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私は侍女になりたいのです!4

引っ越しの三日前になった。

私は年配のシスターに呼ばれて応接室に来ていた。

ドアをノックして中に入ると、ソファーに座るように促された。

引っ越しの最終確認だろうか。

私がソファーの端っこに座ると同時に、再びドアがノックされた。

若いシスターが入ってきた。

そしてその後ろにいたのは、シルバーの髪を一つに纏めた背の高い紳士、エリックの父親だった。

今日は濃紺の騎士服を着ている。

(仕事帰りなのかしら?そういえば、エリックも騎士なりたいって言ってたっけ。

エリックは父親似だから、きっと騎士服もよく似合うわね。)

そんなことをぼんやり考えていると、私の正面にエリックの父親が座った。

にっこり微笑んだその顔は、エリックを思い出させて、少し胸が痛い。


「サラ、こちらのオパール侯爵様があなたを養女にしたいとお手紙を下さったのよ。」


年配のシスターが嬉しそうに話始めた。


「あなたの気持ちを聞いてからお返事したいと思っていたのですけど、最近あなたは塞ぎこんでいて、食事が終わるとすぐに部屋にこもってしまうものだから、話す時間が無かったでしょう?こんなに良いお話、滅多にないのよ。ねぇ、サラ、あなたオパール侯爵家の養女になる気はない?」


(オパール侯爵家の養女?私が?

そりゃ、エリックと一緒にいられるのは嬉しいけど、本当にいいのだろうか。

いや、それより私は侍女になりたいのだ。

貴族令嬢なんて、面倒なだけじゃないの。

でも、侯爵家の推薦があれば、侍女の学校にも入りやすいかも?ん~~、どうしたものか。)


「あの、、、エリックはこのことを知っているのですか?」


気になって、つい聞いてしまった。


「いや、まだエリックには話していないよ。君がここから引っ越す話を聞いた後、エリックはとても落ち込んでね。僕は父親として何とかしてあげたいんだよ。」


そう言って力なく笑った顔は、見ていてこちらが切なくなる。


「僕は2年前に妻を病気で亡くしていてね。その時からエリックは笑わなくなってしまったんだ。その妻が、君と同じピンクシルバーの髪にゴールドの瞳だった。エリックは君と出会って、また笑うようになった。表情も明るくなったし、今までよりも剣術に真剣に取り組むようになった。君を護るためにね。そして、そんなエリックと遊ぶ君を見ていて、もし私に娘がいたら君みたいな子だったんじゃないかと思うようになったんだよ。」


真剣に話す侯爵様。

(何とかしてあげたいけど、、、)


「そんなふうに思って頂いて、すごく嬉しいです。でも、あの、、、私は侍女になりたいんです。その為に一生懸命勉強してきました。エリックとも約束したんです。立派な侍女になると。」


侯爵様はじっと何かを考えて、そしてにっこり笑顔になった。


「じゃあ、交換条件でどうかな?」


「交換条件?」


「僕からの条件は、普段は侯爵家の娘として生活すること。もちろん、エリックたちと同じ学校に通ってもらうし、社交の場にも出てもらう。その代わり、君は学校の休みの日は、侍女の勉強をしてもいい。学校を卒業したら、侍女の専門学校に推薦もしてあげよう。どうだい?君にとっても悪い話じゃないだろう?」


侯爵様は悪戯っ子のような顔をして笑っていた。

やっとここまできた。

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