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こそどろ

目が覚めると固いベッドの上でした。どうやら私はあのまま気を失ったようです。泣きながら私を揺さぶる姉とメディーク!メディーーーーーク!!っと叫ぶお父さん、それをあらあらといいながら眺めるお母さんが目に浮かぶようです。首が痛いのであながち間違ってはいないかもしれません。


っと冗談はさておき、AI時代の名残である電波時計よりも正確な私の体内時計は七時二十三分を指しています。この時間ですと、お父さんは仕事に、お母さんとお姉ちゃんは買い物でしょうか?


はい?早すぎる?私もそう思います。理由を聞いてみると早い方が良いものを買えるとのこと。この世界は物流が日本ほど早くありません。当たり前です。車も保存設備もないので。だから昨日仕入れたものを今日商品棚に補充するのが一般的、つまり朝が一番商品が多いのです。


その大量にある商品の中からお母さんは、一番よいものを選んでくるのでうちのご飯はそこらのレストランより美味しい、、、らしいです。行ったこと無いので分かりませんがお世辞を知らないお姉ちゃんが言っていたので間違いありません。


、、、ハブられた訳ではありませんよ?いつ熱を出すか分からず、不安で外に出してもらえないだけですよ?いつも誰か1人は私と残ってくれますし。あと、外食に行ったあとは決まってお見上をたくさん買ってきてくれるので、私的には満足です。むしろAI時代にはたくさんお見上をもらっても、食べることどころか触ることさえ出来なかったので幸せすら感じています。


っとか言いつつちょっと寂しいのは事実で、いつか体調が安定し、外に出られるたら良いなぁと思う今日この頃です。


閑話休題


さて、誰もいませんし何をしましょうか?靴を履き台所へ。洗い桶の中に放置されている食器を洗います。洗剤は節約するため水で薄め、藁で出来たたわしにつけます。食器は木製なので傷つけないように優しく擦り、サッとすすいだらカビが生えないように丹念に拭きます。あとは戸棚に綺麗に並べておしまいです。


次は、、、あっ洗濯物が畳まれていませんね?アイロン台と中に火を入れるタイプのかなり古いアイロンを持ってきて、


【着火】


誰でも使える簡単な魔法を使い、火をつけます。(普通は詠唱し、魔法名を言わなければ発動しません。詠唱破棄も出来ないことはありませんが、熟練の魔法使い以外は無理。つまりこの子アタマオカシイ。)十分暖まったのを確認し、アイロンを掛け丁寧に服の皺を伸ばしていきます。あとは綺麗に畳んでいつものタンスへ、虫よけの香袋とともに閉まっているととどこから扉の開く音が聞こえてきました。


音を立てないように、慎重に、ゆっくり開ける音、私は物影に身を隠し、耳をそばだてます。


「なぁ~アニキ?こんなボロっちい部屋に拳大の魔石なんてあるんですかい?」


「無駄口叩いてねーでさっさと探せ。んでとっとと見つけて逃げるぞ。」


「へ~い、、、」


魔石、それはこの世の理から外れ、生けるもの全てを食らう不滅の存在である悪魔の心臓です。


悪魔とは全身が高密度の魔力で出来ており、いくら体を破壊したとしても周りの魔力をかき集め無限に再生する化け物のことです。両腕をネジ切り、脳を露出させ、腸を引きずり出してなお、笑いながら襲いかかってくる恐怖の象徴、そんな彼らの唯一の弱点であるのが今こそどろたちが狙っている魔石です。


いえ、少し語弊がありますね。“魔石が”弱点なのではなく、“魔石のある場所が”弱点です。悪魔達は体を作るために魔力を使いますが、普段空気のように質量さえ感じさせない魔力を物質化させようとなると、とんでもない量が必要です。更に魔力は拡散しやすく、物質化し、拡散し、またそれを集めて物質化する、これを繰り返すことにより彼らは体を維持しているのです。


、、、察しのよい方は気が付きましたか?拡散と収縮を繰り返し、生まれた循環、その中心にはバカみたいな量の魔力が集まり、アホみたいな力で圧縮されています。大質量が圧縮されたことにより熱が生まれ、熱+質量+圧力=結晶化、これが魔石です。ダイヤモンドと製法一緒です。規模が違うだけで。


そこに攻撃を入れられると循環が乱され肉体を維持できず悪魔は消滅、不安定な物質である魔石も一緒に砕けてしまうので、拳大となると国宝級、、、いや、世界遺産とかと同等以上の価値があるのではないでしょうか?レッドリストの動物と同じくらい、国を越えて大切にされていますね。つまり何が言いたいのか?そんなこーきゅーひんうちにはねーです!!


なんでそんな変な噂?が流れて、、、あぁーそう言えばありましたね?なんか数日前に両親が悪魔狩ってきたとか言って魔石を持ち帰ってきて、自慢してたような気がします。どうせパチもんでしょうが。


こそどろ達は居間をごそごそしているので物影から這い出し、素早く自室へ転がり込みます。そしてベッドの下に隠してある箱からナイフ、軽食、身分証を掴むと決められた順に床板に魔力を流し込み隠し扉を開けると中に避難、例え核ミサイルが直撃したとしても小揺るぎもしないシェルターに引きこもります。まぁそこまでの防御力はないでしょうが攻撃魔法の一発くらいは防いでくれるのでしょうか?(両親が愛娘のために全力で作っています。防御力の程は、、、ご想像にお任せします、、、)


シェルターの壁にソレイユと書き、隠し部屋かっこわたしせんよーるーむかっことじに入り、緊急連絡用の魔道具を使ってお母さんに助けを求めます。―――


、、、なんでシェルターの中にプライベートルームがあるのでしょうか?よく考えてみたらおかしいですよね?


―――そしてお母さん来るまで備え付けのベッドでごろごろしています。え?お母さんの心配はしないのか?酔っ払っていたとは言え、十数人の門番、しかも大柄な男たちをビンタで倒し、片手で外へ放り投げてたからたからこそどろ2人くらい心配ありません。寧ろ2人が生きて帰れるかの方が心配です。


こそどろの冥福を祈りつつ、私の意識はまどろんでいきました。

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