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逢魔が娘  作者: 冬泉
26/38

逢魔が娘-25◆「寝言は寝てから言いましょう」

■ペーレンランド/都/街東部地区


「おぉ、すっかり忘れていたな」


 情けない声をあげる盗賊の頭目に、バッコスがまだ居たのか? とでも言う様に片眉を上げてみせる。


「この惨状を見ても、まだやる気か?」


 あぁん? と軽くバッコスが言うだけで、そのロン毛と強面の表情故に恐喝紛いの態度に見えるから不思議だ。


「く、くそっ! 仲間を殺られて、すごすごと引き下がれるかよっ!」

「あ?」

「仲間?」

「ふむ。」


 バッコス、ルナ、静流の順でそれぞれが反応を返す。

 ややもすれば無関心にも見える三人の態度に、盗賊の頭目は激高した。


「惚けるな!! 貴様ら、そんなに力がある癖に手加減もしやがらないで・・・何も殺す事無いだろ!」

「阿呆。」


 言い放った静流は、渋面を作っていた。


「周りをよく見ろ。」

「へっ?」

「あのね。あなたの仲間、誰も死んでないんだけど?」

「な、なんだって?!」

「静流は金縛りにしただけだし、私は痺れさせているだけ。バッコスも、相手を吹き飛ばしただけでしょう?」

「都で無益な殺生を、警邏隊副隊長のこの我が輩がする訳にはいかぬだろうが。」


 言うまでも無い、と憮然とした表情のバッコス。

 勿論、判っていますよ、とルナは頷いて返す。


「と言う事よ。判ってくれた?」

「・・・」


 暫し、呆然としている盗賊の頭目。

 埒が明かない、と思ったルナは荒療治に出る事にした。


「さて、あなたのお仲間は、気絶していて意識を取り戻すまで時間が掛かる。残ったのはあなた一人。私たちはまだ余力たっぷり。生かすも殺すも自由だけど?」

「何やら、我らの方が悪役に聞こえるがな、ルナ」


 静流の指摘に、所詮三文芝居よね、と苦笑して囁くルナ。

 対する盗賊の頭目は、そんな漫才も耳に入って居ない様だった。


「・・・誰も、死んでない? でも、なんでだ?」

「降り掛かる火の粉は払うけど、私たちは過剰反応はしないわ。ましてや、殺気も無い相手を、どうして殺める必要が有るの?」

「殺気が無い・・・」

「そうだな」

「うむ」


 ルナの言葉に、バッコスと静流が同意する。


「・・・最初っから、敵いっこなかったって訳か・・・」


 がっくりと肩を落とすと、盗賊の頭目は地面に武器を置いた。


「降参だ。仲間がいてもこの体たらくだ。俺一人じゃ、逆立ちしたって敵いっこねぇ。煮るなり焼くなり、好きにしてくれ」

「好きに、ね」


 含みを持たせる様なルナの言い方に、静流が興味深げな視線を振る。

 ルナは、にっこりと盗賊の頭目に笑いかける。


「・・・なんだよ」

「あなた、この街には詳しいの?」

「そりゃな。伊達に巷で、“黒き泉に絆の兄弟あり”と呼ばれてねぇ」

「そうなんだ。」


 良いながら、ルナはバッコスをちょいちょいと差し招いた。


「何だ?」

「この人達、私たちが煮ても焼いても良いんだよね?」

「言葉の綾だ。警邏隊に突き出さないと、後で一悶着起きるぞって、おいルナ。一体何を考えている?」

「良い事。」


 静流が溜息を付いた。

 付き合いは短いながら、静流にはルナの破天荒振りが多少予想出来る様になっていた。


「ルナ。まさかと思うが、そ奴らに“怪異”の解明を手伝わせる積もりではあるまいな?」

「そのまさかよ」


 案の常に答えると、ルナは不敵に笑った。


「“怪異”の解明に協力すれば、彼らの罪状も軽くなるでしょう? 私たちも助かるしね。」

「隊長の説得はお前がやれよ」


 まっぴら御免だ、とバッコス。


「結果オーライよ、こう言う場合って」

「やれやれ、我が輩よりも大雑把だな、ルナは」


 呆れ顔のバッコスに、動じないルナは静流に笑顔で目配せする。


「こう言う時にぴったりのセリフは?」

「『寝言はしっかりベッドに入って寝てから言うがよい』だろうな」


 静流が空かさずフォローする。


「そう、それっ!」


 おいおい、と困惑顔のバッコスに、重なる様に困惑顔を浮かべる盗賊の頭目だった。


 「逢魔25」をお届けします。牛歩の如き進展速度で誠に恐縮です。兎にも角にも、先に進まねば、Never・・・。

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