逢魔が娘-31◆「なにやら怪しい雲行きですね」
■ペーレンランド/都/街東部地区/東部地区/黒き泉
「さて、と。念の為にね」
小さく呟くと、ルナは瞳を閉じて心に念じた。
“心優しき光の乙女よ、破邪に赴く私に、貴女の加護を”
一瞬、ルナ心に微笑みの様な波動が伝わると、ルナの左右に光る円形の盾が顕る。
「フォース・シールド!!」
「あれが、ですか。初めて見ました・・・」
後ろから見ていたステンカとロワンが驚きの声を発する。
「ふむ。一枚でも至難の業と言うのを二枚もか」
「静流。何なのだ、あれは?」
「フォース・シールド――所謂力の盾だ。自立して動き、術者の全周囲を護ってくれる」
「手を使わん所がべんりだな。静流、お前も使えるのか?」
「一枚ならば、な。だが、ルナのあれとは違い、我のはある程度意識せねば動かせない」
便利な様で不便かも知らん、と静流は苦笑した。
その向こうでは、光の盾がルナの周囲を回りながら護っている。
「む? 何か来るぞ」
「そうか。ルナっ! 気をつけろ。何か来るぞ!」
「わかったわ!」
両手で聖皇剣を握りしめると、ルナは青眼に構えた。
地面が僅かに振動している。
「封印が、外れるのか?」
静流は瞳を凝らした。
ルナの正面10mに、その泉があった。その直径3m程度の円形の石盥の真ん中に、高さ1m、幅1mの円筒状の石のブロックが鎮座している。その石のブロックの周囲には、びっしり魔導文字が掘り込まれている。だが、その魔導文字が順に薄れて消えていく。
「ま、魔導文字が・・・」
悲鳴の様な声で、ステンカが言う。
「何者かは知らぬが――封印を解くつもりか?」
「ふっ。来るなら来るが良い。我が輩の剣の錆にしてくれるわ」
「自信だけは頼もしいな」
「来るっ!!」
ルナの叫びに、静流とバッコスの表情が引き締まる。
急速に速度を増して、円筒周囲の魔導文字が消えていく。
そして。
『ゴガァァァァァァン!!!』
完全に魔導文字が消え去った瞬間、石の円筒が空へと吹き飛んだ!
大変お待たせしてしまっておりました。漸く、この「逢魔」の再開に漕ぎ着けました。不定期ですが、更新を続けていきますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。