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逢魔が娘  作者: 冬泉
34/38

逢魔が娘-33◆「強い敵ほどあっさりやられる?」

■ペーレンランド/都/街東部地区/東部地区/黒き泉


『キュンッ』


 二筋の閃光。そして、ルナの両脇を抜けようとした冥鬼(Spectre)は一瞬で塵に帰った。目にも止まらぬ速度で、聖皇剣が振るわれていた。“始原の光”を秘めた聖剣に、冥界の使者は一瞬たりとも抵抗する事が出来ない。


『ドンドンドンドン』


 次の瞬間、更に二体の冥鬼が、今度は静流が放った光の矢に貫かれて消滅する。“地龍の宝笏”で強化された“魔衝”(Magic Missile)は、一気に対象を吹き飛ばす。


「ふむ。我が輩の出番も残して於くのだぞ」

「いや、バッコスさん・・・そう言うレベルの話しじゃ無いですよ」


 手柄を取るなよ、と言うバッコスに、ロアンがやや疲れた声で言う。


「冥鬼が一撃かよ・・・全く、姫さん手加減をしらねぇぜ」

「まだ、余力は十分の様ですね」

「あぁ。何処まで強いんだか・・・」


 一緒に来たオレ等の存在って何? と黄昏れるステンカ。

 事実、彼ら三人は最初の幽鬼――これが一番弱い相手なのだが――と何とか互角に渡り合ったのだが、脅威的にその大分上になる冥鬼は正直荷が重かった。実際の所、静流に攻撃と防御を魔法的に強化して貰っていなかったら、危なかったかも知れない。


「気を抜くで無い。次が来るぞえ」


 へにゃる三人に、静流が喝を入れる。


「来るわ。今度は・・・もっと強い」


 ルナの静かな声は良く通った。

 その言葉を受けて、静流が宝笏を構え、バッコスが不適(誤字にあらず)笑い、ステンカが気を取り直し、ロアンが弓をつがえた。

 地面が小刻みに振動している。明らかに、最初の幽鬼、次の冥鬼とは比べるべくも無い強大な圧力が地の底から上昇してくるのだ。


 ところが・・・


「待ってる必要って、無いよね」


 うんうん、とルナは一人頷くと、聖皇剣をぐっと握りしめる。


「ん? 何をしておるのだルナは?」


 訝しげに見やる静流を余所に、ルナは激烈な“思念”を聖剣に注ぎ込む。

 すぐに剣は目に痛い程の輝きを放ち始める。


「なんか、ごっつー悪い予感がするぜ」

「同感です」

「主役(=我が輩)登場の演出をするとは、ルナよ。実に憎い配慮ではないか」

「・・・」


 ざわつく後衛にあって、静流だけがルナの一挙一動を注視していた。

 そのルナは、目一杯白光を放っている聖剣をおもむろにテイクバックすると、勢いを付けて闇の泉に向かって振るった。


「いっけぇえええっ!!」

「何とっ!」


 聖剣から放たれた光球は、猛烈に回転しながら泉にぽっかり開いた黒い孔に吸い込まれた。

 次の瞬間。


『ズドドドドドドドドドドドドド!!!!!』


 吹き上がる様な光の柱が放電現象を伴って立ち登り、上空の雲に突き刺さった。


「・・・やり過ぎたかな?」


 てへ、と笑うルナに、残りの全員がくらっと来た。いや、一名例外がいたが。


「演出とは言え、なかなか派手よの、ルナ」


 むぅ、と唸るバッコスに、二重に脱力するメンバーであった。


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