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その先、異世界への扉が御座いますのでご注意下さい!  作者: チーム柑橘
第1章 深く眠り時を待つ、蒼き果実と共に
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第2話 走馬灯

机上 仁は堕ちる……どこまでも堕ちていく……


「いらっしゃっせー!」


「……ぅう……ん……?」


「お客様はお一人様ですかー?」


「……はっ? えっ?」


「お一人様ですかー?」


「……まぁ一人だけど……いやちょ待っ」


「当店のご利用は初めてですかー?」


「だから待てってここどこ」


「当店のご利用は初めてですかー?」


「……初めてです……」


「そうなんですねー! ではこちらの番号札を首からおかけになってあちらの待合室でお待ち下さーい!」


「あのーお姉さん、ちょっと聞いてもいいッスか?」


「番号でお呼びしますのでそれまでお待ち下さーい! 次の方ーどうぞー! お一人様ですかー? あっ団体様なんですねー……」


「……はい……」








「……お客様のお呼び出しを申し上げまーす! 53番の番号札をお持ちの方ー!」


「!? ……はい」


「ではボディチェックの方だけさせていただきますねー!」


「あ、はい」


「金目の物は……持ってないですね……チッ」


「あの今舌打ち……」


「はーい結構でーす! ではこちらの階段を上って突き当たりの角を曲がって2つ目のお部屋ですねー! 足元お気を付けてお進み下さーい!」


「……はい」






「……失礼します」


「どうぞ」


「………」


「53番……都築(とつき) 龍哉(たつや)君だね?」


「……はい」


「下で女の子に何かされなかったかい? ほら……何か盗られたとか?」


「? ……いや、ボディーチェックを受けたぐらいで特には……なんか金品がどーとか舌打ちとかはされましたけど……」


「あの下衆野郎っ! ……まぁいいや、その件はあとで注意しておくとして……」


「? ……はい」


「とりあえず、おめでとう」


「はっ? いやその自分全然状況が……」


「おめでとう」


「……ありがとう……ございます」


「まぁ座って、楽にしてよ」


「はい……失礼……します」


「何か飲むかい?」


「……いや、結構ッス!」


「そっか……じゃあまず最初に伝えておかないといけないことがあるんだ」


「何スか? てか現状以上に説明して欲しいことなんかないんスけどね」


「君は死んだ」


「はっ?」


「死んだんだ」


「はっ?」


「正確に言うと君は昨日、西暦2019年5月5日、子供の日だね。の、日本時間の午後1時51分に車に轢かれてお亡くなりになったんだ」


「……俺が……死んだ……?」


「子供を庇ってね」


「子供の日に……」


「そう、子供の日に……でさっそくなんだけどさ……」


「?」


「君には今から転生してもらおうと思って」


「……てんせい?」


「いやぁこれは別に子供の日だったからとか、君が子供を庇って死んだご褒美とかそんなんじゃないんだ。たまたまね。たまたま。ほら、完全にランダムだからさうち」


「……いやいやいやいや、なんの説明にもなってねーからっ! そもそも転生? ってなんなんだよっ!」


「あっそこから? 都築君てもしかして本とか読まない人? ネット小説とか……漫画とかアニメでもいいんだけど」


「知らねぇよっ! 本なんか教科書以外読んだことねぇよっ!」


「!? ……意外だね。教科書は一番読んでないと思ったよ」


「うっせー! 驚くとこそこかよっ!? で、なんなんだよそれ?」


「そうだねぇ、まぁ色々パターンはあるんだけど今回は文字通りの転生だね。つまり君は今の名前とか身体を捨てて、魂だけ別の世界の別の生き物の赤ん坊として今から生まれ変わるってわけさ」


「よーするに人生をやり直せる、ってことか?」


「んーちょっと違うかな。都築 龍哉としての人生は間違いなくここで終わり、終了、ジ・エンドして、あくまでも別の生物としてだよ。あ、記憶は残したままでね」


「……それって……例えば俺がもし嫌だって言ったらどーなるんだ?」


「基本的に転生は決定事項だからね。というより断られないように僕が仕方なくここにいるというかなんというか……」


「んだよ歯切れ悪ぃーなー!」


「見習いだからね。そもそも僕に説明できることなんてそんなに多くはないんだよ実際。申し訳ないけど……」


「大丈夫なのかよここ! 見習いなんかにこんな仕事させといて?」


「その辺は大丈夫大丈夫! 仕事って言ってもマニュアルに沿ってこうやって話をするだけだし、今回の都築君の場合だって既にステータスは設定してあるしあとは転生先を知らせればそれでこの面接も終わり……」


「そうそうそれだよそれっ! さっきの言い方じゃ俺の転生先って、人間じゃないみたいな感じだったけど……」


「……人間じゃないよ」


「やっぱりかよー、そんな気がしてたんだよなー、俺まだ中学入ったばっかだぜ? まだまだやりたいこといっぱいあったのによー……。まぁでもせっかく転生するのにもう一回人間じゃ面白くもないしなー。あ、そーいや俺って名前に『龍』って文字入ってるしもしかして……」


「デザストル・シュニーユ」


「ビンゴッ! やっぱどことなくドラゴンっぽいしなんか格好良いじゃねーかよそれっ! ちょっとテンション上がって来たぜちくしょー! シュニーユ? ってのもなんか聖なる龍って感じするよなー! 聖龍ってやつか? でも頭のデザストルってのがなんか物騒な響きに聞……」


「……ごめんね都築君あのさ、テンションアゲアゲのとこ本当に申し訳ないんだけど……」


「『聖龍』兼『勇者』的な? 最初はどーなることかと思ったけどもしかしたら死んで正解だったのかもなー俺……」


「……要するにさ、大きななんだよね」


「……へっ?」


「だから()()()


「けむし?」


「そう()()


「はっ?」


「改めまして都築 龍哉君、今から君は災厄の(デザストル)毛虫(シュニーユ)に転生します。何か質問は?」


「……………」


「準備はいいかな?」


「……………」


「都築君?」


「……………いやだああああああああああ!!!!!!!!!!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「ああああああああああああああああああああ………べふっ!!!!!!!!!!」


 過去に面接した異世界転生候補者の悲痛な叫び声と自身の叫び声とが重なったあと、永遠に続くかの様に思われた長い長い落下がやっと終わる。

落ちた先が一面ふわっふわの新雪でなければ彼の初めてのお使いもここで終わってしまっていただろう。

いやはや危なかった。


「……やっと着いウヴォェェェッ!!!」


 着いて早々嘔吐である。


「気持ち悪っ!! どこが癖になるだよっあいつ頭おかしいのかっ!?」


 やはり転生など2度とするまい。

と心に固く……いや……物凄く固く誓う机上であった。


「ていうか走馬灯ってあんなピンポイントなんだ。僕この仕事そんなに好きじゃないんだけど……。他の人も皆ああなのかな?」


 袖で口元を拭いながらそんなどうでもいい考察をする。

そして改めて辺りを見回し身震いする。


「……寒いな。もっとちゃんと着込んで来れば良かった」


 この世界にも四季があるのは覚えていたが、既に冬に入っていたことを失念していた。


「さて、じゃあまぁとりあえず上着になりそうなものでも探して……鍋とか食べたいな、月極さんのことは……そのついでで探せばいいか」


 このときの彼は自身が踏み込んだこの異世界グリゴレウスに現在進行形で起こっている悲劇の原因の半分が自分にあることをまだ知る由もなかった。


 そして……






……そんなにやる気もなかった。

(ステータスオープン!)


種族名 災厄の(デザストル)毛虫(シュニーユ) Lv1


個体名 なし


HP 7

MP 5

攻撃 3

防御 2

法撃 1

俊敏 2

天運 0


〈特性スキル〉

毒針毛 Lv1 麻痺針毛 Lv1 虫糸 Lv1


〈通常スキル〉

毛飛ばし Lv1 糸吐き Lv1 転がる Lv1

ガン飛ばし Lv1


〈耐性スキル〉

毒耐性 Lv1 麻痺耐性 Lv1 根性 Lv1


〈称号スキル〉

醜悪 Lv1 ヤンキー Lv1 襟足の覇者 Lv1


(ステータスもクソじゃねーか……orz)

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