逢魔が娘-03◆「助けて欲しいと乞われれば」
■何処とも知れぬ山中/峠道
風の様に九十九折りの山道を下る。助けを呼ぶ女性の声が、よりはっきりと聞こえる様になる。斜面を下りきった辺りで、娘は少し開けた広場に走り込んだ。そして、そこの光景を見て目を見張った。
「だ、誰か、助けて下さいっ!!」
広場の真ん中に、何処から現れたのだろうと思うばかりの宮廷ドレスを着た高貴そうな貴婦人が、必死に助けを求めている。だが。
「助けてって、一体誰から?」
その女性の他に、その広場には誰もいなかった。娘は左右に視線を振ってみたが、特に異常はない。異常が有るとすれば、この状況自体が異常だった。
「おっかしいよね、誰が見たって」
少し困惑した様に、娘は呟いた。
「そこの方! どうか、助けて下さい!」
「そうは言ってもね・・・」
その貴婦人の他は誰もいないのに、一体何から助けて欲しいというのだろう? 首を傾げながらも、娘は聞いた。
「あの、どう助けたら良いのでしょう?」
「見えませんの? 周りに一杯・・・」
「周りに?」
「そうです!」
見えない世界ってあるかもね、と呟きながら、娘はもう一度目を凝らしてみた。無論、何も見える訳がない。
「あの・・・何も見えないんですけど?」
「兎に角! こっちに来てみて下さい!!」
必死に手招きする貴婦人。先程から一歩も動いていないが、その場から身動きできないのだろうか?
「判りました。今、行きますから」
「早く、早くお願いします!」
一歩、娘は不自然に円形の広場に足を踏み入れた・・・。
続いて第三話。状況が少しづつ動いてきていますね。




