ねえ、ママ

8

「ママ、疲れたの？」

　こたつに首までもぐりこんで、目を閉じているママ。

　フミンショーだからしんどいのかな。あたしは思った。

　それにしても昨日の夜はひどかったね。ケンイチのやつ、ママにあんなことを言うなんて。

　主婦って忙しいの？　主婦は楽でいいな、なんて。

　子供のくせに大人みたいな口のきき方。いや、母親に向かって言うことじゃないでしょ。いままでいろいろ、助けてもらって、面倒も見てもらっているのに。

　ねえ、ママ。ママは一生懸命やっているよ。誰がなんと言おうとあたしは知っている。

　働いている母親に比べたら楽やろ。ですって！

　そりゃあ、そうかもしれないけど。人は人。自分は自分。そう言ってママに育ててもらったくせに。人と比べたってどうにもならないことって、いっぱいあるの。わかるでしょ。

　あたしがママだったらそう言い返してやったわよ。

　それなのにママったら、しゅんとしちゃって目に涙なんかためて。

　ママは本当にケンイチには弱いんだから。

　もし、旦那さんのサトルがそんなことを言ったら、怒って言い返していたはずよ。

　あたし、そんな強気なママの方がいいな。

　最近のママは特に変だよ。なんだか落ち着かない感じで、いつもそわそわしているように見える。家からもあまり出なくなったね。どうしちゃったのかな。ねえ、ママ。

　あたしはママの顔を覗き込む。

「ぐおっ」

　ママのいびきだ。

　ママ、今日もお昼ごはん食べないの？大丈夫？

　あたしはママの頬をぺろりとなめた。

　ママは目を覚ますことなくいびきをかいている。