0・はじまりにあたって
※この物語は短編ですが、一度に投稿するには読みにくいので、連載という形で分けて投稿したいと思います。
神様には二種類いる。
一つは治める世界を自ら所有している神様だ。詳しく説明するとこの神様もまた二種類に分けられるという話だけれど―—この説明は後回し。
もう一つは、治める世界を自ら所有していない神様。つまり彼らは、雇われの神様だ。
派遣、と言っても差支えない(実際、そう呼ばれているらしい)。
自分では治める世界を持っていないために、彼らは神様がいない無人の世界へ中央から派遣されることになる。
そこに神様個人の意思や希望などが考慮されることはこれっぽっちもない。「お前の現場はここだ」と、上からそのようにお達しが来るだけだ。
また、神様にも能力には個体差がある。
出来ること、出来ないことーーあとは神様個人の性格や過去の経験、業務成績や好き嫌い……およそ個のスキルやスペックーーあるいは上司の好みによって勝手に振り分けられた派遣先で、多くの神様たちは仕方なしにしぶしぶ働いている。
こんな世界にして欲しい、
あんな世界になったらいい
そうした《注文》をつけてくるのは《オーナー》様だ。
派遣の神様やその上司よりもずうっとずっと、偉いひと。世界の“本当の”所有者。
派遣の神様たちは自らの勝手な判断では世界を作り変えていくことなどおよそ出来ない。
自分の世界ではないのだから当然だ。
仕事の全ては指示書や仕様書の通り進めるようになっているし、神様としての奇跡の行使については上司の許可
ハンコ
を貰う必要がある。
辛い話だが、そんな現状に彼らは文句をいうことなど出来ない。
そんなことをすれば次から自分に仕事が回ってこないことを派遣の神様たちはうんとよくわかっているし、なにより多くの神様たちは自分の給料分の労働しかしない。文句を言って上に逆らう分だけ給料は減らされるし、契約が切られでもしたら路頭に迷う末路が待っている。
神様には二種類いる。
一つは治める世界を自ら所有している神様。
もう一つは、治める世界を自ら所有していない、雇われの神様。
後者の彼らはつまり《Administrator》権限を持つただの運用者であり、ここ《カペー》の世界においてはただの一労働者に過ぎない。
仕様書にそって監視をしながら、時折世界を作り変えたりする為のアップデートシステムを走らせるだけの単純労働者である。
カペー領に数多星の数ほど存在するという、異世界の領地を管理するこの単純労働者。
通常、彼らのような派遣の神様たちのことを世間では《執政官》と呼んでいた。