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子爵令嬢の地学満喫生活  作者: 蒼久斎
§1.転生令嬢アリエラ5歳、子爵家令息ファーガスと友誼を結ぶ
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これが今の私です





 通常、自分の妄想していた世界に転生したら、黒歴史で死にたいとか言うかもですが。

 私にとっては黒歴史ではありません。

 自分が無敵の存在として君臨する世界を妄想していたのなら、そりゃ「アイタタタ」ですが、私の妄想はこの世界に人類が誕生したあたりで終わっています。

 何をどうすればその状況で無敵になれるというのかと。


 あと、私は死にたいとは言わない。

 生きたかったから。



 ちなみに「ウェンディ」は、享年18歳ですが、大学に行っています。

 日本出身ですが、11歳でアメリカに移住しました。

 自分で言うのも何ですが、未知の大地を探索するために、惑星の構造から考え出すような子どもが、まぁ平均的な水準の知能なわけがないと思います。

 端的に言うと変人なわけですが。


 日本には飛び級制度がありません。

 いつ終わるとも知れない人生、やりたいことをやりつくさせるためにも、両親は娘を、アメリカに連れて行ってくれたのだと思います。

 父がアメリカの最先端医療施設にコネがつくれるぐらい優秀な医師であったのも、それを後押ししてくれた裏事情だったかとは思いますが。


 そんなわけで「ウェンディ」は飛び級制度を存分に活用し、短い人生を全力疾走して、16歳で某大学に合格。頑張りながら単位を揃えていた最中で、死去。


 これがまぁ、私の異常な知識量の背景です。


 なお、「ウェンディ」は、前世のアメリカの病院でスタッフの皆さんがつけてくれた、愛称。

 日本名には「ヒロ」という音が入っており、ものすごく発音しづらそうで。

 ドイツ系の人が発音しようとすると「ヒィルォオオ」となり、フランス系の人が発音しようとすると「イゥホォ」となり、アメリカの皆さんは「ヒーロー」。


 確かに頑張っているという意味では英雄ヒーローだけど、年頃の女の子の愛称にそれはないでしょ、というツッコミを受け、色々検討された結果。

 前世の私は「ウェンディ」となったのです。


 由来は、しょっちゅう風邪を引いていたのを、私がもじったのです。

 つまり「風邪引き」ならぬ「風吹き(ウィンディ)」。

 それがなまって「ウェンディ」になったハズ。


 むしろ私、ピーター・パンになってしまいましたが(=大人になれない)。

 アメリカでは18歳が大人ですが、日本では20歳が大人。

 ……日本でも大人扱いされる年齢まで生きたかった。




 まぁそれはそれとして、現在の私は健康体!

 素晴らしい! 素晴らしい!! 素晴らしすぎるぅ!!!


「グエッホ、ゲェホ、ゲホゲホ……」


 ちょっと呼吸器官が弱いので、療養させられてますが、大したことじゃない!

 さよなら無菌室! ウェルカム常在菌! アイ・キャン・ファーァイッ!!

 もう日和見感染なんて起こさない!


「お嬢様、お食事の時間で御座います」

「はぁーい」


 呼んでくれたのは、私のばあやです。


 ああ、素晴らしいと思いませんか?

 たとえば朝食。スクランブルエッグと、ホットトースト、蜂蜜入りのマーマレード!

 おやつにクリームの乗ったケーキさえ食べられるんです!!


 前世「ウェンディ」は、ものすごい量のアレルギー持ちでした。

 卵アウト。小麦アウト。乳製品アウト。蜂蜜アウト。

 ケーキなんて夢のまた夢、20種類ぐらいの食材をローテーション。


 なんて素晴らしいんでしょう。もうね、神に感謝ですね!

 え? 信じてるのかって?

 いやぁ、信じちゃいますよね、やっぱり。


 私は前世で、とっても恵まれていました。

 愛してくれる両親がいて、限られた食材を工夫してくれるスタッフさんがいて、無菌室から出られない私が大学で学べるように手配してくれた皆さんがいて。

 それはそれはもう幸せでした。


 そ・れ・が!

 今や、アレルギーがないらしい体になって!!

 私の知らない地質が広がる大地に生きているわけです!!!


 至上じゃないですか?

 もう最高じゃないですか??

 こんなことを体験できるだなんて、神はいらっしゃると思うんですよね!


 というわけで、私は日々の祈りは欠かしません。

 うちの礼拝堂に祀られている神が、その神様かはわかりませんが、日々感謝を捧げます。


 ……だって、私、この世界の歴史をまだ学んでいませんので。

 この世界は「ウェンディ」が妄想したもののようですが、妄想した範囲の歴史に、人類の歴史は含まれておりません! 人類誕生、私は死亡。


 だから、私は前世の「私」が妄想した世界を、この目で確認する!!



 改めまして。私は、アリエラ・ウェンディ・アルステラ。

 アルビノア王国の子爵令嬢。

 現在、5歳です!!




 さて、ばあやに連れてこられたのは、この家のダイニングです。

 今生の私は、子爵令嬢なわけですけれども……推定するに、少なくとも浪費をしなければ収入の心配はない! 調査に専念できそう! やった!!


 ……なわけですけども、ここは別荘? 隠居所? です。

 私の両親にあたる人物は、少なくともここにはいません。


 んー? 顔見たことあったっけ?

 前世18歳少々まで生きてますので、私の精神年齢は20歳を過ぎているわけですが、その私の記憶力を持ってしても、両親の存在はあやふやです。

 まぁ、私にはすでに、たくさんの大切な人がいるんですけどね!


 ダイニングに座ってらっしゃるのは、私の父方の祖父。

 現在は悠々自適(?)のご隠居、先代当主のクロードおじいさまです。


 お年はうかがったことはないけれど、60は……いって、る? かな?

 髪もおひげも真っ白ですし、お顔もシワがありますので……でも、ぴんぴんとお元気です。背筋も真っ直ぐ伸びてらして、やっぱり年齢不詳、かも?


「遅れて申し訳ありません」


 おじいさまは、厳しいところは厳しい方なので、きちんとご挨拶。

 お叱りを受けて、おやつを抜きにされたら、寂しいですし。

 いえ、私はたとえ毎日プディングでも平気ですけども。

 でもそれはそれとして、おやつも食べられるなら、いただかなければ!


 なお、アルビノア王国の文化は、推定するに前期ヴィクトリア朝ぐらいのイギリス、のようです。建築様式とか服飾とか、なんとなくそんな感じ。19世紀……地球の歴史だったら修羅場ですね。最大の修羅場は20世紀なんでしょうけど、このヨーロピアンな雰囲気……大陸で英雄が暴れていたりするんじゃないだろうか。しないといいな。


 ちなみに、言語も、ほとんど英語のようなものです。

 言語の分岐とか、まったく手をつける前に死んでしまったのですけども、アメリカで大学に進んだ私には何の問題もないもので、本当にありがたや、ありがたや。


 まぁアラビア語でもサンスクリット語でも、全力で勉強しますけどね! 読み書きができなかったら、調査報告書がまとめられない!

 夢にまで見たというか、夢で見続けた未知の地質調査……人文地理フィールドワーク……ああ、もう、夢が広がって止まらない! 世界は存在するだけで素晴らしい!!



「アリエラ、その締まりのない顔を改めなさい」

「申し訳ありません、おじいさま」



 どうか、おやつが抜きになりませんように!


 そう願いながら、コックが作ってくれた料理をいただきます。

 ああ、小麦だ……乳製品だ……お肉だ……素晴らしい……!


 お食事中は喋ってはいけない。これがおじいさまのルールです。

 公のマナーかどうかは、まだ学んでいませんが。

 まぁ、前世で味わえなかった数々の食材を口にする幸せを、存分に噛みしめられるので、むしろお食事中に喋るのがマナーでなくて良かったです。


 ああ……幸せだぁ……





なお、ウェンディが「白い眉」っていうのは、たしかウェールズ語だったと思います。ウェールズ語はケルト系なので、英語と全然違うのですが、ちゃんとそこも追々説明します。

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― 新着の感想 ―
まだ2話めですが、ウェンディとウェンディをとりまく人々に泣けてきます・・・とくにご両親・・・ ウェンディご飯もデザートもたんと召し上がれ・・・
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