搭乗!金閣寺ロボ!
連れてこられたのは金閣寺…って何故!?
キキィイィ!
「着いたわ。二人とも降りて!」
到着したのが金閣寺の駐車場。発進した時と同じように車は乱暴に止まり、そこから抜け出すようにムソウと玖美は降りた。
「こ、ここは……?」
「こっちよ!」
二人を追いかけて辿り着いたのは金閣寺であった。ムソウにはいよいよ訳が分からない。
「何でこんな時に観光なんてしてるんだ!?」
ムソウの当然の疑問に、博士は苛立った顔で、しかし冷静に答える。
「観光じゃないわ。これは、奴らへの切り札なの。さ、入って」
普段は人を入れない為に張ってある柵を無造作に跳び越え、中に入っていく。良いのかな、とためらっていると、「早くしなさい!」と二人から怒られた。仕方なく黙って従う事にした。
「おいおい、良いのか? こんな時とはいえ、こんな所に入って来ちゃって」
建物の三階、普段誰も入らないであろう部屋に連れて行かれる。部屋の四隅にはなにやら仏像がそれぞれ一体ずつ配置されていた。
「着いたわ。さ、ムソウ君。この中央へ進んで」
博士に言われるがままに進むと、ムソウの手がそこで無くなった。
「!? これは……!?」
「驚かないで。そこは今、異次元と繋がっているの。説明をしている暇はないわ、早く飛び込んで」
異次元!?驚かない訳無い!だが、これまで既に常識が壊れてしまうような事が次々に起こっている。もういちいち突っ込んではいられない!
二人は俺が当然そこに飛び込むものだと信じ、じっと見ている。これだけ見られていたら、飛び込まざるを得ない。
えぇい、ヤケだ!清水の舞台から飛び降りる気持ちでその異次元へ飛び込む!
「うぉぉぉおおああ!?」
飛び込んだ先は、何も見えない暗がりの空間。上下もない世界で、俺は何とか立っていた。
「な、なんなんだここは!? 一体どうすればいいんだ!?」
「ここからは私が導こう」
予想外の機械的な声が返答をする。この声は?
「案ずるな。自分の体に集中しろ。手足がどこにあるか、どこに立っているか」
ムソウは戸惑いつつも、他に出来る事はない。大人しく機会の声に従う事にした。
……集中する。全身、全神経、全血管。全ての細胞の有り様を、思考し、現実の肉体と一致させていく。自分の体が今どんな状況か、どんな体勢をしているのか。イメージと実際が一致していくのを感じる。
「うむ、飲み込みが早いようで助かる」
「あんたは一体……どこにいるんだ?」
「全て、後で説明しよう。今は奴を倒さねばならない」
ふと、暗がりの空間に映像が映し出される。遠くで暴れている、先程の黒いモヤだ。こちらに気付いたらしく、ゆっくりと歩いてくる。
「守りたいか、この町を。みんなを」
機械的な声の、唐突な問いかけ。ムソウは戸惑ったが、思うままに答えた。
「そんなのは知っちゃいない……俺はただ、あいつをこのままのさばらせたくないだけだ」
「分かった。今はそれでいい。ならば、力を貸そう! 己の肉体の中心に流れる力を感じるのだ!」
脊髄、そして脳髄、脳に至るまでの経路に、電流のように強い力が迸っていく!
「ち、力が……!?」
「そうだ、それで良い。強く願え! この町を守るのだと! そして叫べ! 『立て! 金閣寺!』と!」
「おぉぉぉ!! 立てぇ!! 金閣寺ぃ!!」
その瞬間、金閣寺は目映い光を放った!その強烈な光で周囲は何も見えなくなる。
その光源は徐々に上空へと上がっていく。いや違う。金閣寺が迫り上がっているのだ!
ゴゥンゴゥンという機械音と共に、金閣寺は地上30mほどの所まで上がり、やがて光は収まっていった。
そこに立っていたのは……
「ロ、ロボット?」
金閣寺を頭部とし、金色のボディ、金色の腕、金色の足を備えた、巨大な金色のロボットであった。
遂に立ち上がった、金閣寺ロボ!




