第0-1話 転生?
本来ならば今回は"ゆず"が第9話を書く予定だったのですが、仕事の都合で間に合わず急遽"れもん"が書かせて頂きました。
楽しみにして下さっている皆様、大変申し訳御座いませんm(_ _)m
必死だった
物心ついた時からずっとだ
自分は周囲の者達とは違うとすぐに気付いた
出る杭は打たれる
だからいつも周囲に合わせるのに必死だった
幼稚園の運動会
何が楽しくて"かけっこ"や"玉入れ"などしなくてはいけないのか疑問だったのだが、とりあえずニコニコし時には一所懸命な雰囲気を醸し出しなんとか無事終えることができた
小学校の初めての遠足
200円までの範囲で遠足のおやつを買って来いと担任に言われ興味は無かったのだが、その頃仲良くしてくれていた同級生達に誘われ泣く泣く買い物に付き合わされた
中学生の時
嫌々入った部活の先輩達が何やら部室で騒いでいたので観察してみたところ、"肩パン"と称したお互いの肩を交互に殴り合うという謎の遊びに"腰パン"しながら興じていた
なんて"○○パン"の好きな人達なんだろう
と、そんなしょーもない感想しか出てこなかったが、流れでこれから自分もそれに参加しなければならないと思うと心の中で大きく項垂れた
それなりに勉強もでき
それなりに友達もいて
それなりの進学をし
それなりに恋もし
自分としてはそれなりに周囲から見て普通の人生を歩んできたつもりだった
しかしそこには自分の意思が無かった
流れに任せて生きてきた
結果振り返ってみて残っていたのは空っぽの人生だった
17歳という若さでこうして死んだりしない限りは思い出したくもない記憶だった
何年か経っていたので良い思い出になっているかと思えばとんでもない
振り返らなければ良かったとさえ思った
この国……いやこの世界に絶望した
できることならばもっと自分に合う世界へ
そんなところがあるならばぜひ行ってみたかった
しかし……
まさか本当にそんな日が来るとは
しかも死んだ後にだなんて……
「そうですか……ではこの転生の話は貴方にとっても願ったり叶ったり……という訳なんですね?」
と、目の前にいる女神は僕に問い掛ける
確か"ルル=ザラ"とかいう名前だった筈だ
背中には絵画等で見たことのある天使の様な羽が幾重にも重なっているのだが、天使ではなく女神だそうだ
その女神様が仰るには
要するに僕は
喉から手が出る程望んでいた違う世界への切符を手にした
しかも色々な特典付きで
ということらしいのだ
「まぁ……そうなりますね」
と、そう答えたのだが何か……何だろう?
もやもやする
胸の辺りが
なんで?
「ただ……先程も説明しましたが、貴方が望む貴方に合った世界へ必ず行けるとは限りませんよ? 異世界というのはそれこそ星の数程ありますから」
心なしか申し訳なさそうにルル=ザラは説明してくれる
「それでも構いません」
あの世界で生涯生きることを思えばどこへでも
そんなつもりで発言したのだが、いまいち言葉に力が入らない
そんな僕を見て女神は首を傾げる
「では一体何故……今貴方は泣いているのでしょうか?」
僕は……
泣いてたのか?
なんで?
だってあんなに望んでた筈だろ?
あの世界の記憶で良いものなんて何一つないじゃないか
周りに足並みを合わせ"普通"を演じていた
皆に……自分自身にすら"嘘"をついて生きてきた
そして……どうなった?
何が残った?
あんな人生は虚構だ
何も残ってないじゃないか
何も成し遂げてないじゃないか
このままで……こんな散々な状態で人生を終えて
自分は満足しているのだろうか?
充実しているのだろうか?
この涙が全ての答えじゃないのか?
「ふぅー……すみません女神様、僕……今頭の中がグチャグチャで……」
「亡くなったばかりですからね、無理もありません。だから構いませんよ? まぁ貴方は……今まで相当自分を押し殺して生きてきたみたいですしね」
「えぇ、どうもそうみたいですね……あのー女神様?」
「何でしょうか?」
「その転生の話……」
「はい、何でも質問して下さって結構ですよ? ただ……そうですね、後ろも詰まってますし……手短にお願いしますね」
「はぁ……いや質問とかは無いんですけど……」
「そうなんですか? では時間も無いことですし早速転生の準備を……」
「その転生、やっぱ無しで!」
かくして、机上 仁は転生しないことになったとさ
めでたしめでたし?
今回は幕間的な話となっております。
次回から本編の方に戻らせて頂きます。
多分……
きっと……