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その先、異世界への扉が御座いますのでご注意下さい!  作者: チーム柑橘
第1章 深く眠り時を待つ、蒼き果実と共に
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第6話  東京タワー ~猿とカッパと僕~

(月極さんが東京タワーから飛んだらすぐにグリゴレウスと接続して……)


(……っとその前に各種手続きをやっておかないとな……)


管理人、大忙しであった。


(てかなんで月極さんが日本にいたんだよ……僕が帰りたかったよ)


(そもそもいつこの仕事から解放されるんだろ?)


担当するのが星の数ほどある異世界のほんの一部だけと言っても物凄い数だ。


(なんだか不穏な空気も流れてるし……大丈夫かなぁ?)


憂鬱である。


しかし今は考えても仕方がないと机上は手続きを進めていた。


『机上さーん! 東京タワー着きましたよー!』


月極からの連絡が入る。


「了解。頂上から"南"だぞ! "南"! 間違えたらどうなるかわからないからねっ!」


『あのー……南ってお箸持つ方でしたよねー?』


「それは右だよっ!! 係の人に聞いて確認しといてよっ! 絶対にっ!」


『えっとぉ……私の家ではごはん食べるときに東を向いて右手にお箸をもって食べるという絶対的なルールがあるんですけどー……』




「じゃあ多分合ってるよそれでっ! 特殊な家庭だなっ!!」


(大丈夫なのかこれ? まぁとりあえず彼女が飛ぶまでに急いで準備しないと……)






その瞬間―――






ゴンッ


っと鈍い音がした。


後頭部に激痛が走る。


僕はあまりの衝撃に椅子から転げ落ちた。


(痛ってぇ……)


温かいものが首筋を伝う。


(血か……?)


そのまま僕は気絶してしまった。




――


―――



目を覚ますと暗闇だった。


あれからどのくらいの時間が経っただろうか。


後頭部はいまだ痺れズキズキと痛む。


よく見ると体が椅子に縄で縛られ全く動くことが出来ない。


(一体誰がこんなことを……)


「おいっ! 誰かいるのかっ!」


「一体どういうことだっ!僕が何したって言うんだよっ!」


「早くここから出せよっ!」


騒いでいると暗闇で気付かなかったが目の前にあったモニターの明かりが点いた。


『オハヨウ、机上クン』


無機質な声がステレオから流れる。


異様な光景だった。


血まみれの猿の着ぐるみが、画面の向こう側で僕に喋りかけてきている。


『驚イタカイ? 無理モナイ』


「な、なんなんだ……これは……」


『単刀直入二言オウ。私ハ、月極 兎貸子二死ンデモライタイ』


「え……!?」


『コノママ君ヲ縛ッテオケバ、彼女ハ転送サレズニ地面二叩キツケラレルダロウ』


「なん……だとっ……!?」


『ホントハ君ガ気絶シテイル間二事ハ終ワルハズダッタンダガネ。何ヲ思ッテカエレベーターデハ無ク階段で昇リ始メテネ』


(当たり前だ……素人に彼女の行動が読める訳がない)


『マァ、彼女ノ死モモウスグダ。君ハココデユックリト寛グトイイ』


「ふざけ……」

『君ニハ悪イト思ッテル。タダ巻キ込マレタダケナノダカラ。ダカラ、月極 兎貸子ノ死ヲ確認次第、解放シヨウ』


(これは嘘……だな。解放される理由も保証もないや)


『決シテ抵抗シナイコトト、コノ件ヲ口外シナイコトガ条件ダガネ……ククク』


「一体月極さんが何を……」


『君ニハ関係ノ無イコトダ。タダ、私モ自分ノ手ヲ汚ス訳ニハイカナクテネ。後10分少々カナ? ソコデ大人シクシテイロ。ソレデハ』


モニターがプツンと切れた。


(まずい……まずいぞ……彼女が飛んだ瞬間に転送をかけなければ……本当にこのままじゃ……早く助けに行かないと……)


僕は自分の縛られた体と、僕の横に立ちリボルバーの銃口を突き付けている血まみれの河童の着ぐるみをどうするか必死に考えを巡らした。


そして―――






すぐに考えるのを放棄した。

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