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逢魔が娘  作者: 冬泉
29/38

逢魔が娘-28◆「待ちの時間は終わったわ」

■ペーレンランド/都/街東部地区/酒場


「見てくれ。オレの装備はこれだ!」


 ステンカは、身につけたマントと指輪、幅広のベルトと靴を誇らしげに見せた。


「・・・魔法の短剣、妖精のマントと靴、護りの指輪とベルト、と見るが?」

「その通りだぜ! 公主さんはすげえ目利きだな!」


 静流の的確な指摘に、ステンカは舌を巻いた。


「隠密行動には非常に適した装備だな」

「あぁ。それが目的だからな」


 ステンカは静流に頷いた。


「私の装備はこれです」


 次いで、副頭目のロワンが自分の装備を説明する。白銀の鎖帷子、折り畳める長弓と矢筒、それにステンカ同様のマントと靴だった。


「妖精の鎖帷子に魔法の複合長弓、それに妖精のマントと靴だな。」

「その通りです。良くお判りですね」

「故国で散々、散々魔導品の鑑定をやらされたからな」


 何かを嫌な思い出を吹っ切る様に、静流は頭を振った。


               ☆  ☆  ☆


 装備談義が一段落した後。ルナ達が待つ酒場に、“絆の団”の団員達が次々と戻ってきた。彼らが出て行ってから、二刻が過ぎただけ――存外な情報収集力だ。流石に“街の内情を知っている”は口だけではない。


「・・・情報を総合するとだ、」


 ステンカは、テーブルを囲む面々を見回した。


「これまで全く騒動が起きていないのは一カ所だけだ。先々月店を閉めちまった“黒茸館”周辺だな」

「何処なの、それは?」


 ここの土地勘が無いルナが聞く。


「街の東の外れで、東の城門の近くだ。東地区でも指折りの“素敵”な場所だよ」

「ふむ――もしや、“黒き泉”の近くか?」


 何かを思い出した様に、静流が言う。


「ほぉ。公主さんは知ってるのかい?」

「うむ。国元にいた時、四審武官の一人からその話を聞き及んだ事がある」

「ねぇ、何なのそれって?」


 好奇心満々で聞くのは勿論ルナ。


「伝説――みたいなものなんだろうがな。この“黒き泉の都”には、“底知れぬ”と呼ばれる泉が一つあってね、都の名前の由来もそこから来ているのさ」

「“底しれぬ泉”?」

「あぁ。伝説によると、昔この地に跋扈する魑魅魍魎を、高名な賢者が魔導で大地を穿って封印したそうだ。その跡が“底知れぬ”と呼ばれる“黒き泉”って訳だ」

「魑魅魍魎を封印ねぇ。その物騒な泉には、結界か何か張られているの?」

「あぁ。泉はグリフ(魔導文字)が書かれた蓋で封印されている。もっとも、封印が本物かどうかはわからねぇ」

「開けて災厄を解き放つ様な莫迦な真似をする者が、幸いにしておらんと言う事だな」

「ふっ・・・世の中、臆病者ばかりだな」


 静流とバッコスが、正反対の考えを述べる。

 そんな二人を傍らに、ルナが重ねて聞く。


「ねぇ。蓋は開けられないの? それとも開かないの?」

「開かない、のさ。まぁ、それに越した事はない――何処かのイカレた愉快犯に蓋を開けられて、街に混沌が広がっちまっては適わないからな。大体、己の武勇を試そうとする戦闘莫迦ならいざ知らず、一般人だと“蓋が開いた”って事実だけで死にそうだしな」

「開かないのか・・・」

「ルナ、何を考えている?」


 ルナの声音に何かを感じた静流が聞く。


「“開かない”のと”開けない”のとでは天と地の差が有るからね。案外、封印したって話、本当かもね」

「その、如何にもといった物件の近くが該当する場所とは――この上もなく怪しげな状況だな」

「腕が鳴ると言うものだな」

「戦闘莫迦は放っておいて、と。ステンカ、そこまでの安全な道筋を案内出来る?」

「その為の我々だろう?」


 なぁ、とステンカがロワンに振ると、彼も大きく頷いた。


「ならば良し! 早速、行動に移りましょう!」

「良かろう」

「ふっ。腕が鳴るぜ」

「貴公、そればかりだな」


 呆れた様に言う静流に、バッコスは素敵な笑顔を返すのみだった。


 大変お待たせしてしまいました。「逢魔」の続きの28話になります。公的に超多忙で、今後もなかなか更新時間がとれませんが、出来る限り話を進めていきたいと思います。

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