おはよう
朝の気配を感じ、ゆっくり目を開けた。雨漏りのせいか、所々に染みができた木製の天井。それを薄い布がしかれた、お父さんの手作りのベッドから見上げる。起きたばかりだからか、なかなか頭が働かない。いつもならスパッと起きれ、、、無いね?でも今日はいつもよりぼーっとしている。熱が下がりきってないのかな?
重い体をゆっくりと起こし、なんとなく部屋を見回す。狭い部屋に不釣り合いなほど大きなベッドがふたつ仲良くならんおり、隣のベッドでは天使が静かに寝息をたてていた。このベッドは、私とお姉ちゃんのためにお父さんが作ってくれたものだ。お父さん曰く、大きくなっても使えるようにとサイズを大きくしたそうだ。いったいどれだけ娘たちを大きく育てるつもりなのか。小柄な私が六人寝っ転がってもまだ余裕がある気さえする。
しばらくぼーっと部屋を見回したあと、お姉ちゃんを起こさないように静かに床に降り、服を取りにタンスへと向かおうとする、、、しまった勝手に手伝いをしないようにくつぼしゅうされてんだった、、、
というかお手伝いしなくて怒られんのはまだわかるけど、お手伝いして怒られるっておかしくない?きっと私が人類初だよ?
それはさておき無いもんは仕方がない。裸足で床に足を下ろす。うへぇ~、、、小石が痛い、、、お姉ちゃんはインドア派の私とは違い、かなり活発だ。よく外に出掛け、玄関で土を落とさずに帰ってくるから我が家は家中砂だらけだ。いつもちゃんと落としてって言ってんのになかなか止めてくれない。たまにある尖った小石とかが危険だから裸足で歩くときは注意しなければいけない。私は慎重に足を踏み出した。
止めてほしいことといえば、お姉ちゃんはどこかに出かけるたびに小さな傷をつってくる。しかも日焼け止めもほとんど塗らずに家を飛び出していく。お姉ちゃんの将来のお肌が心配だからこれも止めてほしい。
(テトテトテト)(クラッ)
え~と?確かここに、、、また隠されてるし、、、あった、いつもの服。
タンスの奥の方から、色褪せてボロボロになった服を取り出す。新しい服を買ってもらえない訳じゃない。私が意図的に着ないだけだ。だってもったいないから。こんな死にかけが新しい服を着るなんて。だけど両親はやたらと私に新しい服を着せたがる。10歳まで生きられるかどうかの私には贅沢してもらいたいらしい。その愛情は素直に嬉しいけれど、できることなら特別扱いすること無く普通に接して貰いたい。それが、私にとって一番の幸せだから。
さてと、服を手に入れたからさっさと着替えるとしますか。
(テトテトテト)(クラッ)
うぅ~きついぃ~頭クラクラするぅ~こんな時は寝よう。そうしよう。
そんなこと考えながらベッドに腰かける、、、一度でいいから倒れ込んでも痛くないベッドで寝てみたい、、、
まぁそんな高級品に寝れるのはお貴族様くらいで、平民には一生かかっても無理だけどね?
しかもうち貧乏だし。それに、そんなベッドがあるなら、私よりも他のみんなに寝てもらいたい。うちの家族じゃなかったら働きもしないただ飯食らいの私なんか見捨てられて当然だから。孤児院ですらきっと見捨てるだろう。優しい家族に恵まれた幸運に心の中で感謝する。もし、死んだあと転生することができたなら一生かけて恩返ししよっと。
ベッドの上で着替えのために服を脱ぐ。すると、服の下から白くスラッとした美しい腕が、、、うん。はっきり言うと気持ち悪いくらい細くて色白な腕が出てきた。ほんとに人間なのかさえ怪しい。血が通っているとは到底思えないほど真っ白な肌、触れたら折れそうなほど細い腕。アンデッドなんてあったことが無いけど、きっと私の外見を例えるならその表現が一番あっていると思う。
着替えが終わったら服を丁寧にたたむ。あれ?あっここ穴が空いている。繕わなければいけない。お姉ちゃんのベッドと私のベッドの間にある引き出しから裁縫セットとボロ布を取り出しチクチクと縫い付ける。
(チクチクチクチク)
それにしても、、、この服絶対元の布よりくっ付けた布の方が多いよね?よくこんなになるまで着たもんだ。まぁこれからも着続けるつもりだけどね?自分の分が終わったあと、ついでにお姉ちゃんの服も繕ってあげる。怪我しませんようにと心を込めてひと針ひと針。
そんな私を、朝日は優しく照らしていた。