病気
私たちのいる世界の地球では、全人類の半分が死んだ。
新種の病気だ。それがウィルスなのか菌なのか、はたまた胞子か何かなのかすら、わかっていない。
研究者はみんな死んだ。治療法はまだ判明していない。致死率は100%だ。
なぜかはわからないが、研究者、医学者、医者など、病気に対抗できる策を持つ人間から死んでいった。
絶望のムードが漂っていた。
「まぁこれも運命なんでしょ。」
電話からのんきな声が聞こえる。
「散々やってたしっぺ返しがついに来たってとこだよ。」
「あのさぁ...」
「だってさ、ね。仕方ないじゃん。かかったら最後なんだし。」
「それはそうだけど...」
「それより、さ。明るい話をしようよ。暗い話してたら気も病んでしまうしさ。」
「でも...」
「そうだね。じゃあ、未来の話をしようか。」
「未来?」
「そうだよ。未来。いつかはこの病気も終わるでしょ?」
「終わんないかもよ?全人類がここで死んじゃうかもしれない。」
「そうかもねぇ。まぁ私は死ぬ気ないけどね。」
小さく笑い声が聞こえる。
「それに、止まない雨はないっていうし、さ。」
「そんなのんきに言われても。」
「結局、自分の力じゃどうにもならないんだ。死んだら死んだで、まぁ、運が悪かったってことだね。」
「まぁ、そうだけど...」
「どうせ学校なんてもうしばらく...少なくとも一年はないだろうし、ゆっくりしとこうよ。気ぃばっか張ってても疲れちゃうだけじゃん。」
「...そうだね。」
「子どもなんだから、ね。しばらくは能天気に過ごしてもいいんじゃない?」
「...うん。そうしてみるよ。」
「じゃあ、そろそろ切るね。また明日話す?」
「それは明日になったら考えるよ。じゃあね。」
「うん。じゃあね。また。」
結局。人類は滅亡した。
「結局、あれは何だったんだろうね。」
私とこいつを除いて。
「無視しないでよ。」
もうしばらく、人間とあっていない。
「ねーねーってばー」
本当に全滅したんだろうか。
「かまってよー。寂しいよー。」
「うるさい。」
「もー。二人しかいないんだし素直になりなよー。」
「黙れ。」
...少しだけ距離は近すぎるけどね。
「今日、どこ行く?」
「さぁ。」
「それじゃ、適当に歩こうか。」
「そうだね。」
私たちはどこで死ぬのだろう。
明日か、明後日か、その先か。
今は一日一日生きるので精いっぱいだし、少し落ち着いたら話そう。
未来のこと。私たちのこと。