アンネと妹
ついに私にも第二の人生としてのモテ期が来たか……。
うれしいのかよくわからないこの気持ち……
うれしいよりも動揺の方が大きいと思う
そんなことを思いながら私はベットに座っていた。
「……ラールフ。元気してた?」
アンネの声が聞こえたかと思うと、部屋の扉からひょこっと顔だけを出しているアンネが目に入った。
「元気だけど……。今日はどうしたの?」
私がほほ笑んでそういうとアンネはニッと笑い「……ふふふ。いいもの見せてあげるわ。」そういうと今度はにやにやと笑った。
「じゃじゃじゃーん、私の妹アリスよ!」
そう言ってアンネの前に現れたのは、あの不思議の国のアリスに出て来そうな金髪の長めの髪で毛先は少しカールした女の子だった。
アンネの赤髪と違って二人は親からの遺伝がそれぞれちがうようだ。
それにしても、ほんとに不思議の国のアリスそっくり。
こんな偶然ってあるんだ。
「……はじめ、まして。ラルフ様。アリスです……。」
「初めまして。僕はラルフ。」
少し控えめな性格のようだけど礼儀正しくていい女の子。
「ん、アリス。ラルフに「様」なんてつけなくていいのよ。直にあなたの義兄に……、なるんだから……」
自分から言っておいて少し恥ずかしそうに顔を赤らめている。
「じゃあ……ラルフ義兄さま」
そう何事もなかったかのような顔で言うアリスにアンネは思わず笑っていた。
「……ちょ、そうじゃなくてさ……。まだ早いのよそれは。」
「まだ早い……?じゃあラルフさんで……。」
「様」が「さん」に変わっただけだけどまあ慣れていないのなら仕方がないだろう。義兄さまよりましだし……。
「……まぁ、いいや。」
アンネはあきらめたのかそう言って私の隣に腰かけた。
「あ、テーブルあるからソファ座っていいよ。」
隣に座ってくれたアンネには悪いけどここじゃアリスちゃんの居場所がないし移動しないと。
それにしても、アリスちゃんちょっと抜けてるところがあって妹キャラだなんてギャルゲーのヒロインのお手本みたいなキャラだな……。
「お~い、ラルフ?そんなにアリスを見ても何も出ないわよ。……もしかして、アリスに見惚れちゃってるのかしら~?」
頬杖をついたアンネがこちらを見ながらにやにやと笑う。
「……ち、違う。別に見惚れてたってわけじゃ……。」
あながち間違ってないから普通に嘘つけない……。
「……み、見惚れて……っ……?そ、そんな。困ります……。姉さんの婚約者なのに……。」
「だから違うよ……?」
「……で、でもその気持ちだけは受け取っておきます。ありがとうございます……。」
そういうとアリスちゃんは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「……あ、いや~別にそんな特別な感情をいだいてるわけじゃないからね?」
私が苦笑しながらそう言うとアリスちゃんの顔がサッと悲しそうな表情へと変わった。
「そう……ですよね。さすがにそんなわけないですものね。」
そんなあからさまに悲しそうな顔されると罪悪感が込み上げてくるんだけど……。
「あぁ、もう。イチャイチャするんじゃないわよ~!」
「イ、イチャイチャなんてしてないよ……!」
私が負けずにそういうと、隣でアリスちゃんは何やらぶつぶつとつぶやき始めた。
「イチャイチャ……?あの会話はイチャイチャしているって言うの?ってことはでもイチャイチャは付き合っている人同士がやっているときのことを言うんじゃ……?ということは私とラルフさんはそう見えていたってこと……?恋人同士に?……そ、そんなはずは……」
「あ、アンネ。アリスちゃん大丈夫……?」
私が心配になってそう訊ねるとアンネは当然のことのように笑っていた。
「あぁ、あれいつものことだから大丈夫よ。……ま、ああいうところがまたかわいいっていうか……。」
いつものことで済むんだ。
ちょっとアリスちゃんから変なこと聞こえたけど……
イチャイチャは付き合ってる人同士がどうとか……。
まぁこういうのは気にしないのが一番かな。
……気にしない気にしない。
「……あ、そろそろ時間ね。帰るわ。じゃあね。」
「アンネもアリスちゃんもバイバイ。また来てね。」
そう言って私は笑顔で二人にそう告げた・
「……っ!じゃ、じゃあ!ありがとうございました……!」
アリスちゃんは相変わらず最後まで顔が真っ赤だった。
さっきの間いったい何を考えていたのやら。
こうして私は二人を見送った後一人で帰路についた。
……ていうか、アンネに妹がいるなんて初めて聞いた。前世の記憶を取り戻す前も結構長い付き合いだったけど、あんな事一回も言われたことなかったなぁ。
なんで今日言おうと思ったのかはよくわからない。