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017.春菊の暴走!?

 春菊から突然の現れた煙に周囲の緊張が走る。

 皆は知らない現象に対して緊張していると思うが、俺は違う。

 これから起こる事に対して緊張しているんだ。

 手で合図して、村長夫婦や村民たちを下がらせる。

 ひよこには、村長夫婦と村民たちの守りを頼んだ。

 兵士たちは・・・まぁ、自己責任だろう。

 この危険な香りを感じ取れないなんて・・・。


 と言うか、この香り・・・アルコール臭い。

 ほんと、マジ酒臭い。


 実際、たんぽぽ・・・春菊から、溢れ出ている煙は、お酒だからな。

 なぜ、お酒かって?

 春菊は、そう言う仕様だからさ。


 こうなったら、俺の普段使っている力じゃ抑えつけられない。

 いや、普通の春菊の状態でも無理だが・・・。


 春菊から少し距離を置く。

 こうする事で、春菊の動きに合わせやすくなる。

 ほんの気休め程度にしかならないと思うが・・・。


 桜や兵士たちが来て、扉を開けてからピクリとも動かなかった春菊がのっそりと起きあがってきた。

 ふらりふらりと、上半身を揺すりながらだ。

 まるで、酔っ払いのようだ。


 立ち上がった春菊の後ろに、花札の『菊に盃』の札が現れた。

 フルフラット王国から入ってきたカードゲームで使われているカードと同じデザインである。

 デザインが気に入っっているので、銘付き人形(フラワーズ)の1人1人に名前にちなんだカードを割り当てる予定だった。

 気付いたと思うが、銘付き人形(フラワーズ)は、花札の『花』から取っている。

 当然、目に入ったカードは、本物じゃなく、風の魔石を使った幻影である。

 儂と【四季】が、結構気合いを入れて作ったので、どの角度から見ても札の正面から見ているように見える。


 正直、そんな事を説明している余裕は無い。


 この『菊に盃』の札が現れたって事は、春菊が、100%のパワー、正確には、それ以上のパワーが発揮できる状態である。


 春菊の身体が前のめりに桜の方に倒れだした。

 俺は、セリフより先に動き出す。


「桜、ボケッとするな」


【乙女流:接客術:呼出対応】


 倒れるベクトルを使って、前方へ向かうスピードベクトルに変える春菊。

 俺は、それを上回る速度で、春菊と桜の間に入る。


【乙女流:合気術:刹那・改】


 スピードとパワーのパワーの方へ力の配分を振った体裁きに変える。

 一瞬、止めておいた自分自身の移動ベクトルを桜を突き飛ばすのに使う。

 さっきまで桜の心臓のあった空間に、実際には心臓は無いが、真っ直ぐと伸びてきた春菊の右手のベクトルを全身を使った螺旋の動きでズラしてやる。

 あまりのパワーに、掴んで投げると言うようなベクトルを調整することはさすがに出来ない。

 

「カーくぅん、何で邪魔するの?」


 懐かしい呼び名だ。

 春菊が小さい頃に俺をこう呼んでいた。


 って・・・。


『肯定です・・・後で説明します・・・今は・・・春菊の説得をお願いします・・・』


 聞かれる事が分かっていたように聞く前に【四季】から、返事が来た。


「カーくぅん、その人形(ドール)と兵士たちは、この村を襲って、私やカーくぅんのパパやママを殺したんだよ。そして、私も・・・」


 これは、小さい頃の春菊の記憶だ。

 【四季】は、消したような事を言っていたが、残ってたって事か・・・。

 いや、残していたんだろう。

 姿が変わって、記憶まで無かったら、魂が同じでも、春菊と同一人物とは言えないからな。

 時期を見て、記憶の封印を解こうとでも思っていたんだろう。

 これは、怒るに怒れないな。


 春菊のセリフを聞いていた桜たちに目をやる。

 桜は、俯いて泣きそうな表情だ。

 兵士たちは、春菊のセリフを理解出来ていない表情をしている。


「春菊、それは、お前の思い違いだ。桜は俺たちの両親を殺していない。その場にいた俺が保証する。それに、兵士たちをよく見てみろ。村が襲われたのは15年前だ。その頃、こいつらは、子供だぞ」


「でも、兵士たちは、同じ装備してるし、同じ人形(ドール)を使ってるし、一緒じゃないの? 仲間じゃないの?」


「どこが、同じ人形(ドール)だ! 15年だぞ。あれから、15年経っているんだ。人形(ドール)の技術があれからどれだけ進歩していると思っているんだ。兵士たちが操っていた軍用人形(アームドドール)は、見た目こそ、古いノーフューチャー製の軍用人形(アームドドール)だが、中身は、ヴァーマナ工房製の最新式のA級軍用人形(アームドドール)だ。そして、この村を襲った軍用人形(アームドドール)は、形こそ似てるが、ヴァーマナ工房製の旧型の軍用人形(アームドドール)。春菊、どう見たら、同じに見えるんだ? ほんとにお前は、ポンコツだなぁ」


「そんなの分かんないよぉ。同じに見えるんだからしょうがないじゃない。じゃあ、私は、誰に復讐すれば良いの? この気持ちはどうしたら良いの? この村を襲った同じ軍の兵士に復讐しちゃダメなの?」


「どうしてもって言うのなら、そこの縛られた兵士にしろ。生かしたまま、尋問しようと思ったが、【四季】、そいつの記憶をデータ化しておいてくれ」


『了解です・・・』


 桜の香りとともに、桜吹雪が現れる。

 春菊と同じ様に、風の魔石を使った幻影だ。

 匂いを再現させるのは苦労した。


 これは、桜が見せている幻影だ。

 そして、花札の『桜に幕』のカードが現れた。

 人形遣い契約履行(コネクト)していない状態で、カードを出すとは、余程、気持ちが高ぶっているんだろう。


「ダメです。殺させはしません。罪は、生きたまま償わせないといけません。殺されていた方がよかったと思えるくらいの・・・」


 真剣な表情で桜が、俺と春菊との会話に口を挟んできた。

 春菊とのパワーの差は分かっていると思うが、テクニックでなんとかしようと思っているのだろう。


「分かんない。分かんない。分かんないよぉ。どうしてダメなの? せっかく、復讐出来ると思ったのに、15年分の気持ちが溢れてくるよぉ。もうイヤ、気持ちが抑えらんない。カーくぅんでも、邪魔はさせないよ」


 まるで、子供のような思考だ。

 ポンコツとは言え、もう少し、まともな思考をしてたんだが・・・。

 感情で理性が抑えられないようだ。


 さて、パワー全開中のこの駄々っ子を、説得しろって?

 説得中に癇癪を起こされたら、その時の駄々っ子パンチでイっちゃうぜ。


 この状態の春菊を落ち着かせるのは・・・、春菊のお袋さん、春花さんがが上手かったなぁ。


「分かった。春菊。お前がやろうとしてるのは復讐じゃない。ただの八つ当たりだ。それは、力ずくでも、絶対に止めてやる。・・・春菊、壊れたら、後で、ちゃんと治してやるからな」


 まず、パワーで対抗できるようにしないといけない。


【乙女流:王龍流:龍人化】


 【乙女流】と言っても、ほぼユニークスキルだ。

 俺以外には、ひとりしか出来ないだろう。


 人間・・・ハーフエルフ生活で、不必要なパワーを開放する。

 さすがに全部はマズい。

 白王龍として顕在してしまう全力全開は・・・この村が無くなってしまうから、半分以下の力で・・・。

 ハーフエルフの姿に、角、羽、尻尾が生えている状態だ。


 『アタシのカーマきゅん、か・わ・い・い』とか、クネクネと悶えているアフロヘアーのヤツがいるが気にしない。

 隠れる気あるのか?

 突然、フラッシュを使って遠目から色んな方向から画像を撮ってるし・・・。

 村の端から端へと移動速度がハンパねぇ。

 本当に、あの人は何者だ?

 

「【四季】、念のため、春菊の全データをバックアップしてくれ」


『了解です・・・マスター・・・』


「桜、春菊へのお仕置きの邪魔をするなら、桜のデータもバックアップして貰うが?」


 驚きの表情を見せた桜だったが、プルプルと首を振った。

 テクニックでも埋められない俺との力の違いに気付いたようだ。


「兵士たちを連れて下がっててくれ」


 兵士たちに命令して、下がらせる桜。


「春菊、春花さんのお仕置きを覚えているよな? 15年ぶりに味わってみたいよな?」


 ニヤリと笑い、一歩、また一歩と春菊に近付いていく・・・。


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