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机に頬杖をついてママが目を閉じている。
静かな午後。窓から明るい日差しが射している。
ごはんをいっぱい食べたから眠いの? ママ。
今日の昼食は、カップうどんの大盛りとコンビニおにぎり二つ。
二種類ともおいしいね。でも、ちょっと食べ過ぎかもね。
満腹は眠くなるからって、いつも昼ご飯は控えめって言っていたのに、今日は違ったね。
だけど、もう、二時間もママはこの調子だ。
机の上に開かれたノートには何も書かれていない。えんぴつもノートの上に転がったままだ。
ママ、今日も書けないんだね。
時々薄目を開けるママ。
ママ、もういいよ。もう諦めちゃってノートなんか閉じようよ。小説なんか書くより読む方がおもしろいに決まっているんだから。ねえ、ママ。
あたしはママのノートの上に座って、ママを眺める。
ママ、今日はこんなにいい天気。ぽかぽかだよ。散歩に行って気分転換しようよ。
体を動かさなきゃって、ママいつも言っているでしょ。だから。
当然、ママには聞こえていないし、何も見えてもいない。
それでもあたしは話しかける。
ママの腕に触れてみる。もこもこのフリースを着たママ。
ママは不意にあたしが触れた腕を見た。ママと目が合う。
まさかね、あたしに気付いた?
ママはすぐに動かした首を元に戻して、頬杖をついた。
目を閉じるママ。
気付くはずないか。そうだよね。