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逢魔が娘  作者: 冬泉
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逢魔が娘-36◆「三人集まれば、悪さの知恵?」

■ペーレンランド/都/警邏本部


 程なく警邏隊本部に着いたルナ達は、ナーシアスの好意で一部屋を貸して貰うと、次策検討に入った。比較的大きな四角いテーブルの、入り口側を除いた三辺の椅子にそれぞれが座った。机の真ん中には、大きな薬缶が鈍い金色に輝いている。茶ぐらい飲むだろう、とバッコスが副隊長権限とやらで調達してきたものだ。


「ほれルナ、静流。官給品の安物だが、無いよりはマシだろう」

「ありがと!」

「ふむ。そなたにしては気が効くな。」

「ふっ、出来る漢としては当然な行いだな」


 無意味にポージングするバッコスを綺麗にスルーすると、ルナと静流はゆっくりと茶を飲んだ。確かに、“暖かい”以外に感想が無い薄い味だった。

 一頻り自己陶酔に浸った後、徐にバッコスは問うた。

 

「それで、だ。これからどうするんだ、ルナよ」

「残る手掛かりを追うしかないわね。その間にも、情報が獲れるかも知れないし」

「闇雲に動き回るよりは効率が良いな」

「そうね。ね、バッコス。警邏隊なら今まであの吟遊詩人がどの酒場に出没したか、把握しているんじゃない?」

「その者が何らかの容疑に挙がっていれば、警邏隊も情報収集位は行っている。もっとも、あの吟遊詩人が容疑対象者かどうかは、確認して見ないと判らないがな。」

「確認してくれる?」

「良いだろう。ちょっと外すぞ。」


 バッコスは立ち上がると、暫し待て、と言い放って部屋を出た。


「ルナよ。我は一つ厭な予想を立てておる」

「厭な予想?」

「うむ。確証には掛けるが、彼の吟遊詩人とやらが我の想像通りだとすると、厄介な相手だ」


 一瞬口籠もると、静流は先を続けた。


「“黒の楽人”と言う名を聞いた事はあるまいか?」

「黒の、楽人・・・黒の・・・黒?!」


 ルナは顔を上げた。その表情を見て、静流が頷く。


「思い当たるものがあるようだな。“黒の者”――彼の者達は、その様に呼ばれている。歴史上、何度も顕れては消えてきた。我の知る限り、“黒の者”には“女王”、“魔王”、“剣聖”、“聖女”、“巫女”などの銘を持つ者がいる。”楽人”もその内の一つだ」

「わたしも真理査さまから少し伺った事があるわ。静流は誰から?」

「ほう、ルナは“夢見”殿からか。我は父上からだ。くれぐれも、関わり合いにはなるな、と釘もさされたがな」


 クックック、と静流は笑った。


「それだけ、厄介な相手なんだね。それにしても・・・」


 その時、唐突にガタンと扉が開いた。暑苦しいロン毛の巨漢、警邏隊副隊長、自称“ザ・グレイト”であるバッコス・ドラケンスバークである。バッコスは、ピタリと話を止めてバッコスを見つめる二人をギロリと睨め付けた。


「驚かさないでよ、バッコス!!」

「ふははは。我が輩は神出鬼没だからな。凡人が驚くのも無理はないわ。」

「もう、何を言ってるんだか・・・」

「それはさておき、ルナ。」

「は、はい?」

「おい、静流。」

「なんじゃ。」

「二人とも・・・」


 部屋に緊張が走る。何か重要な事を言うのだろうか。

 だが、その皆無に等しい期待は、秒殺で胡散霧消するのだった。


「我が輩を賛美するなら、我が輩が居る時にせよ!!」


 即座に二人が、最大攻撃力でバッコスを瞬殺したのは言うまでも無い。


               ★  ★  ★


「ふははは、死ぬかと思ったぞ」


 “絶対に死なない呪文”を唱えると、あっという間にバッコスは復活していた。

 大きく溜息を付くと、ルナは気を取り直して静流と話して居た事をバッコスに説明した。


「なるほど。その“吟遊詩人”とやらが、場合によっては非常にヤヴァイ相手と言う事だな」

「我の感が当たっているとすれば、だがな」


 断定は出来んが、どうにも厭な感じが付き纏うのだと宣う静流。


「その可能性も念頭に入れて行動しないとね。事が事だから、注意し過ぎと言う事は無いわ」

「ならば、ルナよ。これから我が輩達はどう動くべきなのか?」

「そうね・・・」


 目を細めると、思案顔のルナ。


「相手の動きが見えて来ない以上、こちらから積極的に動く必要があるわ」

「“釣る”のか?」


 静流の瞳が煌めく。

 にっこり笑うと、ルナは頷いた。


「そう。“釣る”のよ」


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