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逢魔が娘  作者: 冬泉
22/38

逢魔が娘-21◆「原点回帰が捜査の基本」

■ペーレンランド/都/大通り→酒場


 都の大通りを横一列になって歩く一行は、ルナを真ん中に、その右にバッコス、その左に静流の順に並んでいる。

 強面・ロン毛・巨漢と素敵な三拍子のバッコスに、秀麗・白皙・黒檀の静流と、華麗・溌剌・魅惑のルナの美少女二人が並んでいる構図は、甚だ人目を引いた。道行く殆どの男達から、不躾な視線がビシバシと娘と静流に突き刺さる。


『おぃ、見ろよ』

『おお~すげぇ』

『一緒に歩いているヤロウは何だ?』

『用心棒じゃないのか?』


 いや――バッコスにも、別の意味で視線(死線?)が突き刺さっていた。だが、無遠慮な視線と物言いにバッコスが眼光鋭く(Death Beam)睨み付けると、そんな不協和音もぴたりと止んだ。

 ふん、と鼻を鳴らすとバッコスがルナに聞いた。


「で? まずは何処に行くのだ?」

「まずは、酒場かな。」

「先の騒動が起きた場所だな?」

「えぇ。原点回帰が捜査の基本よ」

「成る程。我に異論はない」

「我が輩も了解だ」


 ルナの言葉に、静流もバッコスも頷いた。別に決めた訳では無いのだが、全体の流れから、自然とルナがリーダーシップを取る形になっていた。


「あの酒場のマスターに、事情も聞きたいしね」

「あの者は、“怪異”にされてしまったのだったな」

「そう。“浸食度”軽かったから、“快癒”させることが出来たけどね」

「そう言えば、我が輩が部下と酒場に踏み込んだ時には、そやつは普通の状態だったな。我が輩達が来る前には、怪異になっていたというのか?」

「えぇ。突然、変身したわ。でも、“快癒”出来たってことは、“怪異”にされてから、余り時間が経ってないと思うの」

「論理的な帰結だな」


 ルナの解説を静流が肯定する。


「そやつを“怪異”にした相手を記憶しているかも知れぬ、ということだな」

「その通り。頭良いね、バッコス」

「ふっ・・・我が輩の頭は、頭突きの為だけに有る訳ではないのだぞ」


 褒められたにしては、些かずれた反応を返すバッコスに、娘二人はクスクス笑った。


               ☆  ☆  ☆


「頼もう!!」


 威勢良く扉を開けて、バッコスはくだんの酒場に入った。ルナと静流が後に続く。既に酒場は再開されており、地元民や冒険者風体の者など十人位が屯って居た。


「おい親父。我が輩は警邏隊の副隊長、偉大でグレイトなバッコス・ドラケンスバーグ様だ。隠し立てすると為にならんぞ・・・って痛てぇ!!」

「バッコス・・・」


 にこやかな笑顔で、しかし容赦なくルナがバッコスの後頭部を度突いた。


「ルナよ。そうぽんぽん我が輩の優秀な頭脳の詰まった頭を叩くでない」

「その“優秀な頭脳”に皆目学習機能が付いていないから困るの!」

「全くだ。権威権柄ずくの態度で、相手が話してくれると、よもや思っておるまいな?」


 ルナと静流に駄目出しされたバッコスは肩を竦めた。


「よぅし、判った。おい親父、とっとと話すがよい。貴様をどうするかは、その話次第だ・・・をぉう!!」


 今度は静流が宝錫で容赦ない一撃を見舞った。素敵な断末魔の呻き声を上げて、バッコスが轟沈する。それを事無げにスルーして、ルナが退き気味の酒場のマスターに話し掛けた。


「さて、と。気を取り直して。マスター、私の事を覚えている?」

「・・・いや――娘さんの様な美人なら、一度見たら忘れられないんだが・・・全く記憶にないな」

「自分が、自分じゃ無いモノになった記憶は?」

「警邏隊でそんな事も聞いたが、正直それも全く思い出せない」

「昨日までで、何か普段とは変わった事ってなかった?」

「・・・そう言えば・・・」


 必死に思い出す様に、マスターは眉間に皺を寄せる。


「一昨日の晩、吟遊詩人が来て、酒場で歌ったんだが――これまで、ここでは見かけた事がない顔だった。もっとも歌は非常に上手かったので、気にはしなかったがね」

「歌が上手い吟遊詩人ね。それ以外に変わった事は?」

「いいや、それ以外は至って普通の通りだったな」

「そう。どうも有り難う」


 丁寧に一礼すると、ルナは静流と(何時の間にか復活した)バッコスを伴って酒場を出た。


 「逢魔」二十一話をお送りします。少しづつ、話が進展していますが、まだ冒険には程遠い状況です。暫く、街中での話が続く予定です。宜しくお願い申し上げます。

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