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逢魔が娘  作者: 冬泉
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逢魔が娘-23◆「これって、窮地になるのでしょうか?」

■ペーレンランド/都/警邏隊本部→街東部地区


 警邏隊本部を出たルナは、無言で歩き出した。先程までの行軍隊形同様、バッコスが右に、静流が左に付く。


「・・・」


 暫く歩いた後。おもむろにバッコスが口を開いた。


「で、どうするのだ、ルナ?」

「無論、無法者が跋扈する街の東部地区に行くのであろう?」


 代わって応えた静流の口元には、小さな笑みが浮かんでいる。


「進んで火の粉を被りに行く、と言うのか?」

「それが“怪異”の元凶かも知れない“吟遊詩人”とやらに逢う近道だからだ。先程、ライアン隊長殿が言われた“怪異”の出没点に、何故か東部地区は全く含まれていない。治安が悪いので、“怪異”も発生を避けていると思うか?」

「その逆であれば判るがな」


 バッコスは顎に手をやると、思案顔になった。

 そんな二人の会話に、満を持してルナが参入した。


「そう言うことね。じゃ、バッコス。東部地区で一番物騒な酒場に案内してくれないかしら」


 ルナは満面の笑みを浮かべた。


「一番物騒とは・・・」

「だから、言っただろう?」


 流石のバッコスも、少し躊躇ちゅうちょした。

 静流は、我が意を得たり、とバッコスの肩を軽く叩く。


「ね?」

「・・・仕方が無いな。だが、危険だと我が輩が思ったら、即撤収だぞ」

「タイミングはバッコスに任せるわ」

「我も異論はない」


 娘二人は異口同音に賛意を示した。

 やれやれ、と肩を竦めると、バッコスは顎を杓った。


「良かろう。では、我が輩に着いて参れ」


               ☆  ☆  ☆


 路一つ隔てると、こうも変わるのか――街の西部から東部に入ると、周囲の雰囲気ががらりと変わった。大通りを歩いているものの、人通り自体が少なく、また歩いている者も、到底堅気な感じを受けなかった。


「我が輩の後ろから離れるなよ」


 さしものバッコスも、少し緊張気味の声音だった。無論、自称“偉丈夫”であるバッコスが恐怖など覚える訳がない(感じない、と言う噂もあり)。彼が心配しているのは、美しいの上限をぶち抜くルナと静流の美少女二人の事だった。そして、その心配は杞憂には終わらなかった。


「よぉ、兄ちゃん。ハクい姉ちゃんを連れてるじゃねぇか」


 そんな声と共に、痩せた長身の男が路地から現れた。


「オレ達にも紹介してくれねぇか?」


 その広い背中にルナと静流を庇い込むと、バッコスは相手を眼光鋭く睨み付けた。


「寝言はしっかりベッドに入って寝てから言うがよい。まだ日が高いぞ? さっさと退散せい!」

「オレ達?」


 静流が相手の語尾を聞きつけて小さく呟く。何? とバッコスが反応する前に、相手が冷笑して言った。


「良く聞いてたな。お前達はオレ達に取り囲まれているぜ。おい、デカブツ。大人しく娘二人を置いていけ。そうすりゃあ、命だけは助けてやらあ」

「本当に独創的なセリフだね」

「ふむ、違いない」


 トウシロウなら震えが走る程冷酷な声音で言う男に、ルナと静流は何処吹く風か、と全く動じない。


「最初から騒ぎにはしたくなかったんだけど・・・」

「降り掛かる火の粉は払わねばならぬな」


 お互い、顔を見合わせてにっこり笑うルナと静流。


「良い心意気だ」


 バッコスも、二人に呼応して大きな笑みを浮かべた。


「「「さて」」」


 ザッと互いの背を合わせて、ルナ、静流、バッコスは三面を作った。先程、パーティーを結成したとは思えない阿吽の呼吸である。


「な、何だ?!」


 男と、周囲の暗がりに動揺が走る。


「今なら、まだ失礼な物言いも許してあげるけど?」

「左様。回れ右をして、立ち去るが良い」


 ルナと静流が選択肢を狭めていく。


「それとも、残って我が輩に完膚無きまでに成敗されるか、だ。好きな方を選べぃ!!」


 最後は、バッコスの大音声で締めくくられた。

 だが、愚か者は何処まで行っても愚か者らしい。


「くっ! 吠え面かくなよ! お前達、デカブツは簀巻きにして河に放り込め! 娘二人には傷を付けるなよ! へっへっへ。売り物にする前に、たっぷりオレ達で可愛がってやるからな!」


 掛かれ! という男の号令と共に、暗がりに隠れていた十数人の無頼漢が一斉に往来に躍り出てきた!!!


 お待たせしました。「逢魔」二十三話です。案の定、行くべき所に向かって起こるべき騒動に巻き込まれました。次回、大乱闘+大活劇って、本当か???

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