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駄犬と化猫  作者: たうざー
第一章
6/7

第五話

割と生々しい描写が有りますのでご注意下さい。



編集履歴

*1月29日_章と話の使い方が逆だったので修正しました。


エリンは地面に投げ出された衝撃で、骨折した足に激痛が走る。

右足を寝転がったまま抱え込み、苦痛に小さな悲鳴を上げつつふるふると身悶えていると、急に耳を捕まれ乱暴に引き起こされた。

つい先程ヴィヴィスを尋問していたヤツが、エリンの耳を乱雑につかみ上げていた。

柔らかくしなやかで長い耳に強い痛みが走る。


「いい痛い!痛い痛いっ!」


叫びながら耳を掴む腕を反射的に握り返し、振り払おうとする。

足とは違う場所の痛みで我に返ったエリンの顔は、一気に絶望へと変わっていく。

目の前に自分の耳を掴み上げたSSU兵士の無骨な姿が、彼女を威圧するように視界いっぱいに広がっていた。

恐怖に、今にも泣きそうな顔でエリンは後悔した。

言われた通り、あのまま逃げていればよかった……

だが、彼女の優しさはヴィヴィスの事を見捨てきれなかったのだ。

ラビオリの群れに戻った彼女は、ラビオリ達にお願いしてヴィヴィスの救出を目論んだが。

いくら巨体を持つと言えど、所詮は家畜に過ぎないラビオリでは銃と言う脅威には太刀打ちできなかった。


後ろでは残ったラビオリ達が抵抗しようとして撃ち殺され。

悲痛な断末魔の叫び声が聞こえていた。


エリンを掴み上げた兵士が一旦銃を収め、自分のヘルメットを操作した。

するとヘルメットの全面の大半を覆った、反射材のような感じで中の見えないバイザー部分が音もなくスルスルと鼻の上くらいまで開いた。

何をするのかと思いきや、ソイツはエリンへ顔を近づけ彼女の匂いを嗅ぎ始めた。

クンクンと、音をわざと立てているかのように嗅ぐ音が聞こえた。

顔や首筋、そして乱暴にエリンの豊満な胸を空いた左手で乱暴に揉みしだきながら、鼻をその2つの膨らみの間に押し付け思い切り匂いを嗅ぐ。

エリンの顔が痛みによる歪みから、恐怖よりも気味の悪さ、気持ち悪さに鳥肌が立ち、慄いた。

一通り匂いを嗅ぎ、満足したのか、男が顔をエリンの体から離し彼女の顔を見た。

涙を浮かばせ、恐怖と不快感に歪む彼女の顔を見た兵士はフッと鼻で笑い、胸を鷲掴みにしていた手で今度はエリンの顎を掴み固定し、おもむろに頬をベロリと舐めた。

ねっとりと、まるでアイスクリームを味わうがごとく舌をゆっくりと這わせる。

ハァハァと男の吐息がモロにエリンの顔に伝わる。


「ひっ……!」


その変態じみた行為に、思わず悲鳴を漏らしたエリンは目をギュッとつぶった。

閉じられた目から、溜まっていた涙が一筋流れ、男はそれも舐め取った。

体中が全くの想定外の行為に強張る。

男の顔がエリンから離れ、その気配にゆっくりと目を開けるが、その目にはすでに希望の光はなく、絶望、恐怖、緊張などが入り交じった完全に怯えきった目をしていた。

目の前の男はとても満足そうだった。

そのことに更に不快な気持ちが高ぶり、エリンはすっかり動揺しきっていた。


「ん~…良いねえ、ラファニアンは独特ないい匂いと『味』がして本当に最高だ」

「そのキモイ物を見るような、蔑む目つきもタマラネエ」


兵士は舌なめずりをしながら、ハァハァと息を少し荒げた。


「うーわ、また始まったあのヘンタイ野郎」

「キンモ~(笑)」


他の兵士たちが彼の「感想」に呆れた声を上げる。


「うっ……!」


強烈な負の感情に苛まれ、エリンは強い嘔吐感に見舞われた。

片手で口元を抑え、吐き気をこらえる声を漏らす。


「ほら、その子もキモイってよ(笑)」


ゲタゲタと下品な笑い声が周り中から聞こえる。

何か、何か抵抗できるモノ…!

エリンはとてつもない緊張感に半ば思考が止まりそうになるが、身に着けた武器が無かったか思考を改めて巡らせる。

はっと、最後の護身用兼、自害用に渡されていた拳銃を思い出し、ガバッと腰辺りに付けられたホルスターから小型の銃を抜き取り構えた。

役に立たないだろうと言う思いを打ち消すように、エリンは険しい顔を無理やりに作り、無礼にも耳を掴み上げているヤツに向けて銃口を向けた。

どんなに勇ましく装っても体は、狙う腕は細かく震えていた。

震えが銃に伝わり、カチャカチャと小さな音を立てる。


「こ、この手を放しなさい変態ヒューマン!!ラファニアンの耳を掴むなんて……」


そう言いかけた時──


パン!


エリンの必死の声をかき消す一発の銃声。

いつの間に構え直していたのか、目の前の男の手に握られた拳銃の銃口から、硝煙が立ち上る。

掴み上げられた耳から、ソレとは違った痛みと、何かがつたう感触が伝わってくる。

じわじわと、しかし急速に広がるその「痛み」は「焼けるような痛み」に置き換わってゆく。

エリンがその痛みの正体を確かめるべく、視線を掴まれた耳の方へと向けると──


銃弾により幅半分近く引き裂かれ血に染まる自分の左耳が見えた。


「……ぁ……」


声にならない悲鳴が開けた口から息のように漏れ、目がその光景を疑うように見開き、涙がボロボロと頬を伝った。

痛みに悶え、なんとか耳の痛みを和らげようとするが、支えるべき右足は折れて役に立たず、銃を持った右手も地面に届かずに空を切る。

うーっうーっと呻きながら耳を庇おうともがく。


「ギャーギャー五月蝿いんだよ小兎ちゃんよぉ、大人しくしないと可愛がってあげないぞ?」


バイザーで顔の半分は見えないが口元は三日月型に歪み、とてつもなくイヤラシく、ニタリと笑みを浮かべているのが分かる。

顔全体が見えたならば、ざそ不愉快な程に人を見下した笑みを浮かべているのだろう。

口元だけでも、それを用意に察することができるほど、嘲笑っていた。


「おいおい、せっかくのラファニアンなんだ。あんまキズ付けんなよ?」


他の兵士が言った――


「わ~かってるって。聞き分けを良くするための躾けだよ、し、つ、け」


目の前の男が言う――


「だから、やり過ぎんなっての」


さらに他の兵士が言う……

散々小馬鹿にされ、とるに足らないような存在に見られ、あまつさえヒトをペットか何かのように。

そんな扱い方をされ、恐怖は憎しみに変わり、彼女は再び目の前の男に銃を向け、叫びながら引き金を引いた。


「私はペットなんかじゃないっ!ラファニアンだっ!!」


先程の恐怖に震える頼りない腕ではなく、しっかりと力強く伸ばした腕が、発射のリコイルを受け止める。

1発、2発、3発……

しかし……


「ってーな!そんな豆鉄砲で装甲服ヌけるわけねーだろ!」


力強く銃を握る手を思い切り跳ね除けられ、その衝撃で拳銃が弾き飛ばされ、草むらの中へと消えた。

生身のヒトを殺すには十分な威力は有る銃ではあったが、やはり役には立たなかった。

そんなことは知っていた。

エリンはヴィヴィスと違い今回が初陣ではなかった。

衛生兵であるエリンは、何度も前線の兵士たちから聞いていた。

「装甲兵が出てきた日にゃ対戦車砲が要る」

そんなグチを何度も聞いていた。

実際、ファルーシアの兵士達は、SSU軍の装甲兵にはかなりの苦戦を強いられていた。

戦争が始まってから、はや3年経ってはいるが、軍隊もなく、兵器の生産や開発に関しては全くと言っていいほどにノウハウが無かった。

その為、とりあえず戦える。と言うよりも、既存のボディアーマーや装甲を貫通できる程度の兵器しか提供できていなかった。

装甲兵は、歩兵でありながら重装甲のボディアーマーで身を固めていたために、通常の銃火器では歯が立たず、対戦車用兵器を使用するしか無かった。

対装甲兵以外の一般兵が携行する対装甲兵器は、現在使い捨てのロケットランチャーと、大型の狙撃銃のような対物ライフルの二通りだった。

無論、ヴィヴィスとエリンが持っているようなシロモノではなかった。

つまり、今の彼らには装甲兵に対抗するすべはハナから無いのだ。


「ったく!こんなおイタをするようなダメ兎には、お仕置きだなっ!」


そう言って、エリンの耳を掴んでいた男が、彼女の耳を思い切り引っ張り上げた。

エリンの体をギリギリ支えていた耳が、先程撃ち抜かれて脆くなっていた傷口が彼女を支える限界を超え、ブツリ、と引きちぎれた──

耳から伝わる肉のちぎれる音と、感触と、激痛と、流れ滴り落ちる鮮血は、彼女の精神を追い込むには十分過ぎた。


「ぁああああああ”ーーーーーっ!!」


地面に落とされたエリンは、まるで発狂したかのごとく大声で泣きわめきながら左耳を抑え、蹲り、命乞いをした。

もう言葉として成立しないほどに滅茶苦茶に謝罪と悔いと助けを重ね、繰り返した。

もう嫌だ、もう痛いのも苦しいのも辛いのも怖いのも何もかも。


「あーあ、お前何やってんだよ?せっかくの可愛い耳をそんな」


「しゃーねーだろ?躾け。千切れたってどうせ元に戻せるんだからカンケーねえよ!」


「おい、スッゲエ騒いでるけど、ブッ壊れたりしてねえだろうな?俺はそんなシュミ持ってねえんだから、勘弁しろよ?」


「大丈夫だって、ラファニアンはメンタル強いからこんなモンくらいで丁度良くいう事聞くようになンだよ」


エリンの千切れた耳を持って、さっきまでエリンを掴み上げていた兵士が彼女の目の前にしゃがみ込み、蹲ってガタガタと震える彼女の顔を持ち上げ、引きちぎった彼女の耳を見せつけながら言った。


「ほら、これ以上痛い思いしたくなければ素直になれ?」

「いい子にすれば俺達はちゃーんと可愛がってやるし、気持ちよ~くもしてやるんだぜ?」


プラプラと千切れた耳をゆすり、エリンを諭す。


「……ダメだ……エリ……ン……」


もはやヴィヴィスの声はエリンには届かなかった。

もうあと一歩、後一撃何かがあれば、彼女の心は狂ってしまうだろう。

もはやエリンには、自分を護るために逃げ道を見つけて逃げ込む事しか考えられなかった。

涙と耳から流れた血で汚れた顔に、目は虚ろになり、もはや思考も半ば停止しているようだった。


「……は……ぃ…………痛いの……ヤダ……」


震える、霞むような声でエリンは同意するしか無かった。

その返答を聞いたSSU兵士達から、歓喜の声が上がる。


「やったぜ、ウサちゃんゲットだぜ!ってな」


「これで毎晩楽しめるってもんだなあ!」


「最初はこんなクソミッションと思ったが、こんな大収穫が有るとはな。神様に感謝しなくちゃだ」


口々に「ペット(性処理道具)」を手に入れたことを喜ぶ。

ヴィヴィスは心の底からコイツラを憎んだ。

体さえ動けば、例え体中穴だらけになるほどに撃たれ殺されようと、一人くらいは道連れにてやりたい位だった。

首に食らいついて、思い切り噛み付けば食いちぎれるかもしれない。

しかし、体は動かない。動けない。

ラファニアンのあんな子ですら、勇気を振り絞ってあれだけ抵抗したのに……

何も出来ない惨めさと悔しさで涙が出た。


「さて、じゃあソッチの役立たずの駄犬をさっさと処分して帰るぞ」


再びヴィヴィスの頭に銃口が向けられ、引金が絞られる。


表現がR15を超えているようでしたら、その箇所を教えてください、修正いたします(((

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