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逢魔が娘  作者: 冬泉
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逢魔が娘-29◆「さて、準備は調いました」

■ペーレンランド/都/街東部地区/酒場→東部地区


 “黒き泉”のある街の東部地区に近づくにつれ、明らかに周囲の雰囲気が変わってきた。鈍感大王バッコスにも感じられる位に。(バッコス談:ほっといてくれ)


「ここからは周囲を警戒しながら、慎重に進みましょう」


 ルナの言葉に、仲間達が頷く。


「もうすぐか?」

「この感じからすると、そうね。ステンカ?」

「あと、2ブロックだぜ」

「だそうよ、バッコス」


 流れる様な会話に、即席のチームながら、協調関係は非常に良好である事が感じられる。


「邪が出るか魔がでるか――何れにしろ、我が輩の腕が鳴るぞ」

「恐ろしさで歯の根が鳴る、と言う事ではないのだな?」

「ヲイヲイ静流、この偉大なる我が輩を誰だと思っておるのだ?」

「「「考え無し? 猪突猛進? たんなる阿呆?」」」


 すかさず、周囲から突っ込みが入った。

 だが、鉄面皮のバッコスには全く堪えない。


「ふっ・・・偉人は凡人には理解されぬものよ」

「・・・そこで言い切れるのがバッコスの強さなんだろうけどね」


 ちょっと苦笑しつつも、ルナが笑みを浮かべて言った。


「バッコスの事、私も嫌いじゃないよ?」

「ふむ、我が輩の門戸は広いからな。来る者拒まず去る者追わず、だ」

「あら。去る場合は引き留めてくれないの?」

「ふむ・・・引き留める、か・・・?」


 少し考えた後、バッコスの口から自然と出た答えには、本人も驚いている様だった。首を傾げながら、二三度、ふむ――我が輩らしくない、と唸っている。


「引き留めてくれるのは嬉しいわ。ね、静流」

「そうだな。他人から評価される事には、それなりに価値がある」

「それなりに、なの?」

「ふふふ、“それなり”にも、様々な重きと価値観がある故、受け取り方によって人それぞれだな」

「姫さん、そろそろですぜ」


 話している内に、1ブロックは歩いていた。

 ステンカの言葉に、ルナは頷いた。ルナと静流以外は装備を纏っているが、二人のそれは街中では非常に目立つ為、静流の提言でここまで装備をせずに来ていたからだ。


「静流、準備を整えましょう」

「了解した。・・・“天龍”、顕界(Rising)。」


 静流は短く答えると、虚空から己の神意装甲“天龍”を呼び出した。即座に、静流の背後に黄金色に煌めく優美な完全装甲(Plate Armor)がその姿を顕した。


「あれが神意装甲(MIA)か・・・」

「初めて見ました」

「ふむ、あれだけの黄金、相当な金額と見た。静流め、なんと剛毅な使いっぷりだ!」


 一部訳の判らんコメントがあったが、ステンカとロワンはその光り輝く鎧に目を奪われていた。


「精神融合(Mind Marge)」


 そのコマンドワードと共に、静流はまるで水に沈み込むかの様にその鎧に飲み込まれる。途端、鎧の頭部額に埋め込まれていた古老石(Elder Stone)が蒼く輝き出すと、一瞬全身に蒼い光の筋が浮かび上がる。


『何時でも大丈夫だ』


 少しくぐもって聞こえるのは、フルフェイスの兜を被っているせいか。手に持った錫杖を眼前に捧げた。すると、これまで3フィート弱であった錫杖が急激に長くなると、本来の大きさである6フィートを取り戻す。


「じゃ、私も。」


 静流の用意が調ったのを見て、ルナも静かに自分の鎧を呼ぶ。


「Ich frage mich von meinen Herzen, wo sind die Fluegel meines Engels? (我が心に問い掛ける。天使の羽は何処にありや?)」


 途端、ルナの背からまるで妖精の様な光の羽が二枚、目映いばかりに具現化する。そして、全身が光に包まれると、白色の薄い装甲にルナの華奢な躯が覆われた。


「す、凄ぇ・・・」

「・・・これが、“光そのもの”と言われた、“銀の髪の乙女”の鎧ですか・・・」

「白か。ふむ、銀だとすると、金よりも価値的には劣るか。ルナよ、けちったな?」


 また何やら不明な発言が混じっていたが、白い鎧を纏ったルナと、金の鎧を纏った静流から発する正の波動は、周囲の混濁した暗い気を吹き飛ばすかの様だった。


「よぅし、我が輩も!」


 ふんむ、とバッコスが気張るが、勿論光も何も発現しない。(作者注:したら大変です)


「む? 根性が足りないのか?」


 では、と先に倍する根性を注入するバッコス。無論、何も起きる訳がない。


「ふっ・・・いよいよ最終奥義を魅せる時が来たか・・・」


 究極根性注入っっっっっ!!! とばかりに、気合いを入れまくるバッコス。


 だが。


「むぅ・・・今日は調子が悪いな」


 いや、参った参った、と頭を搔きながら笑う巨漢の偉丈夫に、ルナを初めとする仲間は生温かい眼差しを溢れんばかりに注ぐのであった。


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