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子爵令嬢の地学満喫生活  作者: 蒼久斎
§1.転生令嬢アリエラ5歳、子爵家令息ファーガスと友誼を結ぶ
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ウェンディ、転生しました!

諸君、私はブラ○モリが好きだ! 諸君、私はブラ○モリが好きだ! 諸君、私はブラ○モリが大好きだ!

……あの演説は長いので、続きは省略しますが、つまりそういうお話になる予定。

異世界転生で貴族令嬢になってイケメンに囲まれますが、打ち込むことはブラ○モリ。





 ウェンディとは、先住民族の言葉で「白い眉」を意味しています。

 彼らの文化で「白い眉」が、どういう意味を持っているのかは知りませんが、私はその意味を知った時に、一人でニマニマしてしまいました。

 「白い眉」……つまり「白眉はくび」とは、同類の中でも特に優れたものを意味します。それは、中国の三国時代に、馬という家に五人の兄弟がいて、その中でも眉が白かった馬良という人物が、もっとも優れていた故事にちなんでいるのです。


 まぁ、そんなことをですね、この世界の人たちが知っているかは怪しいんですが。



 ……だってここ、異世界(?)ですからね。




 C-414号室の患者「ウェンディ」さんは、享年18歳にして世を去りました。19歳の誕生日まで、あともう一息といったところで、ついにその体に限界が来たのです。

 半分ほど他人事状態で語りましたが、その「ウェンディ」さんと私は、意識を共有しているので、まぁ、日本の感性で言うなら……前世の記憶がある転生、というやつかしら。

 日本の感性でとか言ってるのに、ウェンディって何だよ、という脳内ツッコミが一瞬去来するわけですが、まぁ話せば長いんですよ。


 記憶が戻った直接の切欠というのは、あるようなないような。

 物心がついていく中で、徐々に、徐々に「なんかこんなことやったことなかったような?」「なんかこういう光景を見たような?」が積み重なっていて、なんだか自分の頭に異常があるんではないだろうか、とか、そういう感覚を持つに至りました。


 そして、その違和感が決定的になったのが、世界地図を見た時です。

 おじいさまの「博物展示室ミュージアム」を見た時に、そこに飾られていた地図を見て、私は驚愕し、そして、倒れました。


 なんということでしょう。

 違和感……それは、たしかに私の頭がおかしいことの、証明だったのです!!



 さて、少々長くなりますが、私の前世の「ウェンディ」について話をします。

 生まれた場所は日本です。

 ただ、他に事例も見あたらないような珍しい難病……こういうのは厚生労働省から補助がでません……を、いくつも患っているという、それはそれはもう、虚弱体質の極みのような体に生まれました。

 あ、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群ではなかったです。つまり、幼年期から発症し、平均年齢13歳で、すでに老人の体になって死を迎えかねないような、そういう病気では。


 ただ、いくつものレア難病を抱えていて、研究者にとってはものすごく希少な存在ではありました。日々の症状は細かくリポートされたし、取材を受けた回数も片手じゃ足りません。

 でも、それを面倒くさいと思ったことはなかったです。

 ウェンディの父も医師でしたから。

 でも、その専門は外科。心臓血管外科という、とても重大な、人の生死の境目に立つような、そういう専門の人でしたが、遺伝性の要因を含む娘の私に対しては、有効な手段はとれませんでした。



 父は「お前の体を調べることは、お前と同じ……いや、お前が罹っている病気の一つででも抱えている人にとっては、お前の存在そのものが希望なのだ」と、常々語り聞かせていました。

 あるいは「もっと苦しい状態の子が、こんな風に生存の最長記録を伸ばしてるんだ」という、余命に対する希望だったかもしれません。

 またあるいは「私の病気はこれだけ苦しいのに、さらに苦しい状態で、それでも笑って生きている人がいるんだ」という希望だったかもしれません。


 とにかく父は「幸せに生きるんだ。病気が絶対の不幸じゃないということを、お前の人生で示してくれ」と、何度も何度も言いました。

 その度に、母は笑って言ったものです。


「たった一人の娘のために、そんな社会的なことしか言えないなんて、本当に、不器用な人よね。生きてくれているだけで幸せなんだから、一日でも長く生きてくれているだけで、それでもう自分の幸せが増えるんだ、って……私じゃなくて、この子に言いなさいよ」


 そう言われると、父はいつも決まってぼろぼろ泣きました。

 無菌室のフィルムの向こう側で。


 免疫力が極端に弱い人にとって、菌というのは大敵です。

 しかし、孫子は言っています……「敵を知り己を知れば百戦して危うからず」と。

 奴らの巧妙な生態系を知り、己の脆弱な免疫を……あ、意味なかったわ。何をどう足掻いても、空腹の猛禽が待ち構えているところに、生まれたてのヌードマウス突っ込むぐらい無意味だ。


 あっという間にそんな結論に到達した結果、菌の勉強からは遠ざかり、あれこれいろんな分野をつついて、辿り着いたのが地学です。



 なんで地学なんだよ、と思われるやもしれません。

 しかし、地学は神秘ではないでしょうか?!


 人間の歴史も好きですが、それ以上に、地球そのものの歴史に興味を持ちました。

 宇宙史も好きですが、ちょっと壮大すぎるというか。

 ダイレクトに命の営みにつながっていってるイメージが、すごく興味深かったのです。


 地学はこの世界で人間が生きる上で、必要不可欠な学問です。

 あの世界……前世では、携帯端末であれやこれやがあっという間に何とかなってました。

 けれど、地質学や地理学やをやっている先生方は、皆さん、元気な体をもって、現地調査フィールドワークをこなしておいででした。

 無菌室から出たら、重篤な発作を起こすような超絶虚弱体質に、そんなことは無理。


 最新の現象から、時には何百年も前、あるいは人類が発生するよりも古い時代の出来事を読み解いたりして、本当に、地質学も、地理学も、人文地理学も、私にとっては夢の世界。



 だから、その夢を私も見ようと思ったわけです。

 夢の中なら何でも出来る。

 たとえば、健康体になることもできる。

 そう! 私は学者の卵になって、世界のあっちこっちを駆け回れる!

 まだ見たことのない地形! まだ見たことのない地質!



 しかし、残念ながら、世界には現実の研究者の皆様がいらっしゃいます。

 そこで私は、架空の……そして、現実にはあり得るかも知れない……そういう世界を考えてみました。つまり、まだ誰も十分に探検していない、新しい世界を、惑星ごと妄想してみたのです。


 この宇宙には無数の銀河が広がっていて、あまりに小さすぎて発見されていないだけで、地球とほぼ同じ物理的条件を兼ね備えた惑星があったって、おかしくないのです。

 70億分の1の病気が、ドンピシャ当たった私は、確率が0ではないということは、場合によっては一人の人間にとっては100%であることを、身を以て痛いほど……いえむしろ数々の発作に伴う激痛と共に……理解しています。

 なら、その0ではない確率が、どんぴしゃりした星が、この宇宙のどこかにあるかも知れない。



 私の「脳内創世記」が、そうして開幕しました。


 まずは恒星と惑星との距離、周囲にめぐる天体の設定。基本は太陽系。

 マグマオーシャン、ハビタブルゾーンへの惑星の配置、冷却期間……惑星の主要構成元素は、酸素とケイ素と鉄と……基礎ができあがったら、マントルの対流を考えて、海の位置をおさえつつ、プレートを配置。運動方向を設定して、シミュレーション。大陸プレート同士の衝突で、もりもり高山ができる。

 深層海流を設定。表層海流を計算。高気圧帯に低気圧帯、気流の変化。


 散々妄想を楽しんだので、夜、無菌室に一人でも寂しくはなかったです。


 この創世記は、必死で大陸移動をいじり、人類の発生条件を整えたあたりで、終わりを迎えました。もちろん「ウェンディ」の死によって。




 それでね、ええ。

 今、私という存在がいる、この「世界」なのですが。



 ……どう考えても、これ、「ウェンディ」が妄想していた惑星なんです!!





まだまだ序章です。頭の書きためはあるんで、ほいほい更新していきますよ。

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