あきらめ
辛い怖い苦しい痛い悲しい虚しい暗いだめだ無駄だどうでもいい
そうだ。逃げよう。
高校生になった。社会を意識するようになった。
先生が言うには私たちはもう大人らしい。
私たちは...少なくとも、私は、まだ大人なんかじゃない。
そう思いながら聞き流していた。
「もう大人なんだから」
100万回は聞いた言葉だ。
高校に入ってから言われる機会が増えた気がする。
そのたびに「大人なんかじゃない」っていうのも疲れてきた。
入学から二か月がたった。
学校はまだ始まっていない。
私は公園を一人歩いていた。
朝陽が昇り始めた。
つま先が濡れる。
周りには誰もいない。
少し、歌った。
私だけの歌。
私にしか歌えない歌。
大人はそんなことしてないで勉強しろ。という。
「いやだね。」
やっぱり、徹夜明けの太陽はまぶしい。
でも、きれいだ。
気付けば、時間がたっていた。
影が伸び始めている。
「そろそろ家に帰らなきゃな。心配かけちゃうや。」
戯言だ。待っている人なんて誰もいないくせに。
勉強は、嫌いだ。
将来必要ないことだろ。やる必要なんてないじゃないか。
人間は、苦手だ。
些細なことですぐに怒る。自分は話を聞かないのに自分の話を聞かれないと怒る。
社会は、嫌いだ。
理不尽だ。不合理だ。好きなことをして生きていきたい。好きなことをやめたくない。
好きなことをやめてまで生きていたくない。
自分は、嫌いだ。
すぐに逃げる。そのくせ認めてほしいという。
好きなことで生きていきたいという。そのくせ好きなことをすぐにやめる。
そんなことを考えているうちに、家についていた。
今日はちょっと話してみようかな。
将来のこと。勉強のこと。学校のこと。歌のこと。
まだ夢を見ていたい。
この夢からだけは逃げたくない。
歌は、好きだ。
自転車に乗った高校生が横を通り抜ける。
学校は、嫌いだ。