015.カーマの暴走!
「カーマ・シンデレラバーストさま。私、桜の人形遣いになっていただけませんか?」
桜のナチュラルなショートボブの淡いピンク色の髪がふわりとなる。
大和の国の民族衣装を自分でアレンジして作ったお気に入りの装備が汚れるのも気にせずに、桜は、膝まついて、頭を下げて、そう言ってきた。
やっぱり、現世での俺の正体に気付いていたようだ。
そう、今の俺の本名はカーマ・シンデレラバースト。
マーチ王国建国前からフラットステータス王家を支えてきた、名門中の名門、名門貴族のシンデレラバースト家の生き残り。
儂が生きていた時代でも超有名だったし、ちょくちょく出資して貰っていた。
代わりに銘無し人形を数体渡したけどな。
それに、今となっては、実際、元名門貴族だが・・・。
ここマーチ王国で暮らすには名門貴族だったシンデレラバースト家の姓は目立ち過ぎるし、当然、王家の方のフラットステータスの姓も使えないだろ?
現国王が王家関係者の生き残りを探して、処刑しているという噂もあったしな。
だから、世界中に広まっている母方の婆さんのオトメ家の姓なら目立っても手を出されにくいので、カーマ・オトメと名乗っている。
オトメの姓の人に手を出すって事は、フルフラット王国にケンカを売ること同意だからな。
もちろん、姓を騙ったりするのもだ。
それに、オトメの姓を名乗る事は、アフロヘアーのパトロンの意向もあったしな。
まぁ、名前については、ここまでにしておく。
今、考えないといけないのは、桜が、俺を人形遣いに指名してきた事だ。
不安そうな桜を見ると、やっぱり、放っておけない。
この表情・・・髪を弄る癖も、小さい頃から変わんないなぁ・・・。
じょじょに、桜に対しての立ち位置が俺から儂へとシフトしていく。
しかし、儂の人形遣いの意味の認識と桜の認識がズレていた。
元々、桜は儂の人形で、譲った覚えもない。
儂が死んだ後、人形遣い契約を無視する人形コントローラーを使って、辺境5国の王が勝手に桜たちを奴隷のように扱い、所有権を主張しているだけだ。
人形遣い契約に必要な魂の情報自体はカーマ・ディーアイワイの時と同じなので、桜たちとの人形遣い契約はまだ有効なのと、桜たち5人の銘付き人形との人形遣い契約が他の誰かに上書きされていないので、儂から見れば人形が盗まれている状態だ。
「なぜ、儂を人形遣いにしようと頭を下げる?」
桜と対面して、すっかり、儂モードになってしまっていた。
人形遣い契約が有効なままなので、頭を下げなくても、儂は、桜の人形遣いなので、桜に自分の人形遣い契約状態を確認して貰えば済む話である。
「私を作った・・・いえ、私を産まれ変わらせてくれた人の遺言です。『儂が死んだ後、【四季】を使うモノがいたら、そのモノに使えよ』と・・・。どうか、その遺言を守らせて下さい」
『儂が死んだ後、
【四季】を使うモノがいたら
良し悪しを判断し、
悪しきモノなら、成敗してくれ。
もし、良きモノなら・・・儂の・・・
いや、お前たちの好きなようにしろ』
儂が言った遺言と似て非なる遺言だ。
『そのモノに使えよ』以外の『お前たちの好きなようにしろ』のつもりだったんだが・・・。
その事を指摘するよりも、今の桜の格好を先に注意しなくてはいけない。
フルフラット王国から伝わった土下座文化。
すっかり、辺境のマーチ王国にも根付いている。
今の桜の格好は、【四季】の判断・行動パターンに最適化されて登録されている無駄に多い大量の土下座のパターンデータの中から選ばれた、これぞ正統派の土下座っていう土下座だ。
一度、数十ページに渡る土下座のパターンリストを見せて貰ったが、『大回転ハイジャンプ腹切りスライディング土下座』って何だ?
腹を切ったら死んでしまうではないか・・・。
桜に、そんな土下座をされる前に土下座を止めさせなければいけない。
「ちょっと、落ち着いて、頭を上げてくれんか」
土下座をする方は必死かもしれないが、される方は複雑な心境だ。
あそこで、桜にボコボコ・・・手加減されてはいたが・・・にされたアルカニダのスパイが土下座をしたのなら頭を踏みつけてヤろうと思うが、娘のような桜にされるのは、マジ勘弁してくれ。
「いえ、イヤです。人形遣いになっていただけるまで止めません。どうか・・・どうか・・・、お願いいたします。カーマ・シンデレラバーストさまのお父さま、お母さまにお世話になりながら、この村を襲撃してしまった事、お二人を救い出せなかった事・・・カーマ・シンデレラバーストさまにお仕えして、償わせて下さい・・・」
泣き崩れる桜。
この表情はマズい。
儂は、こういった表情を見たくなかったから、頑張ってきたんじゃないのか?
そして、桜望みを叶えてあげたいだけの気持ちで返事をしてしまった。
そう、これからの起こる事を、全く考えずに・・・。
「ああ、分かった。分かった」
ぱぁっと、表情が明るくなる桜。
「よかったぁ。あ、壊れていない、ちゃんとした人形コントローラーを持ってくれば・・・」
ニコニコした表情で、そう呟いて、服の色々なところに、手をやって、見つかるはずのない人形コントローラーを探している桜。
桜の呟きや行動に気付かずに、別の事に集中しているカーマ。
「これで良いか?」
【人形遣い契約履行】
桜に人形遣い契約が有効なのを分かりやすくするために、人形遣い契約履行をした。
人形遣い契約履行によって、ほんのりと青白く光る桜。
人形遣いになると言う事は、人形遣い契約すると言う認識の儂が、ベストだと思う事をしたつもりだった。
「えっ?」
人形遣い契約されずに、いきなり人形遣い契約履行された桜は驚いた。
そもそも、桜は人形遣い契約される事を想定していなかったし、当然、人形遣い契約履行もだ。
カーマ・ディーアイワイが生きていた時代とは違い、人形遣いは、人形コントローラーを使う人間で、人形遣い契約して、人形遣い契約履行する人間ではないからだ。
『マスター・・・やっちゃいましたね・・・人形コントローラーを使うだけで良かったんですが・・・』
【四季】が呆れた感じの声で言ってきた。
桜は、袖からカードを取り出すフリをし、パンツに仕組まれたシステムを起動させた。
そして、自分の設定画面を開いて、人形遣い契約状態を確認した。
「カーマさま・・・カーマ・ディーアイワイさまの人形遣い契約が、人形遣い契約履行状態に・・・。と言うことは・・・。カーマさま、だったんですね・・・」
両手を口元に当てて嬉しそうにポロポロと涙を流す桜。
人形遣いについての認識がズレていた事に気付いた。
そして、暴走していた思考が、通常状態に・・・?
「あぁぁぁぁぁぁぁ、今の無し。今の無し。人形遣い契約履行終了。人形遣い契約履行終了。人形遣い契約なんて無かった。無かったんだよ。えっと、人形遣いになるには、人形コントローラーを準備すれば良いんだっけ?」
これで、バッチリ誤魔化せて・・・ないよなぁ・・・。
PS4を買いました。
時間を喰われまくりです。




