022.ヤるべき事
「アリスト。その銘無し人形、人形遣い契約履行終了しちゃったんで、人形遣い契約履行してくれ」
言われるがまま、アリストは、人形遣い契約履行をする。
アリストと人形が繋がる。
緑色の葉っぱの幻影が現れた。
葉っぱの先の方から赤く紅葉し始めて・・・突風が!
アリストの人形の後ろに花札のカードが現れた。
『萩に猪』のカードが・・・。
「マスター、おはようであります」
元気良くうりぼーが挨拶をする。
「お、おはよう」
今まで、必要な返事くらいしかしなかった銘無し人形が挨拶をしたんだ。
そりゃあ、驚くだろう。
俺としては、人形遣いにしか出来ない人形遣い契約履行終了を勝手にした事の方を驚いて欲しかったけどな。
「アリスト、すまない。その銘無し人形を勝手に弄って銘付き人形にしてしまった」
「いや、謝られる事じゃ無い。お礼を言いたいくらいだ。いや、お礼を言わせてくれ。カーマ・フラットステータス王子、ありがとうございます。銘無し人形とは言え、カーマ・ディーアイワイさまが製作された人形だ。桜たち相手でも攻撃が当たりさえすれば、何とかなると、さっきは、ああ言ったが、銘無し人形が銘付き人形に一撃を入れる確率は、ほとんど無かった。これで、少しは見せ場が出来ると思う」
見せ場が出来るとか喜ばれると困るんだが・・・。
『カーマ・フラットステータス王子のところに異変があった模様です』
また、アナウンスが流れてきた。
『アリストさんの人形の後ろに花札の『萩に猪』の札が現れました。手元の資料によりますと、アリストさんの人形は故カーマ・ディーアイワイ製作のなんですが、銘付き人形ではなく、銘無し人形だという事だったんですが・・・。えーはいはい。アフロヘアーの怪しい人からタレコミ情報がありました。先ほど、アリストさんの人形が倒れたました時に、カーマ・フラットステータス王子がアリストさんの人形を抱き抱えたんですが、どうも、その一瞬で銘無し人形から銘付き人形に改造したそうです。今回、新たに作られたという新しい人形、この決闘をしても大丈夫だと言う判断材料になった銘付き人形です。その人形が抱き抱えている小さい人形が見えますか? あれが、銘付き人形を製作した人形師、故カーマ・ディーアイワイ氏の人形制作用の【四季】と言う補助システムのようです。それを、カーマ・フラットステータス王子が、まるで自分が作ったシステムのように扱ったようですよ。さすがです。さすがは、私の甥っ子です。皆さん、褒めてやって下さい。・・・・・・ただ、銘付き人形同士の戦闘は、システム上不可能と聞いています。銘付き人形同士が向き合えば、アリストさんは、人形による攻撃が出来なくなってしまいますね。カーマ・フラットステータス王子は、桜さんを含め銘付き人形が2人います。えっ、・・・・・・・・・はいはい。また、アフロ変態仮面からのタレコミです。カーマ・フラットステータス王子がいつも連れ歩いていた人形。当然、皆さんがご存知のドジっ娘人形です。その人形も銘付き人形として、目覚めたそうです。つまり、アリストさんは、1人いれば1国を手に入れる事が銘付き人形を3人を相手にしなくてはいけないんです。アリストさん、きっと、死にますね。先ほど、辞表を出してましたので、殉職扱いになりません。辞表を出す前なら、遺族年金とか出たんですけどね。残念です。惜しい人を亡くしました。えっ? まだ、死んでませんか? あーでも、時間の問題ですね。まぁ、私の甥っ子が代わりに、国王になってくれるのでマーチ王国的には問題ないでしょう』
一国の王だったのに、アリストの扱いがヒドいな。
「アリスト、決闘はどうするんだ?」
「最強の盾も矛も飾りです。もともと、この腕一本でのし上がってきた冒険者の家系です。腕一本あれば、なんとでもなります」
やる気を削るようにしたんだが、アリストは、まだやる気かぁ。
本当に、状況がよく分からないまま、決闘に近付いていく。
『アリストさんは、肉弾戦をするようです。あの可愛らしい姿の私の甥っ子のカーマ・フラットステータス王子と肉弾戦をするようです。見た目の強さではアリストさんの方が有利ですが、実際の強さでは、カーマ・フラットステータス王子の圧勝でしょう。今回の決闘は、カーマ・フラットステータス王子が王位に就くために、王国民に強さをアピールするための儀式的な意味合いが強かったのですが、決闘をするまでも無いくらいです』
それでも・・・、結果が分かっていても、決闘をしないといけないんだろ?
「アリスト。決闘は本気でヤって良いのか?」
「もちろんですよ。手加減無しでお願いします」
足を震わせながら、威勢の良い事を言ってきた。
多少は手加減をしてやろうと思うくらい可哀想に見えてきた。
周りの状況が決闘を逃げ出すことを許さない雰囲気だ。
だから、アリストも逃げ出さないんだろう。
アリストや銘付き人形たちと一緒に闘技場の中央に連れて行かれた。
桜は慣れている感じで、ひよことうりぼーは観客に手を振っている。
たんぽぽは、この状況に落ち着かないようだ。
ガタイの良い白い毛のライオン顔の爺さんと言って良いのか悩むくらいの年齢のヤツが審判だ。
たぶん、一度会っている。
昔、アリストが持っていた人形と同系の銘無し人形を一緒に作ってやったヤツだ。
きっと、アリストの家とゆかりのあるヤツだろう。
結果、決闘自体は盛り上がらなかった。
決闘開始早々にアリストが、土下座を決めた。
見た目の美しさとか全く無視した最速の土下座だ。
俺の手が出る前には、アリストの額が地面に付いていた。
今の俺なら土下座をする前に勝負を付ける事も、出来たんだが・・・。
観客席からは惜しみない拍手が上がった。
ブーイングするヤツはひとりもいなかったと思う。
アリストは、ヤるべき事をきちんとやり遂げたんだろう。
いや、関係者全員がか・・・。
本当に、この決闘に勝って良いものかと悩んでいるうちに勝ってしまった。
俺以外は、俺が勝った方が良かったはずだったから、これで良かったんだろう。
勝負が付いた後、ジィッタ総料理長が抱き付いて来てくれたから、俺的にはこれで満足しておこう。




