008.戦乱の火蓋?
プロットができていないのに
勝手に話が進んでいく...
「新たな銘付き人形だと?」
執務室にやって来たフラワーズ・ナンバー3-1こと桜の報告に対して聞き返すマーチ王国の若き国王、アリスト・テレス王。
アリスト・テレスは偽名である。
名は本名と同じで、姓だけが本名と違っている。
ご先祖さまが、大公さまに許可を貰って付けた姓であるため、姓は恐れ多すぎてあまり好きでなく、今の偽名生活を結構気に入っているようだ。
元々冒険者の家系だった彼は安定した生活がしたいという事で、大公家へのコネで国軍に入隊。
冒険者の家系だけあって、下地となる体力が通常の兵士とは段違いであるため、あれよあれよと言う間に、近衛兵まで昇進。
実力を買われ秘密任務で偽名を使ってマーチ王国に潜入し、諜報活動している時に、銘付き人形の桜を騙し取ったゴールド・ビッグミディアムによるクーデターに巻き込まれた。
センターホーム村で、人形コントローラーを使用したゴールド・ビッグミディアムの命令を泣きながら実行し村人を殺す桜に感化されて、職務を逸脱し、諜報活動だけで良いモノをゴールド・ビッグミディアムを暗殺。
そして、桜の人形コントローラーを手にして、マーチ王国の国王になってしまった。
そう、なっちゃったのである。
「【四季】からの新規ユーザー登録の連絡が自動発信でありました」
【四季】に、新規のユーザーが登録されると登録されているユーザーには、その情報が発信されるようになっている。
当然、桜以外の銘付き人形にも・・・。
「戦乱が落ち着いて10年。新しい銘付き人形の情報が、他国の王に伝われば新たな火種になるか・・・」
辺境5国の軍事パワーバランスによって、なんとか平和が保たれている。
新たな銘付き人形を手に入れる事によって、辺境5国の中で、一番の軍事力を誇ることが出来る。
銘付き人形同士の戦闘、1対1ならまだしも、2対1になれば、勝負の結果はするまでもなく分かる。
辺境5国の内で、新たな銘付き人形を手に入れた国が、辺境5国を統一出来る可能性があるが・・・1国で全ての銘付き人形を所有すれば、周辺国まで被害が及ぶことになる。
「松鶴のいる睦月の国の王、スライライン・スズカ王には、伝わるでしょうね。その他の国は、確率は低いと思います」
スライライン・スズカ王は、アリスト・テレス王と同じ様な経歴を持つ同期の近衛兵である。
先祖代々からのライバルと言っても良い。
アリスト・テレスがゴールド・ビッグミディアムを暗殺をした直後、ライバル心からか、睦月の国で諜報活動中に、睦月の国で無血クーデターを起こしたくらいである。
2人とも、結果的に戦乱の世を鎮めるのに一役買ったために、本国からのお咎めは無しになった。
当然、スライライン・スズカも、偽名である。
「桜、新しい銘付き人形を味方にできるか?」
不安そうにアリスト・テレス王は桜に確認する。
桜は、腕に付けられた人形コントローラーを見せて・・・。
「御命令とあれば」
アリスト・テレス王も腕の桜のと対になる人形コントローラーを桜に見せて命令する。
「桜、命令だ! 頼む」
「喜んで」
桜は、何十年ぶりの笑顔を見せた。
カーマ・ディーアイワイ、カーマさまの遺言を守れるからだ。
『儂が死んだ後、
【四季】を使うモノがいたら
良し悪しを判断し、
悪しきモノなら、成敗してくれ。
もし、良きモノなら・・・儂の・・・
いや、お前たちの好きなようにしろ』
思い出の工房。
カーマさまが亡くなってから、最初に思い出の工房に住んだのは、この国のお姫様と人形師の貴族の夫婦だった。
結婚式にも参加させて貰ったし、お城にも来ていたので、よく知っている。
赤ちゃんも見せて貰った。
銀色の髪に、赤い目、天使みたいな赤ちゃんだった。
ただ、赤ちゃんは、私の顔を見ると、プイっとそっぽを向いた。
それが悲しかった。
でも、私に抱かれても嫌がらずにいてくれた。
本当に幸せそうな家族だった。
そして、その幸せは私が壊した。
なぜ、人形コントローラーなんかが、発明されたんだろう。
あんなモノさえ無ければ・・・。
カーマさまが亡くなってから旅にでた私たちを縛ったのも人形コントローラーだ。
人形コントローラーを付けられると、自分の意志通りに動くことが出来ない。
前々国王の手に人形コントローラーが渡るまでは、思い出したくはない。
辛いことばかりだった。
前々国王は、良くしてくれた。
人形コントローラーで、私を縛らなかった。
命令もされなかった。
お願いはされたけど・・・。
ある日、外出からお城に戻ると、お城の中は血まみれだった。
そう、クーデターだ。
ゴールド・ビッグミディアムによるクーデターが起こっていた。
良くしてくれた国王もお妃さまも、血に染まっていた。
そして、その亡骸をゴールド・ビッグミディアムが踏みつけていた。
私は、力の限り殴り飛ばそうとしたが、出来なかった。
薄気味悪い笑顔をしたゴールド・ビッグミディアムが人形コントローラーを起動したんだ。
それだけで、私は動けなくなった。
悔しかった。
国王を始め、お城では私を良くしてくれた人が沢山いた。
その仇が討てなかったんだ。
翌日、センターホーム村に連れて行かれた。
思い出の工房がある村だ。
そして、命令された。
『殲滅せよ』と・・・。
ヒドい命令だった。
でも、私に出来る事はした。
【四季】との接続を切るのと自分の動きを鈍らせる事くらいしか出来なかったが・・・。
動きが鈍った私にゴールド・ビッグミディアムは罵った。
『ぽんこつ』と・・・。
心を持った人形に対しては最大級の侮辱だ。
でも、人を殺すよりは耐えられる。
お姫様の家族に、直接は手を出さないように泣きながら、頑張ったけど、村人の何人かの命を絶ってしまったし、お姫様の赤ちゃんだった子にも手を出してしまった。
お姫様の赤ちゃんだった子は、私の攻撃を捌きながら、思い出の工房に逃げていった。
血まみれの小さい子を抱きながら・・・。
思い出の工房の中なら安心だ。
あそこは【四季】が護っている。
カーマさまが作った【四季】が・・・。
そう思ったら、私の涙が嬉し涙になった。
ほんの一瞬だったけど・・・。
そして、アリスト・テレスさまに助けて貰って、国が平和になるように頑張った。
この大好きな国を・・・。
あの赤ちゃんだった子は、人形師の道に進んでいるとアリスト・テレスさまから聞いた。
裏から手助けをしているらしい。
そして、あの時の赤ちゃんが大きくなって、あの思い出の工房に住みだした。
その直後に【四季】が動き出した。
きっと、あの子が動かしたんだ。
カーマさまと同じ名前のあの子が・・・。
心が躍った。
心を残すために頑張ってくれたカーマさまに感謝したい。
そのカーマさまの遺言が果たせるんだ。
そう思うと、さらに心が踊る。
桜が執務室を出て行った。
アリスト・テレス王は、壊れた人形コントローラーを撫でて、呟いた。
「15年かぁ、長かったような、短かったような。これで、肩の荷が降ろせる。あの嬢ちゃん・・・いや、坊主か。大公さまとそっくりな坊主が、新しい戦乱の中心になるのか。・・・・・・まぁ、もう少し、坊主のために、頑張ってやるか」
「もちろん、アタシも手伝うわよぉん。カーマきゅんのためだもの」
ビクッと、アリスト・テレス王は驚く。
密室で一人きり、ドアが空いた気配もなかったんだから仕方がないだろう。
「・・・アフロ仮面さんよぉ、びっくりするから、マジ、勘弁してくれよ。一応ここ、国の中で一番ガードが堅いはずなんだけど・・・」
「えっ、そうなの? 普通に歩いて来たわよ? そういえば、アタシが通る直前にみんな逃げて行った気がするわね。後、ここもドア開けて入ってきたし、ノックはしてないけど」
ため息をつくアリスト・テレス王。
「出来れば、普通に来て下さいね。本当にマジで」
「分かったわよぉん」
新しい銘付き人形が作られた事によって、辺境5国が動き出した。
アフロ仮面ってなんですか?
マジ、勘弁してください。




