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異世界戦論  作者: kiruke
第1章 戦いは何のために
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2話 新天地


 「むにゃむにゃ…」


 暖かな日差しの中風が頬を撫でる。こんなに気持ちよく寝た記憶はここ数ヶ月なかった。

 ここ最近は穴の中か木の上か敵に見つからないよう常に気を張っていないといけなかったからだ。


 「すやすや…」


 どうせさっきの爆発に巻き込まれて俺は死んだんだろ。だったら死後の世界くらいゆっくり寝かせてくれ。


 「すぴす…」スコーンッ 

 「痛ってえええええええええええええ」


 突然頭に何か当たり俺は飛び起きた。


 そこにあったのは木の枝だった。


 「誰だっこんなもんぶつけたやつは」


 見渡す限りそこは草原であたりに人影はない。

 ましてや枝が落ちてくる木もない。どこから飛んできたのか謎だった。


「いったいどこから…それよりここは?」


 俺はさっきまで戦車とやりあって、自分の投げたお手製C4爆弾の爆風に吹き飛ばされて死んだはずだ。 運よく味方が助けたとしてもこんな草原じゃなくキャンプか病院に運ばれる。いったいここは何処なんだ?


 とりあえず俺は迷った時の基本として、現状必要なことをまとめることにした。

幸いにも装備やリュックも近くにあったので紙とペンが見つかり、必要なこととその結果を書きだした。



 【必要なこととその結果】

 ①仲間に連絡を取る→無線が届く範囲に通信対象なし。というより電波がない。


 ②周りの地形や植生から現在地を推測→地形的には該当箇所が多いが植生的に該当箇所と合う場所はなし。というより丸ノコのような花をつける植物なんて地球にあってたまるか!


 ③飲み水と食料の確認→水は1.5ℓの水筒+予備の500㎖水筒1本満タン

 食料は携帯食料3日分とチョコバー4本


 ④拠点になる場所の選定→まずは水の確保が最優先。その次に安全に夜を過ごせる場所の確保。ただし地球ではないと思われるので最新の注意が必要←ここ重要



 ざっと書き出したがこれを見て言いたいことはわかる。

 何なら俺も信じたくなかった、けど丸ノコみたいな花がその花びら(丸ノコ)を飛ばしてきたり、種を爆発させる花や歩く木を見てみろ…ここが異世界だって認めるしかないじゃないか‼

 それよりさっき俺に枝をぶつけたのお前だろ! 

 あっこら逃げるなっ ちょっと(たきぎ)にするだけだから待て!


 ともかくここが地球じゃないってわかった以上慎重に行動しないといけない。

 野営地にできそうな場所を探すために動くとするか。



 ~1時間後~


 見渡す限り景色は変わらない。人がいる場所や通った場所には必ず痕跡が残るものだがそれもない。

 近くに川が流れている様子もないので川をたどって人里を探すこともできない。

 もう少し歩いてみるか。


 ~さらに2時間後~

 

 最初にいた場所から緩やかな傾斜に沿って下ってきたがやっぱり人の痕跡はない。

 人は高い場所が安全だと考えるが、実際に高い場所に村や町を作ろうとすれば大変な労力がいる。だから基本的には作りやすい場所に村や町を作る傾向にある。

 右手に山が見えてきているので、石材や木材を切り出すのにも最適だ。山のふもとに向かってさらに歩いてみるか。


 ~さらに3時間~


 今までの草原ではなく整地された場所がぽつぽつ出てきたぞ。

 しかも(わだち)と何かの足跡もある。深さの均等さと轍や足跡の溝の乾きかた、さっきまでの気温と天気からここを通ったのは1時間ほど前か。

 

 地球と同じ日の傾きなら現在午後5時。同じ時間帯ならもうすぐ暗くなるかもしれん。

 こんな物騒な場所で夜を進むとも思えない。野営の準備をして止まったなら、この乗り物の持ち主が近くにいるかもしれない。追ってみるか。


 ~轍を見つけてから1時間半~


 周りはかなり暗くなってきた。こんな中進むのは俺にとっても厳しい。

 とっとと見つけた現地住民に話を聞きたいところなんだが…


「キュイイイイン キンッ ガンッ」

「右側が空いたぞ! 今だっ、切り込め!」

「させるかぁっ 盾持ちは右側をフォロー 体制を立て直すまで弓士は牽制!」


と灯りを挟んでドンパチしてるんで声かけにくいんだよなー


 現状を解説すると、

 灯りを挟んで左側に馬車と西洋鎧を着た人×3人+弓士+杖を持った指揮官?

 灯りを挟んで右側に西洋鎧をきた人×5+杖を持った指揮官?


 弓士が牽制をしているけど、全身鎧にはあんまり効いてなくて杖をもった指揮官?らしき人が矢に当たるのを嫌がりはしているが、前衛の数の差で馬車側が不利って感じかな。


「あんまり現地の人に敵対したくないんだよなー」


 どんなに戦略的に優れた軍隊でも、現地住民を敵に回すと補給もできなくなるから現地の争いには極力介入しないようにって教わったし。

それに事情を知らない俺が介入してよくなるとも思えないし…別の人を探すか。


「ギンッ ガッ ズシャァァァァ グワァッ」

「お前らも命が惜しいだろ… 馬車の中の2人を渡せば見逃してやるぞ!」

「リリアム様とリリアスお嬢様を渡すわけがないだろうが! くらえっ レインバースト!」

「パンッ ズドドドドドッ」

 ウワァッ オワァッ グエッ


 その叫び声とともに杖の先から水球がはじけ、敵の西洋鎧を3人吹き飛ばした。


「グランドバースト!」

 グギャァァァ ブッ


 相手の杖持ちの叫び声とともに馬車の西洋鎧の足元に土の塊が生まれ、2人吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされた西洋鎧はどちらも身動きせず、息絶えたようだ。


 やっべええええ あれ魔法? 魔法だよね! やっぱ異世界確定じゃん!


 「数的にこちらがかなり有利だが、そちらはお前と盾持ち、それと矢の切れた弓士でまだ戦うのか?」

 「リリアム様とリリアスお嬢様を狙ってくるような奴にお二人を渡したらどうなるかわかってるだろ! 俺は命ある限りお二人を守るっっっ」


 その叫びに答えるかのように馬車の扉が開いた。


 「マキシウス、もういいのです。 あなたたちがこれ以上命を落とすことはないわ。主人が討たれた以上、こうなるのは分かっていました… 

 そこのあなた、あなたたちについていきますわ。 だからこれ以上彼らを傷つけないであげてください。」

 「リリアム様! いけません、そんなことをおっしゃらずにリリアスお嬢様と逃げてください!」

 「自らの家臣が命を懸けて戦っているのに逃げる主がありますか! 

 あなたこそ自らの命を大事にしてください。」

 

 そこで敵の指揮官が話に割って入った。

 

 「さすが陸戦の虎と呼ばれた方の奥方だ。私は約束を破らないのでね、おとなしくついてきていただけるならこれ以上の手出しはしない。 さあどうする?」


 「はい…ついていきま」


 ズシャァァァァ パンッ パンッ パンッ

 ドサッ ドサッ ドサッ


 「ふうぅ 油断大敵ってな」


 俺はスライディングしながら西洋鎧3人を撃ち抜き、敵の指揮官の前に滑り込んで銃口を向けていた。


 「何だっ 何が起こったんだっ! お前はいったい誰だ!」


 敵の指揮官はとてもパニックになっている。そりゃそうだ、いきなり現れたやつに3人をほぼ同時にやられたんだ。


 解説するなら人間の視覚上下側には死角があり、西洋鎧はヘルムの性質上死角が増える。だから下からきたものには対応できなくなる。そんでもってヘルムの口元は稼働できるように繋いで作ってる分装甲が薄い。

 だから俺の手持ちの9㎜弾でも打ち抜けたってわけだ。あとは横撃ちで一掃ってわけ。

 

 マキシウスって杖持ちもリリアムって金髪美人な奥様も、突然何が起こったのかわからず警戒しているので空いている方の手を振って敵意がないことをアピールしておく。無駄だと思うけど。


「俺が誰かって? この世の美人の味方さ。」


 …凄く空気が冷たいです。 

 でもいいじゃん! だって金髪美人に推定Gだよ。助けるに決まってるじゃん。

 ほら、相手の指揮官も空気が冷たくって震えてるし。こんな空気にしたの誰だよ。


 「お前は今誰に敵対したか分かっているのか! 私はっ」

 パンッ ドサッ


 「口を動かす前に手を動かせってな。」

 さて…邪魔者も片づけたし美人とお話っと。 あれ?ドン引きですかそうですか。

 第一印象は×っと。


 こうして俺の異世界人?との初コンタクトは失敗から始まった。


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