19話 見つめる者、答える者
更新が遅くなってすみません!
そして今回から新章に入ります
「うーん…むにゃむにゃ」
トウヤは気持ちよさそうに眠っている
「ふあぁぁぁぁぁぁ…ふぁ?」
あれ…ここ何処だ?
俺の最後の記憶だとシールズ峠で敵を焼こうとしていたはずなんだが…
「おき…る…か…いっいてててて。体が思うように動か…ない?」
まるで爆撃に巻き込まれて全身打ち付けられたように体は痛かった
「この感じ意識不明で何日も寝てた時と同じような感覚だな」
何日も意識を取り戻さないと寝ていて下になっている部分が圧迫され、次に起きたときに感覚の喪失や不自由を感じることがある。現代の医療だと定期的に体制を変えて予防したりするが、この世界ではそんな事望めるはずもない
「…無理に動かないほうがいいか。そのうち誰か来るだろう」
トウヤは誰か来るまで無理に動かず待とうと思った
「こうしてのんびり寝れてるって事はそう酷い事態にはなってないだろうな」
俺は先日までの戦いを思い出した
今回俺のスキル…トラップエンジニアがあったから不意打ちを仕掛けられた
その結果油断した相手を混乱に叩きこみ、何とか勝利に繋げることができた
「けど、その結果見えた弱点もある」
そう、このスキルを使い続けて見えた明確な弱点…それは
「発動の遅さと範囲のせいで現状不意打ちしか使えないんだよな…」
発動は正確な場所・物・重量・そしてそれを運ぶ魔力量といった制限があるし、範囲攻撃を仕掛ける場合は自分を巻き込まないようにある程度の距離を取らないといけない…つまり近接戦に持ち込まれると弱いのだ
「それに今回で俺の物資もかなり使っちまったし…」
こちらの世界に来た際に背負っていたリュックの中身の戦闘物資は今回の戦いで殆ど使ってしまった
残すは弾薬が少量とC-4爆弾が数百gぐらいだ
「はあ…このまま何も起こらないといいんだけど」
この先の事を考えると先行きが暗くため息が出た
ゴソッ
「ん?今何か動いたか?」
トウヤが先ほどまで被っていたであろう毛布が動いた気がしたが気のせいだろうと…
ゴソゴソ
「動いたよな…」
よく見ると毛布はトウヤの体の足のふくらみより大きくナニかあることが見て取れた
……スゥ モソッ
毛布を持ち上げて足元を見ると…そこにはリリアスちゃんが居た
足元でリリアスちゃんが丸くなって寝ていた
「…なんでぇ?」
俺は変なところから声が出た
そりゃそうだろ…何で俺のベッドでリリアスちゃんが寝てるんだ!?
「スゥスゥ…」
わーかわいい寝顔…って違うわ!こんなところ誰かに見つかったら…ヤバイ
「何がヤバイのですか?」
「そんなの決まってるだろ…俺とリリアスちゃんが一緒に寝ているところを誰かに見られたら……ギギギ」
俺の視線の先にはデスターニャが居た
「おはようございます。よくお眠りになられていましたね」
「オハヨウゴザイマス。トテモヨクネムレマシタ」
俺はカタコトになっていた
「何日もお休みになるとはよほどお疲れだったのでしょう。お食事とお飲み物はいかがいたしましょうか?」
「あっ食事は…今はいいです。飲み物は何かさっぱりしたものを貰えると嬉しいです」
この状況…ごまかしきれるか!?
「かしこまりました、すぐにお持ち致します。それとトウヤ様がお目覚めになられた際伝えて欲しいと主から言伝を承っております」
リリアム様から?
「この度の戦いの話と今後の話がしたいので時間の都合が付き次第私室に来て欲しいとの事です」
……リリアム様の私室?
……………ええええええええええええええええ
「私室ですかっ?」
「私室です。トウヤ様は場所をご存じで無いと思いますので準備が整い次第案内させて頂きます」
そう言ってデスターニャさんは部屋を出ていこうとした
「それでは失礼します。後1つ言い忘れておりましたが、ウーレイスでは15歳未満に手を出しますと死刑となります。リリアス様は後半年ほどで15歳になられますので、手を出される場合はそれまで待つことを推奨致します」
ガチャッ
誰が手をだすかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
というか15歳未満に手を出したら死刑って…というかリリアスちゃんまだ14歳なの!?
「ん…んん…zzz」
14歳にしては…ってダメだダメだっ!!
煩悩退散悪霊退散色欲退散……………
けどこんな子が大人の欲望に振り回されてあれだけの目にあったんだよな
そう思うと俺の手はリリアスちゃんの頭に伸びていた
ナデナデ
「失礼します。さっぱりしたものとの事でしたので果実の飲み物をお持ちしました」
…オワッタ
「こちらに置いておきますね。それと湯あみの準備もできておりますがいがが致しましょうか?」
「あっはい、これを飲んだら入ります。少し待って貰っても良いですか?」
ゴクゴクゴク…プハッ
少し酸味があるが甘酸っぱい果実の飲み物は俺の色んな意味で乾いた喉を潤した
「ごちそうさまです。お風呂入りますね」
「こちらをお持ちください、お着替えは用意しておきます」
俺は居たたまれなさから逃げるようにお風呂場に向かった
「今からこの部屋の片づけと準備をしますのでリリアス様もご自分の部屋にお戻り頂けますか?」
ピクッ…???
「トウヤ様が起きられた時から起きておられたのに気づいていないとでも?頭を撫でられて感情が動いているのも見えておりましたが」
……………カァァァァッ///
ビュンッ ガチャッ
「まったく、しかしトウヤ様もなかなかの淫魔たらしですね」
デスターニャはそう呟きながら部屋の片づけと準備に取り掛かった
…………………………
コンコンコン
「リリアム様トウヤ様をお連れしました」
はーい どうぞー
「失礼します」
俺はデスターニャの後について入った
「トウヤ様、急に呼び立てて申し訳ございません。お目覚めになられたばかりだというのに」
「いえ、こちらこそ顔を見せるのが遅くなって申し訳ございません」
…なんかこのままだったら謝罪合戦が始まりそうだな
「リリアム様、トウヤ様はまだお疲れだと思いますので本題に入られては?」
デスターニャが話を進めてくれた
「あっそうね。気を使ってくれてありがとうデスターニャ。トウヤ様お呼びした理由は戦争の勝利を祝って祭りを開きたいのですが、そこで貢献者として演説と領内を一緒に回って頂けないかというお願いです」
俺が貢献者として演説とリリアム様と一緒に領内を回る…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ
俺…が?
トウヤがそう思うのも無理はない、元の世界でトウヤは何度か難関任務をこなした経験があったが、その功績は上が持っていき今まで表彰された事も無かったからである
「だめ…ですか?」
リリアム様は俯きながらか細い声で訊いてきた
「いえ、今まで日陰ものでしたのでこうやって堂々と貢献者として人前に出たことが無かったので戸惑ってしまいました」
そう言ったとたん2人の空気が変わった
「これだけの方を日陰ものとして扱うなんて…」
「ええ、トウヤ様をそのような戦力として置いておけるほどの力を持っている国とは…相手にしたくないですね」
盛大に勘違いされてるぅぅぅぅぅぅぅ
いや今俺がそんなことは無いって言っても謙遜してるって言われるのが目に見える…
話を変えるか
「それでいつ頃祭りを開かれる予定なのですか?」
俺は強引に話を変えた
「トウヤ様が目覚められてから1週間ほど後にと思っていましたが…意外と早くに目覚められたのでまだ戦後の処理も褒賞もまだ終わっていないのです」
「…私が倒れてからどれぐらいたったのですか?」
俺は今まで聞き忘れていた事を聞いた
「トウヤ様が館に運び込まれてから3日ほど経ちます」
3日か…思ったよりも時間がたって無かったな
「そうでした!トウヤ様への褒賞の件もお伺いしなければ…トウヤ様何か欲しいものはございますか?本当は私が決めなければいけないのですが、この領地を守って頂く程の方に私が渡せるものを思いつかず申し訳ございません」
欲しいものか…ぶっちゃけこの世界に何があるか分からないからこれって言えないんだよな
となるとやっぱり金か?けどこのあたりの地理も分からない俺じゃ金を貰っても生活基盤を作れないし
「もしあれでしたら…娘のリリアスを娶られますか?」
ブホッォォォ 俺は盛大に噴き出した
「な…何言ってるんですか!そもそも娘を渡したくないって理由で戦争を始めたんでしょうが!」
「デスターニャから聞きました、リリアスを寝所に連れ込んだと」
…………………………
俺の耳に世界が止まる音がした気がした
「ナンノコトデショウ?あっ目覚めたらリリアスちゃんが布団にもぐりこんでいた件ですかね~??」
「リリアスの頭を愛おしそうな顔をしながら撫でていたと」
アウトッ それは間違いなくアウトッ
「因みにこの国とこの領内の法律では15歳未満に手を出したら死刑です…がトウヤ様が望まれるのでしたら法律を変えますが…」
「そこまでしなくていいです!!!というより手を出していません!!!」
ここでリリアム様とデスターニャが笑いを堪えているのが目に入った
俺からかわれてたのか…ならっ
「決まりました…俺リリアム様が欲しいですっ!」
……………………………………………………チャキッ
ヒュンヒュン カッカッ
俺の顔の横にナイフが刺さった
「ひぃっ「トウヤ様、とても素晴らしい意見ありがとうございます。まだお疲れなのでしょう…永遠に眠られては?」」
デスターニャの口調は優しいが目は一切笑っていなかった
「デスターニャ、私達がからかいすぎたのですからそれぐらいにしてあげてください。それとトウヤ様、申し訳ございませんがその願いは了承致しかねます。私を娶るということはこの領地の主になるということ、たとえこの領地を救って頂いたトウヤ様でもそう簡単にこの領地を預けることはできません」
リリアム様の顔は領主としての顔に変わっていた
ははっ…本当にいい人だな
俺はリリアム様目を見て、その眼差しに吸い込まれそうになる感覚がした
この目が曇る所は見たくないな…ならやることは1つか
そう思った俺は言葉を発していた
「俺もからかおうとして申し訳ございません、そして改めてお願いしたいことがございます。俺をこの領地に置いて貰えませんか!!」
俺の言葉にリリアム様は驚いた顔をしていたが優し気な顔をしながら答えてくれた
「トウヤ様、ようこそウーレイスへ。私達は貴方を歓迎します」
「ありがとうございますっっっ!!」
こうして俺はこの世界で初めての居場所を作ることができた