016.村長の暴走・・・自爆?
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「もう、会えないと思っていました」
立ち上がり、一歩ずつ、儂の方へ桜が涙をこぼしながら歩いてくる。
今までの事を、心や頭を整理しているようだ。
儂が死んでから約50年・・・色々とあったと思う。
辺境5国の戦乱が落ち着くまで、ずっと最前線にいただろうし・・・。
儂が桜の事を一番知っているつもりだったが、儂が知っている桜はほんの一部でしか無くなった。
これも、儂が生き返ったからだ。
俺が使える【回復魔法】の高レベルの魔法、【回復魔法:レベル7】を使ったとしても、死んだ人間を生き返らせる事は出来ない。
本来なら、桜たちとは、死に別れたので、二度と会えないはずだった。
「儂は・・・カーマ・ディーアイワイは、桜たちに看取られて、亡くなったから、普通は、会えんわな」
当時、カーマ・ディーアイワイは、自分自身を人形にして、生き長らえると言う選択肢は無かった。
男の人形を作る事はポリシーに反するし、魂の移植は儂の固有スキルみたいだったからだ。
魂の移植準備までなら、器となる人形を準備して、【四季】が手伝ってくれれば、誰にでも出来るだろう。
でも、【四季】に手伝わせる事が出来る人間は限られてくる。
それに、魂の移植だけは、儂以外に出来る人がいるのかは知らない。
儂も、松鶴が亡くなる直前にうたた寝した時の見た夢の通りにしたら、本当に魂の移植が出来ただけなのだ。
神さまが到底いるとは思えないが、あれは、神さまの啓示だったのかもしれない。
ただ、魂の移植をするタイミング的に、自分自身には出来ないと判断し、魂の移植をしなかった。
「でも、どうして? カーマ・シンデレラバーストさまに?」
「さぁ、儂・・・俺にも分からん。神さまの悪戯か、それとも・・・。神さまなんて、実在するはずもないから、考えてもしょうがないか。俺は、ここにいる。それで、良いじゃないか」
本当に気付いたら、生まれ変わって、この世界にいた。
その理由を教えて欲しいくらいだ。
だから、そう言うセリフしか言えない。
そして、桜は、そのセリフについて、少し考えている表情をして・・・。
「はい」
心の中で整理がついたのか、にっこりと笑顔を見せてくれた。
儂が知っている桜の小さい頃と同じ笑顔だった。
「で、そっちの兵士は?」
なんか、ほっこりし過ぎて、照れ臭くなったので、空気を変えるために、当たり障りの無さそうな話題を振った。
「えっと・・・。万が一戦闘になった時のために保険として連れてきたんですが・・・」
桜は、申し訳無さそうにチラリと兵士たちを見た。
「面目ないです」
「気付いた時には、やられてました」
「不甲斐ないです」
「マジ許して下さい」
兵士たちが、深々と桜に頭を下げた。
戸惑っていたとはいえ、ひよこに瞬殺だったからな。
「いくら、ヴァーマナ工房製のA級人形と言えども、新人の人形遣いの操作では、出来立てホヤホヤの最新式の銘付き人形には、手も足もでないか・・・」
と言うか、【乙女流:合気術:北斗点穴・改】が反則過ぎる。
この技を、判断・行動パターンデータに登録させれば・・・そう言えば、【四季】のヤツ、プログラム・【乙女流】を別途作ったようだから、そんなに簡単には出来ないか・・・。
たぶん、人形単体では、【乙女流】を使うのは無理なんだろう。
相手の複数の複雑な運動ベクトルの把握と技の結果から自分自身が行わないといけない運動ベクトルを逆算。
それを、刹那の時間で行わないといけない。
実際、【乙女流】の使い手は、身体が勝手に動くようになるまで修行している。
人形が【乙女流】を扱うには、【四季】のフォローが入って初めて扱えるようになると・・・そんなところだろう。
「そう、それです。新しい銘付き人形が出来たからやって来たんです」
やっぱり、ひよこが目的だよな。
「いくら桜でも、ひよこは、渡さんぞ。これは、村長夫婦に貸し出す予定だからな」
プルプルと首を振る村長夫婦。
「確かに、レンタルの約束はしましたけど、伝説的な人形、銘付き人形なんて、私たちには手に余りますよ。国を作れって言うんですか? ですので、レンタルの約束は無かった事にして下さい」
もう戦闘は無いだろうと言う判断をしたのか、村長夫婦が近くによってきて、そう言ってきた。
奥さんは、村長の後ろに隠れて、桜を珍しそうに見ている。
「賢明な判断です。今、銘付き人形の人形遣いになったら、他国の間諜に命を狙われかねませんしね」
桜のセリフに村長夫婦の顔が少し青ざめた。
「そう言う訳ですので、私たちの事は、本当に気にしないで下さい」
「いや、でも、村長が買ってきた人形をひよこの部品に使ってるしな・・・人形代寄越せって言われても、家の代金を払ったばかりだから金ねぇぞ」
「いえいえいえいえ、それでも、気にしないで下さい。気にしないといけないのは、シンデレラバースト家にお世話になっていた私たちお方です。カーマたん・・・カーマたんさまも、シンデレラバースト家の関係者なら、先に言って下さいよぉ」
脂汗をかきながら、すがりつくような感じで、言葉を続けた。
「家の代金も、オトメ家だと思ってふっかけた分はお返しします」
やっぱり、ふっかけていたか・・・。
3歳の時から、働いて稼いだお金と、そこに隠れてるパトロンからせしめたお金をほとんど突っ込んだからな。
「あー、わりぃ、このなりを見て貰えば分かるけど、オトメ家関係者だぜ」
ハッとした表情をする村長。
きっと、この俺の銀髪、赤目、ハイエルフの姿を見て、オトメ家の関係者だと判断してた事を、度忘れしてたのを思い出したのだろう。
「も、申し訳ありません。代金は、全額、お返しします」
ジン姉さんが、大きな溜め息をついた。
「俺は、嬉しいが・・・良いのか? 村長、大損じゃないのか?」
「あ、い、いや・・・・・・もごもご」
損はしないらしい。
ウソはつけないっぽい。
お尻をジン姉さんにつねられている。
あー、この家の値段交渉の時も、脂汗流してたなぁ・・・。
「あーあ、アルカニダみたいな悪い事は出来ないねぇ」
ジン姉さんが口を挟んできた。
「ジン姉さん、良いのか?」
「あー、構わないよ。王国から、この村を買った時には、この家は、この村の代金に含まれていなかったんだよ。逆に管理費を貰ったくらいさ。村の代金より管理費に方が多いんだよ。カーマちゃんさまも知っているように、なにせ、あんな事があった村だしね。そもそも、村を買った時には、この家は結界で誰も入れなかったんだ。カーマ・ディーアイワイさまが住んでいた家という事で、見せ物にする予定だったんだよ。客が来るかは分からないけどね。ハハハ。それで、カーマちゃんさまが、家を欲しいと買いに来た時にも売る気も無かったけど、カーマちゃんさまが結界が無かったように扉を開けちゃったから、少し欲が出てねぇ・・・。人間、悪い事はしちゃダメだね」
うなだれるジン姉さん。
「それくらい、悪い事じゃないだろ。俺も納得して金を払ったんだ」
「ありがとうございます。カーマちゃんさま。でも、この人が言ったように、代金はお返しします。お世話になったシンデレラバースト家の方から、お金はいただけません。頂いたままだと、一生後悔しそうだからね。それに、元々、この家は、カーマちゃんさまが建てられたようですし・・・」
儂の事を聞いていたか・・・。
「村長夫婦がそう言うのなら、分かった。さっきの人形の代金は引いておいてくれ。その代わり、俺の正体は他言無用でな。村民にもよろしく」
「「はい、カーマ(たん・ちゃん)さま」」
ホッとしたような表情を見せた2人。
とりあえず、村長夫婦たちとひよこの件は、話がついたようだ。
俺は、桜の視線に気付いた。
村長とのやり取りを聞いていた桜が、じぃっとこっちを見ている。
「桜、村長たちの話が無くなっても、ひよこは、やらんぞ」
「カーマさま。別に、ひよこを貰いに来た訳じゃないです。ここに来たのは・・・・・・。えっと、ここでは、話しにくいので、家の中に入らさせても?」
村長夫婦や村民、兵士たちを見渡す桜。
「まぁ、そう言う事なら・・・。【四季】、もう済んでると思うけど」
『肯定です・・・結界の設定変更・・・完了しています・・・桜は・・・住宅部までの侵入を許可しました・・・』
「と言うことだ。桜・・・・・・。あ、家に入るついでに、このたんぽぽを中まで運んでくれないか?」
「たんぽぽですか? 昔、カーマさまが作られていた『春菊』にそっくりなんですが?」
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
たんぽぽから白い煙が発生した。
『今度は・・・桜が・・・知らなかったとは言え・・・やっちゃいましたね・・・』
『春菊』と言う、たんぽぽの本当の名前を、【四季】に登録されているメンバーから呼ばれ、封印が解かれた。
今回は、簡単にパワーアップ出来るようした封印が裏目にでた。
いや、正確にはまだでていない。
でも・・・きっと・・・おそらく・・・・・・出るだろう。
【四季】が、気を利かせて、桜が封印を解けるようにしたんだろう。
相手が敵であれ、味方であれ、たんぽぽの封印が解かれても、俺にとっては有利になるからである。
前提として、たんぽぽが俺の味方である事が条件だが・・・。




