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異世界戦論  作者: kiruke
第1章 戦いは何のために
18/32

18話 EX 動き出す物語

この話で1章は終わりになります

次回から2章が始まりますので、今後ともよろしくお願いします。

 ~スプレイス領 領主の館~


「領主様、ウーレイスより使者が参りました」


 ふふ…やっと来おったか

 なかなか待たせてくれたではないか

 だがこれでやっとあの2人を…グフフ


「謁見の間に案内しろ」

「はっかしこまりました」


 そう言って従者は部屋を出ていった


「これであの穀倉地帯を手に入れたワシに恐れるものは無い!このままこの一帯を支配し、王家に取り入ることで我が家から王族を出すことも可能になろう…はっはっはっは」


 アダムスは今後を考えると笑いが止まらなくなった


 ~領主の館 謁見の間~


「遠路はるばるご苦労。してリリアムとリリアスはどうした?一緒ではないのか?」


 領主とお嬢を呼び捨てにされ使者は内心不機嫌になったが顔に出すことは無かった


「こちら領主のリリアム様より書簡を預かっております」


 使者が近くの従者に書簡を手渡す

 従者が内容を確認し…腰を抜かしてへたり込んだ


「どうした!いったい何が書いてあったのだ!?」


 別の従者が腰を抜かした従者に駆け寄り書簡を拾うとアダムスに手渡した



 アダムス・アルブス子爵


 この度は手厚いおもてなしを頂戴しありがたく思います

 過分なおもてなしのお礼として以下のモノを用意させて頂きました


 歩兵指揮官級32名

 歩兵約3000名

 総大将ハンニール様の亡骸

 魔法士隊長ムラビ様の亡骸


 また直接お礼を言いたくそちらを伺いたいのですがご都合はいかがでしょうか?

 アルブス子爵と同様サプライズでお伺いしようとも考えましたが、ご都合も考えずお伺いするのは失礼にあたると思いましたのでご都合が良い日を教えて頂けますと盛大なお礼を持って伺わせて頂きます


 最後に終わりの挨拶として一言添えさせて頂きます


 逃げないでくださいね


 リリアム・アーテル


「ひぃっ」


 アダムスは先ほどまでの威勢はどこに行ったのか床にへたり込んだ


「アルブス子爵、我が領主リリアムよりご都合の良い日を伺ってくるよう言伝っているのですがご回答いただけますか?」

「ワ…ワシは今とても体調が悪くそなたの領主殿をもてなす事がむ…難しい。ま…また体調が戻り次第こちらから使者を送らせて頂く…え…遠路はるばるご苦労じゃった…」


 アダムスは息も絶え絶えにリリアムの使者に返した


「おお、それはそれは体調がすぐれぬ所ご対応頂き申し訳ございません。お体お大事にご自愛ください…では」


 そう言って使者は謁見の間から出ていった


「どうして…どうしてこうなったのだ」


 アダムスの視点は定まらずただ宙を眺める事しかできなかった



 ~???~


「…アルブス子爵が敗れただと。わかった…引き続き子爵の動向を探ってくれ」


 ふぅ…アルブス子爵にはかなり投資したのだがこれは回収できそうにもないな


 ここは何処かの一室、その部屋の主は今回の戦争の結果の報告を聞き1人愚痴た


「今度の会議は荒れるな」


 それもそうだろう、アルブス子爵に投資した金額は額面にして辺境伯の領地を1年は賄える金額だからだ


「それはそれとして今回の戦争負ける要素は無かったはずだが…調べさせるか」


 チリン チリン


「お呼びですか?」

「ああ、アーテル家が納めるウーレイス。そこを調べて欲しい」

「かしこまりました、現地の商会長経由で報告を上げさせます」


 …従者のその言葉に少し悩んだ


「いや、少し気になることがある。こちらの手の者を数人派遣してくれ」


 その言葉に従者は驚いた


「そこまでするほど…ですか?」

「ああ、今回の件…もし何者かの意思が介入したのなら後手に回るのはまずい。最善を尽くす必要があると考える」

「かしこまりました。では手配します」


 そう言って従者は部屋を出ていった


「杞憂ならいいがな…」



 ~王都 王城 謁見の間~


「そうか、アーテル家が勝ったか…」


 玉座に座るのはこの国、人と淫魔の国ヒューバスを治めるアレウス・エル・ヒューバス

 この国の王だ


「はい、しかしいかがいたしましょう。この戦いアルブス子爵が勝つと思っていましたので近隣の領主には手を出さぬよう通達してしまいましたが」


 宰相のピリッスが話した内容は少し頭が痛い内容だった


「もしアーテル家がこのことを知ったらどう動くと思う?」


 その言葉に宰相は少し悩み答えた


「アーテル家の規模を考えますとそこまで気にしなくて良いと思いますが…それよりこの戦いを勝った方法が気になります」


 宰相の言葉にアレウスは頷いた


「視察…という名目でこちらから人を送りますか?」


 アレウスはこくりと頷いた


「では行政府からと騎士団から人を選りすぐり送ります。その結果次第では王命を出して頂く必要があるかと思いますが…」


 その言葉にアレウスは答えた


「もしそのような事態になったら私は王命を出そう」


 その言葉を聞いた宰相は謁見の間を後にした


「…何もなければ良いのだが」



 ~王都 教会本部 討議の間~


「アルブス家が負けただと…はっはっはこれは傑作だな!」


 おおよそ考えられる聖職者のイメージとは似つかない笑い声が響いた


「おいっ教皇様と聖女様の前だぞ!」


 近くに居た司教が笑った者を咎めた


「よい…それよりジャン、今回の戦いの勝者をどう見る?」


 教皇のその言葉にジャンと呼ばれた者は笑いを止めた


「どうもこうもないな。あり得ない、この一言に尽きる」


 その言葉にこの部屋に居た者の殆どが驚き、言葉を失った


解放者(リティオーモ)が関わっている可能性は?」

「ない…というよりあいつらが関わっていたらあのあたり一帯が消し飛んでいる」

「そうか…聖女タリア、神託は出ていないのか?」


 タリアと呼ばれた聖女は口を開いた


「この戦いについての信託は無い」

「…ん?この戦いについての信託?」

 ジャンは聖女の言い方が引っかかった


「2日ほど前に神託があった。けどあまりにも抽象的な内容だったのでこの会議で話そうと思ってた」


 神託があった事に皆が驚き、そしてなぜそれを言わなかったのかという空気が流れたが誰も言葉にできなかった


「聖女タリア、貴方が受ける信託は全てこの世界に関わる事です。今後は神託を受け次第至急報告をしてください」

「わかった」


 聖女は顔色を変えず無表情で返事を返した


「で、その信託はいったいどんな内容だったんだ?」

「信託の内容、【大地が赤く染まりし時、死神と女王が並び立つ。世界は動きだし、時は流れ、命は廻らん】」


 神託を聞いた全員が言葉を失った

 それほど信託の内容が抽象的かつ不穏なものだったからだ


「大地が赤く染まる…なかなか不穏な言葉だ。それに死神と女王が並び立つとは死神と女王が生まれるということなのか?」

「世界が動いて時が流れて命が廻るだ?今でもそうじゃねぇか」

「何にせよ警戒せねばならぬな…もしかするとアルブス家が負けたのもこれに関係しておるのかもしれん」


 教皇の言葉にざわめきが大きくなった


「誰か人を送り込みたいと思う…志願するものはいないか?」


 …………………………………



 一同の視線はある一点で釘付けになった

 聖女が手を上げていたからである


「聖女タリア、そなたを送ることはできん。いやそもそもなぜ志願したのだ?」

「神託」


 その言葉にまたも一同は驚かされた


「他にも神託があったのか!?」

「【禁忌の神託】、これ以上は言えない」


「禁忌の神託だと…」 「まさか、本当か!」 「恐ろしい…恐ろしい」


 禁忌の神託とはその内容を達するまで誰にも告げてはいけない神託の事である

 そしてその神託を達せなかった場合命を落とすこともあるそんな神託である


「なっ…くっそれならば仕方ない。だが1人というわけにはいかん。聖騎士5剣(パラウィンアトル)を何人かつけよう。ジャン、今教会に何人残っている?」

「残念ながらあいつらは皆出払っている。戻るのは1月後とかだな」


 教皇は頭を悩ました

 教会の最高戦力6人のうちの5人が出払っているからである

 この6人に並ぶほどの戦力は教会には居ない


「心配するな、俺が付いていく」


 ジャンがそう告げた


「確かにお前が付いてくれるのならば心強いがその間の騎士団は誰が纏めるんだ?」

「俺の部下の副隊長を残していくさ…なに俺より仕事をする奴だから心配するなって」


「おお、彼か」 「うむ、お主はもう少しだな…」 「これで仕事が減る…!」

 

その場に居た何人かは共感し、何人かは晴れやかな顔をしていた


「わかった、くれぐれも聖女を頼む。それとジャン…お前は遊びすぎるなよ。これから行く町はお前好みだからな」


 教皇に釘を刺されたジャンは少し顔をしかめたが何事も無かったかのように先ほどの顔に戻った

 教皇はその顔を見て頭を抱えた


「聖女タリア、聖騎士団長ジャン…無事を祈る」



 こうして各々の思惑は絡み世界は動きだす


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