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エリックside~①

エリック目線でのお話です。

僕の名前はエリック=オパール。

オパール侯爵家の次男だ。

父親譲りのシルバーの髪に薄いブルーの瞳で、顔もまあまあ悪くないと思う。

僕が微笑めば令嬢たちは真っ赤になって俯く。

性格は母親に似て社交的だったし、勉強も運動も何でもそつなくこなしてきたから、僕と仲良くなりたい貴族の子息令嬢は多かったと思う。

いつもたくさんの人に囲まれて、それが当然だと思っていた。



僕が五歳のとき、母上が亡くなった。

流行り病だった。

父上も母上も人を驚かすのが大好きだったから、また冗談で死んだふりをしているんだと思った。

でも、その考えは父上の涙によって打ち砕かれた。

二歳上の兄さんは、俯いたまま顔を歪めて泣いていた。

二歳下の弟は、キョトンとしていた。

母上が寝ていると思ったのだろう。

それほどまでに綺麗で安らかな顔だった。

もうピンクシルバーの少しウェーブがかった髪が風に揺られることも、ゴールドのキラキラした瞳で僕にこちょこちょすることもない。

この日、僕の胸にはポッカリと穴があいてしまったようだ。

何を観ても面白くなく、誰と話しても内容が頭に入ってこない。

そして僕は、笑わなくなった。


そんな状態が2年近く続いた。

父上は僕を笑わせようと色々やってくれたが、僕は相変わらずだった。

そして僕の周りには家族と邸の使用人しかいなくなった。


その日は、父上と二人で王都に来ていた。

父上は、美味しい物を食べて、ついでに観劇でもしようと、引きこもりがちだった僕を半ば無理矢理連れ出した。

僕はただ言われるままに行動を共にした。

ふと、馬車の窓から外を眺める。

市場の近くだろうか、荷物を持った人たちが行き交っている。

そこで僕は、あるものに目を奪われた。

母上と同じピンクシルバーの髪の毛の女の子だ。

風に揺られてフワリと揺れる髪は、キラキラと輝いて見えた。

手を繋いでいるのはシスターだろう。

服を見ればすぐにわかった。

女の子は、ある建物に指を指して笑顔をシスターに向けた。

かわいい!絵本で見た天使のようだ!

もう一度あの娘を見たい。

できれば会って話をしたい。

僕は邸に帰ってすぐに王都の地図を開いた。

今日行った辺りの市場、教会を調べた。

大きな市場は一つだけ。

そして、程近い所にある教会も見つけた!

僕は、父上にまた王都に連れて行ってくれるように頼んだ。

父上は目を大きくあけて驚いた顔をしたが、嬉しそうに微笑むと来週末に行く約束をしてくれた。



とうとうこの日がやってきた!

毎日地図を開いて見ていたので、教会の場所は完璧だ。

僕は早くあの娘に会いたくて、父上を急かした。

行きの馬車の中で、


「今日は教会に行きたい」


と言うと父上は少し考えてから了承してくれた。


王都の教会に着くと、もうミサが始まっていた。

扉をそっと開けて中に入る。

僕は、キョロキョロと周りを見渡したが、あの娘はいないようだった。

この教会じゃなかったのだろうか。

この教会に来ればあの娘に会えると思っていのに。

がっかりだ。

そんな事を考えていると、コーラス隊の歌が始まった。

僕と父上は後ろの方の空いている椅子に座った。

僕はがっくりと項垂れていたが、父上のハッと息を飲む音で顔をあげた。

父上はコーラス隊を見ていた。

僕もコーラス隊を見た。

そして見つけた!コーラス隊の左の端にいる、ピンクシルバーの髪の女の子を。

(あの娘だ!)

僕はミサが終わるまで、あの娘から目が離せなかった。


ミサが終わると、隣の施設の庭でチャリティーが始まった。

机にはレモネードとクッキーやマフィンなどが置いてあり、シスターと子どもたちが店番をしていた。

どうやらここは孤児院のようだ。

ミサに来た人たちはここに立ち寄って帰るらしい。

僕と父上も人の流れに身を任せてその列に並んだ。

もう少しで僕の番になる時、あの娘が現れた。

友だちに、


「遅くなって、ごめんね。」


と言うと、あの娘は僕の前に立った。

僕はレモネードを一杯頼むとお金をあの娘に渡した。

彼女はお金を受け取ると、レモネードの入ったコップを僕に手渡して、


「ありがとう。」


と、微笑んだ。

(ヤバイ!可愛い!マジ天使!)

このときの僕はきっと顔が真っ赤だっただろう。

突っ立ったままの僕を、父上が手を引いて木陰まで移動させた。

別に暑かったわけじゃないけど、心配させてしまったようだ。


僕はチャリティーが終わるまで、木陰であの娘を目で追っていた。

あの娘はみんなと仲が良い。

誰とでもよく話し、よく笑っていた。

僕も話かけたかったが、何を話していいか分からず、ただ彼女を見ていた。

そんな僕を父上は


「へぇ~」


っと言ってニヤニヤ見てきた。

僕は視線をそらしたが、父上にはお見通しだったようで、


「また来週来ようか。」


と言ってくれた。

僕はうれしいのと恥ずかしいので、黙ったままただ頷いた。


毎週日曜日になると、僕は王都へ出かけた。

父上が仕事の時は、庭師のジャスティンが付いてきてくれた。

ジャスティンは父上から話を聞いていたようで、僕と一緒にミサに行き、チャリティーにも付き合ってくれた。

そして家に帰ると父上に今日の報告をする。

ただそれだけの日が続いた。


だがあの日は違った。

僕はいつものように父上と教会に来ていた。

ミサの途中、小さな子どもがグズりだし、神父さまの説教が聞こえなくなった。

ふとあの娘を見ると、フワリと髪が揺れた気がした。

(えっ!?何だ今のは?)

次の瞬間、あんなに泣いていた子どもが静かになった。


おかしなことはこれだけではなかった。

教会に刃物を持った全身黒ずくめの男が押し入ってきたのだ。

男は中にいた人たちを扉とは反対側の壁に移動させた。

父上は僕に


「あの娘を守るんだ。」


と小声で言うと、みんなと男の間にゆっくりと近づいていった。(父上は騎士だから、きっと大丈夫。何とかしてくれる。)

僕は人の合間を縫って、あの娘の方へ急いだ。

あの娘はすぐに見つけられた。そっと彼女に近付くと、小さく震えているようだった。

僕は、彼女の手を握ると


「大丈夫だから。」


と言った。

彼女が、僕の方を見る。

次の瞬間、チッと舌打ちをする音が聞こえた。

(え?何で舌打ち?)

そんなことを考えていると、フワリと彼女の髪が揺れた。

するとその直後、男は何も無い所で転び、持っていた刃物を落とした。

その隙に父上と何人かの男性が飛びかかり、男を捕まえて教会から出ていった。

きっと街のを巡回している騎士にでも引き渡しに行ったのだと思う。

緊張がとけたようで、あの娘がホッと息をついたのがわかった。


僕は、今見た光景が信じられず、目を見開いて、口をポカンとあけていた。

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