あなたは私を
「あなたこそって…?」
その先の言葉は運命だって思った。
「私、幽霊なの」
「嘘…」
「ほんと」
僕は信じられないと首を振った。
「信じられないって?でも本当よ。ところであなたは人間?」
「いや、僕も幽霊だよ。お仲間さ。」
そういうと、彼女は怪訝な顔をした。
「お仲間…たぶん、違うわ」
彼女は口の中で呟いてからはっきりと言った。
「私は周りと違う。死んでからも…」
「?」
意味がわからない、と言う顔をすると、彼女は無表情で説明してくれた。
「あなたのその手、その手みたいな変化が私にはないのよ」
「手?…うわぁ!なんだこれ!?」
自分の指が鉛筆に変わっていることに気がついた。
「今まで気づかなかったの?」
形の良い眉を少しだけ歪めて彼女は首を傾げた。
わ、今の仕草可愛いなぁ…じゃなくて、
「気づかなかった…死んでから今まで。一年くらい経ってるはずなのに…」
「一年…」
彼女は表情を曇らせた。
まさか、悲しんでいるのだろうか…僕は死んでからそんなに経ってない。
きっと改めて死んだことに気づいてショックを受けたと思われたんだろう。
「そんな顔しないでよ。僕は望んでこの姿になったんだから」
彼女は、どうゆうこと?と言う顔をした。
「僕、自殺したんだ」
彼女は少しだけ驚いた顔を見せた。
「…それは…どう言ったら良いのかしら。ごめんなさい。言葉が見つからなくて」
恐縮するように眉を下げた彼女を見て、僕の胸は一層高鳴る。
「いやいや。大丈夫だよ。気にしないで」
むしろもっと好きになったよ。
とは、言えなかった。
「気づかなかったのもさ、ちゃんと理由があるんだよ」
僕は少し焦ったように話し出した。
「僕、睡眠薬自殺なんだよ」
人に自分のことを話すのは何年ぶりだろうか。
「まだ眠ってるような感覚なんだよね。一年も経つのに」
僕の焦った話し方に、彼女はくすりと笑った。
それを見て、僕の方も久方ぶりにぎこちない笑顔を浮かべるのだった。