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逢魔が娘  作者: 冬泉
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逢魔が娘-20◆「成る程そうか、と言いました」

■ペーレンランド/都/警邏隊本部


「で? 今後どうするつもりだ、ルナ」

「怪異を、ってこと?」

「そうだ。お主は、怪異の元を正す為に来たと言っていただろう?」

「おい、バッコス。エリヤ姫様はだなぁ・・・」

「隊長は黙っててくれ。」


 非常に珍しくも真剣な表情で、バッコスはルナに向かい合った。バッコスがまともなことを言うなんて――と上司のライアン隊長は目を白黒させているが。


「確かに、警邏隊もこの国のあちこちで怪異が発生していることは判っている。その調査もしているが、残念だが原因はまだ掴めておらん。ルナは傑門の姫さんなんだろう? そもそもそんな身分の奴が、何だってこんなことに首を突っ込んでるんだ?」

「う~ん、不自然に見える?」

「見えるも何も、不自然極まりないな」


 なぁ? とライアンと静流に振るバッコス。


「確かに。自国のことであれば、百歩譲って多少は理解出来ますが、何分他国のこと――何故に高貴な姫様が自らお手を煩わせるのか、正直小職にも判りません」


 ライアンは、バッコスの言葉に同意して言った。だが、静流の反応はライアンとは少し違っていた。


「我も理由は知りたいが、国家が急を要する時に、指導層が先頭に立って物事の解決に取り組む事自体は不自然な事ではないと思う」

「・・・そう言えば、あんたも公女、とか言ってたな?」

「いかにも。我は漠羅爾バクラニ新王朝が恵久美流エクビル公国は天嶺家の息女」

「なら、お主も何でこんな事に首を突っ込んでいるのか、聞きたいものだな」


 ふむ、と静流は息を吐くと、説明しようと口を開き掛けるが、先にルナが話し始めた。


「・・・私がここに調査に来たのは、怪異がこの国に留まらないだろうって予想されたからなの」

「何?」

「今は、この国を取り巻くヤーティル山脈の外側では怪異は発生していないわ。でも、それが何時まで続くかは判らない。国の重臣達は、この怪異が来る大事の前兆に過ぎないって予想している・・・」

「・・・そして、その怪異が爆発的に広がった後では、対処が遅すぎると言う事だな?」


 ルナの言を引き継いで、静流が言った。


「驚いた顔をする必要は無い。それならば、我の調査理由と同様だろう?」

「・・・そうね。」


 小さく溜息を付くと、ルナはバッコスとライアンに言った。


「まだ確信を持って言える段階じゃないけれど、手遅れになってからでは遅いわ。手を貸して貰えない?」

「うぅむ・・・しかし・・・」


 立場と責任を思案して、ライアンが唸っている傍らで、バッコスがお気楽に言った。


「良かろう。“義を見てせざねば勇無き也”だ。我らの置かれている事態がさほど急を要しているのならば、我らが動かない訳には行くまい?」


 疑問符は、ライアンに当てられたものだった。聞かれた当人は、少し渋面を作ると、漸く頷いた。


「確かにそうだな。仕方が無い、代表府に申し立てを行おう、っておいバッコス! 何をしてるんだ!?」

「旅立ちの準備に決まっておろう?」

「だからな、まずは許可を取ってから・・・」

「爺共の決定を待っていたら、一億年は経ってしまうわ。時間を無駄にするのは莫迦らしい。我らはすぐ出発するぞ!」


 にやりと笑ってサムズアップするバッコスに、娘と静流が大きく頷く。


「即断即決こそが“漢”の行動よ」

「しょってるね!」

「違いない」


 得意そうにそう嘯くバッコスに、ルナと静流も笑みを浮かべた。


 「逢魔」二十話をお送りします。さて、娘と静流が怪異に係わる訳が明かされました。いよいよ、次回からは即席パーティーの冒険がスタートします。今後どうなることやら・・・。

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