逢魔が娘-19◆「仲間が二人増えました!」
■ペーレンランド/都/練兵場
「見事だな、姫様とやら。流石の我が輩にも動きが全く見えなかった。まさに、乾杯だ」
「乾杯って・・・字が違うし」
さりげに頭の悪さを露呈するバッコスに、完敗でしょう? と笑いながらも、娘は少しはにかむ様に、バッコスに手を差し出した。
「実力の1/100で十分、だなんて、失礼な事を言ってごめんなさい。」
驚いた様に、バッコスは自分に差し出された華奢な手と、花綻ぶ微笑みを浮かべる小さな顔を交互に見やった。その綺麗な笑みを見ていると、何処か暖かい物が心に広がっていく。自尊心超肥大の、バッコスの心もすっかり溶かすかの様に。
「・・・いや、我が輩も不遜な物言いであった」
その細い手をそっと取ると、バッコスはゆっくりと立ち上がった。
「姫様とやら、お主本当にやるな。」
「ルナマリオン・エリヤ・ラ・カイラム。」
「あぁ?」
「だから、私の名前。ルナマリオンでも、エリヤでも、どう呼んでもいいけど」
「そうか・・・ならば、我が輩は“ルナ”と呼ぼう。」
「おい、バッコス・・・」
高貴なお方に対して、何を勝手なことをほざいているんだ、と些か慌てるライアンをルナは手で制して言った。
「わかったわ。それでいい」
「良かろう。では、我が輩のことは、心よりの尊敬を込めて“偉大なるバッコス様”と呼ぶがよい」
「了解、バッコスね」
「ルナ! 肝心の修飾語が抜けておるぞ!」
「聞こえなかった? うふふ、お馬鹿さんには聞こえなかったりして」
「なんだとぉ!」
喉元過ぎれば何とやら――再び不遜で傲慢な態度に復帰するバッコスだが、ルナもきっちりお返ししていた。ま、これはお互い様なのだろう。
「我も“ルナ”と呼んでも良かろうか?」
それまで黙って聞いていた静流が言った。
「いいわ。私も、貴女の事を“静流”って呼んで良い?」
「無論だ」
ルナの言葉に、静流は大きく頷いた。
ルナは、改めてバッコスと静流の二人を交互に見ると、姿勢を正して言った。
「じゃあ、バッコス」
「おう」
「静流」
「うむ」
「これから、宜しくね」
「任せておけ!」
「こちらこそ、宜しく頼む」
三人が出来たばかりの友情(?)を暖めている間、蚊帳の外に置かれたライアンはやれやれと苦笑いを浮かべた。
「エリヤ姫様。お茶をお出ししますので、私の部屋にお戻り頂けますか?」
「えぇ、いいわ。隊長さんには、今後の事を相談する必要があるしね」
「では、こちらにどうぞ」
「最上級の茶を出せよ、隊長」
「お前に言われんでも無いわ!」
「隊長さんとバッコスって、仲良しさん?」
「「違うわ(ぞ)!!」」
思わずハモってルナに突っ込むライアンとバッコス。
「ふむ。見事な複合技ではないか?」
静かに、二人に止めを刺す静流であった。
「逢魔」十九話です。漸く主人公の名前が明かされました(笑)。名付け親は、RPGの盟友のらぱんどら氏です(どうも有り難うございました)。また、静流とバッコスがいよいよ仲間に加わります。だんだんと、パーティーの呈を成してきましたが、さて?




