戦の話で大盛り上がりである

 さらにリリアムが食料を提供したので何時もより安価でご飯が食べられると町に住む領民は喜んでいた


 祭りは今日から3日間行われる

 今日は初日と言うこともあって町は大騒ぎのお祭り騒ぎだ

 至る所で乾杯の音頭が聞こえ、すでに酔っぱらって道で寝ている者もいるくらいだ


 ドォーン ドォーン ドォーン 


 太鼓の音が聞こえてきたかと思えばそれに続くように先ぶれの声が響き渡る


「道をあけーよー!リリアムー様、トウーヤ様のお通ーりーいー!!」


 その声に続くように馬車が通り、馬車の上では町の領民に向かって手を振るリリアム様と、全身鎧に身を包み手を振るトウヤの姿があった


 トウヤの恰好は歴戦の戦士らしくとても筋骨隆々でたくましい体が見てわかるほど盛り上がっていた…

 そう…中身はトウヤでは無くトメスだ


 トメスは自分がトウヤでは無い事に気づかれないかと心配していたが、トウヤの事を知る者には事前に通告がされているのでこの場に居る皆には気づかれる心配は無かった

 では本物のトウヤはと言うと


 ひぃぃぃ うぎゃっ 助けて…うぁぁぁ!


「ふぅ、これで8か所目と…」

「何で…何でこいつがここに!?」

「何でかって?そりゃお前らが聞いた話が嘘だったからさ」

「そんな…騙し…ドサッ」

「人の命を狙おうとしたのにどの口が言うのかねぇ」


 トウヤの命を狙う伯爵及び商人連合の刺客の根城を根絶やしに潰して回っていた


 リリアム様が乗る馬車のルートに合わせて敵を殲滅しに行っているのでほとんど人が残っておらず、この戦闘で領民を巻き込むことが無いように作戦を立てていた


「トウヤ様…これでこの拠点は全て殲滅できました」

「ありがとうデスターニャ。今馬車はどの辺?」

「少々お待ちを…現在商業地区を抜ける所でもうすぐ土小人(ドワーフ)の工業地区に入る予定です」

「そっか…なら次が最後かな?」

「ええ、敵が送り込んできた人員は人ですので他の地区に隠れると浮いてしまいますから」


 そうここウーレイスでは、人…商業地区 森人(エルフ)…農業地区 土小人…工業地区 淫魔…歓楽街と住む場所が種族ごとに集まっているので、違う種族が集まって別の種族の場所に居るとかなり浮いてしまう

 トウヤ達は商業地区に隠れている敵の刺客を一掃するだけで良かった


「最後の刺客って戦争の前…何なら前領主が生きていた頃から入り込んでいたんでしょ?どうして放っておいたの?」

「それは…一切動きが無かったからです。何度かこちらの手の者を送り込んだのですが、そもそも刺客に会えなかったと言っていました」

「会えなかった?もしかして刺客は1人?」

「…はい。どうしてお分かりになられたのですか?」

「相手にした経験があるからな」


 …1人か。厄介なタイプだな

 確実にこちらを仕留めるために条件が揃うまでは絶対に動かず、動くときは確実に仕留める…前の世界でも散々な目にあった相手だ


 トウヤは前の世界の経験から相手が達人(マスター)の域に入っていると予測し、警戒の度合いを最大まで引き上げた


 ………


「ここか…道中では仕掛けてこなかったな」


 トウヤは刺客の潜伏先に着いた

 そこには【色々あります 古道具店】と書かれた店があった

 店の入り口は営業中になっている


「デスターニャ…本当にここなのか?」

「はい、間違いないです。ここにイスカルと言う刺客が居ます」


 俺は思っていた相手のイメージと違ったので気になっていた事をデスターニャに聞いた


「そもそもどうして刺客だと判ったんだ?」

「それは……ごにょごにょ」

「デスターニャが口ごもる何て珍しいな」

「いえ…実は先代の暗部の党首に自ら挨拶しに来たのです。それも正面から」

「…それで?」

「その時自らの口で、「アルブスに雇われて来ましたが老いぼれ領主を殺してもつまらない。面白い人が来たらまた来ます」と言いながら帰って行ったのです」


 …うわー達人級(マスタークラス)じゃなくて仕事人級(プロフェッサークラス)か。それも結構上位の

 過去に2人相手したけどその2人とも1人で1個大隊を翻弄できる位の実力があったからな…俺とデスターニャじゃ厳しいか?

 けど数を増やしても被害が増えるだけだな…なら


「デスターニャ、悪いけどここから先は俺1人で行くよ」


 俺がそう言うとデスターニャは慌てだした


「トウヤ様!?いけませんっもし貴方の身に何かあったら…」

「ごめん、今のデスターニャだと足手まといなんだ。デスターニャを守りながら相手できる程相手は甘くない」

「ッ……」

「…ごめん」


 俯きながら顔をゆがめるデスターニャを置いて俺は店の中に入ろうとした


 ガチャ…ピンッ ヒュンヒュンヒュンガッガッガ ………


 ドアを少し開けた途端糸が切れ、矢が飛んできたのでドアを盾にして防いだ

 もしこれが銃弾だったら死んでいたなと思いつつまたドアを少し開け、ナイフで再度トラップが無いか確認した

 するとドアの開いた先の足元少し先にもう1つ糸が張ってあった

 それを切ると今度は上から液体が降り注ぎ、その液体がかかった場所は煙を上げていた


 …なるほど様子見ってわけだ

 俺は今解除したトラップが殺意ではなく対応力を測るためのモノだと感じた

 つまりこのトラップをどのように対応するかを見て相手は対応を変えようとしているのだ


 だから俺は少し開けたドアの隙間から…手のひらほどの石を思いっきり室内に投げ込んだ!!

 石は中で何かにぶつかったのか何度か跳ね返る音がして、その音と共に中で人が動く気配がした

 

 気配が動いた瞬間俺は勢いよくドアを蹴り開け中を確認しようとすると、上から気配を感じたのでその場から勢いよく飛びのいた

 さっきまで俺が立っていた場所にはナイフを振り下ろした人らしき姿が見え、体制を崩したこちらに追撃しようと敵はこちらに飛び込んできた

 俺は敵の目の前に石を設置して自滅を狙ったが寸前の所で避けられてしまった


「ふっ…なかなかやりますね」

「お褒め頂き恐縮です…よっ」


 今度は石を時間差で2つ投げ、投げた石を空中で固定した…が石と石の間に隠した鋼糸は見破られていたのかナイフで切り裂かれてしまった

「いやいや…なかなか楽しいお方だ」

「簡単に見破っておいてよく言うぜ」

「いえいえ、最初の段階で意図を読み取りここまで対応された方は私がお相手した中では2人目ですよ」

「けどあんたがそこに立っているって事は1人目は殺ったんだろ」

「……ふふっ」


 目の前の男は楽しさを隠せない様子で笑っていた

 身長は170㎝ほどの痩せた体形。服装は小奇麗なシャツとズボンだがポケットが多いので何か仕込んでいる様子。顔は…凄く普通だ。記憶に残らない程普通の顔をしている

 何度か仕掛けながら特徴を掴んでいったが相手は未だに様子見に徹している様子だ


「どうした?こないのか?」

「いえ…すみませんお聞きしたいのですがどうして私は襲われているのでしょうか?」


 俺は相手の言葉が理解できなかった


「…アルブスの命令で領主様を暗殺しに来たんじゃないのか?」

「ああ、あの醜いブタの依頼ならブタが死んだ時点で契約は切れています」


 ………マジで?


「はい、私の旧友の子供からの依頼でしたので我慢してブタの依頼を受けましたが…本来なら受ける気は無かったのでこうしてのんびりさせて頂いていました」


 俺はその言葉が真実だと感じた

 いやだってめちゃくちゃ嫌そうな顔してるし


「あーーーなら早とちりした。すまなかったぁぁぁぁ」


 俺はこの世界で通じるか分からないがDOGEZAをした


「ぷ…ぷははははっ…貴方面白いですねぇ…ははは。頭をあげてください…お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「トウヤと申します。そちらのお名前をお伺いしても…?」

「これは失礼。先に名乗るべきでした、イスカルと申します…今後ともよしなに」


 今後とも?


「ところでトウヤ殿、貴殿はルーフス伯爵と揉めているそうですが…伯爵の首はいりますか?」


 …はい?


「いえ、もしよろしければお近づきのしるしに伯爵を暗殺しようかなと思いまして」


 …うん、この人野放しにしたらダメな人だ


 俺は必死に説得し、イスカルを部隊にスカウトした

 イスカルを連れてデスターニャの所に戻った時は目玉が飛び出るかと思う位目を見開いたデスターニャが見れて面白かったな


 さてこれで思いがけない戦力の増加と足元は固まった


 じゃあ次は…伯爵の所に乗り込もうか!


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