エリックside~②
エリック目線の続きです。
「あ、あの。もう大丈夫だから。手をはなしてくれる?」
彼女に言われて、僕はハッとした。
「ご、ごめん。」
本当はもっと手を握っていたかったけど、仕方がない。
僕は手をはなした。
「君、魔法が使えるの?」
僕は、疑問に思っていたことを聞いてみた。
その言葉に、彼女はキョトンとした顔になった。
(だから、ヤバいって!その顔!可愛すぎるから!)
「いいえ。私は魔女じゃないわ。どうして、そう思ったの?」
彼女は何か隠しているのだろうか?それとも、まだ自分の力に気付いてない?
「君が舌打ちしたら、さっきの男が倒れたよね。足元には躓きそうなものなんて何も無かったのに。それに、君の髪が風も無いのにふわっと浮いたのを見たんだ。以前読んだ本に書いてせあった。フェアリーには魔法が使えるんだって。君はフェアリーの血をひいているの?」
僕が尋ねると、
「わからないわ。両親はいないもん。」
彼女は困惑気味に言った。
それから僕たちが簡単な自己紹介をしていると、後ろから父上に声をかけられた。
どうやら、刃物男を巡回の騎士に引渡し終わったようだ。
僕は、彼女を紹介した。
父上は一瞬目を丸くしたが、彼女の視線まで腰を落とすと、
「こんにちは、サラ。私はジョン・オパール。エリックの父だよ。私とも友達になってくれるかい?」
と僕たちに柔らかい笑顔を向けた。
帰りの馬車の中で、僕は父上に彼女の話をした。
父上は僕が喋るのをニコニコしながら聞いてくれた。
今日もチャリティーがあれば、もっとサラと話ができたのに、と僕が溜め息をつくと、
「エリックはサラの事が好きなんだね。」
と父上は笑った。
(好き?サラは可愛い。それは認める。)
だけど、これが恋なのか、僕にはまだ解らなかった。
父上とサラの事を話した日から、サラと話すとフワフワした気持ちになる事に気付いた。
(サラといると楽しい。
彼女の笑顔がみたい。
もっと一緒にいたい。
手が繋ぎたい。
綺麗な髪に触れたい。
その柔らかそうな頬をプニプニしたい。
その唇に、、、。
僕をもっと見て欲しい。
僕の事を好きになって欲しい。)
僕はどうやらサラが好きみたいだ。
僕がサラに笑いかけると、サラは微笑み返してくれる。
僕が真っ赤になってしまうので、施設のみんなにバレバレのようだった。
ある週末のミサの時、教会と施設の壁に張り紙がしてあるのに気付いた。
施設の改修工事が行われるようだ。サラはどうなるのだろう。
気になるけど、僕は、サラに聞けないでいた。
帰りの馬車の中で、僕は父上と話をした。
施設の改修工事のことだ。
父上はチャリティーの時、僕とサラを遠目に見ながら、シスターと話をしたそうだ。
どうやら、サラの移動先はまだ決まっていないらしい。
近場の施設はどこも定員いっぱいで、大半は少し離れた田舎町の施設に移動する、ということだった。
父上は僕の頭をポンポンすると、
「きっと大丈夫だよ。」
とだけ言った。
僕は目を伏せて、その後は何も話さなかった。
工事まで約2週間となった週末、ミサとチャリティーが終わってから、シスターがくれたレモネードとマフィンを持って、僕はサラと近くの広場まで行った。
並んでベンチに腰かける。
サラは俯いて話始めた。
「エリック、施設の改修工事の事は知ってるよね?」
「うん。教会の壁に張り紙がしてあったからね。」
「、、、それでね、、、私、再来週引っ越すの。王都の東側にある田舎町に。」
「えっ!?」
僕は、手にしたマフィンをポロっと落とした。
「シスターがそこにも侍女の学校はあるって言ってたから、私、もっともっと勉強頑張る。エリックとは会えなくなるけど、でも、私、立派な侍女になるから。だからエリックも、立派な騎士様になってね!」
サラはそれだけ言って、今にも泣きそうな笑顔を作った。