逢魔が娘-14◆「悪い予感がするんだが」
■ペーレンランド/都/警邏本部
「ん?」
ペーレンランド首都警邏隊隊長、ナーシアス・ライアンは、ガチャガチャと甲冑が鳴る音が近づいてくるのを耳にした。誰かが、怒鳴る声も切れ切れに聞こえる。
「一体、何の騒ぎだ?」
苦労性の顔付きに一層の疲労の色を浮かべると、ライアンは自席から立ち上がった。自室の扉を開けると、外の番兵に尋ねる。
「この騒ぎはなんだ?」
「はっ、隊長。ドラケンスバーグ副隊長が、酒場で暴れていた容疑者を連れて帰ったとの事です」
「酒場で暴れていた容疑者?」
「はいっ! 現在、取調室に入っております!」
「・・・そうか・・・」
番兵からそれだけを聞くと、自室に戻ろうとして、ライアンは脚を止めた。あのバッコスが容疑者を連れてきた、だって? あの、単細胞で怒鳴るしか脳がないバッコスが?
「・・・」
何処か嫌~な胸騒ぎがしたライアンは、踵を返した。自分の、この勘を信じて色々な難題を耐え抜いてきたライアンは、今回も自分を信じることにした。そもそも、隊長が容疑者を入れた取調室に行くのは変な話ではない。
「取調室に行く」
「はっ! お供致します!!」
カッチーンと踵を合わせて敬礼する番兵を従えて、ライアンは威厳が許す限り、足を速めた。