1話
「うーん…」
皇 柚日は頭を抱えて悩んでいた。
この國の平和を護る為、日々働いている皇には珍しい休日。そして予定が決まっていない。
(大切な休日を何に使うかなぁ)
忙しい彼にとって体を休めることは大切な事だが、皇はまだまだ遊び盛りの十四歳。何処かに遊びに行きたいのだ。
(あまり遠出は出来ないし…)
考える時間が無駄だと考えたのかバッと立ち上がり珊瑚朱色の髪を整え、黒い學制服に上着を羽織ると部屋を出た。
うーん…」
行く宛もなく歩いていると休日に関わらず、友人達が働いているカフェなる場所の事を思い出した。
(またあのカフェのあいすくりん食べたいな)
煉瓦街を抜けた先の目的の店"喫茶 浪漫"の前に自分と同じ學制服を来た自分とあまり年の変わらない少年を見かけ声をかける。
「弔!」
「おわ…!びっくりした。柚日も千尋に会いに来たの?」
弔と呼ばれた美しい金髪碧眼の少年は唐突に声を掛けられ少し驚くものの、声を掛けた人物を見ると人懐っこく微笑んだ。
「そうだよ。あと、ここのあいすくりんは美味しいからね!!」
「ふふ、僕はシベリアと珈琲が食べたいな。」
二人が喫茶浪漫について語っていると店の引き戸がガラガラと開き、嫌そうな顔で見覚えのある人物が此方を見る。
「毎度毎度、うちの店の前で立ち話する位なら入れよな。」
「あはは、ごめんって千尋。」
柚日はこの状況に慣れているのか軽く笑う。
「席空いてるかな…?」
と弔が聞くと千尋は縦に頭を振った。それを見ると嬉しそうに二人は店の中に入って行った。
店の中は騒がしく活気に溢れた外とは違い、穏やかで心地の良い空気が流れていた。
二人は近くの開いている窓側の席に座る。
「うーん…ボクはあいすくりんと温かいミルク。」
「僕は、シベリアと珈琲で。」
各自好きな物を注文し千尋が去っていくと窓を眺め始めた。