013.兵士の暴走
今作の敵はアルカニダっぽい
「オレのハートが・・・・・・。オレのハートが・・・。せっかく、桜さまに良いところを見せて、取り入ろうとしたのに・・・。ち、ちくしょう。お、お前ら、何、ぼーっとしてるんだ? さっさとコイツらの捕獲せんか。オレのハートの・・・いや、オレに恥をかかせたヤツらを身動き取れないようにして、オレの自尊心を守れ!」
軍用人形をヤられた兵士が、他の兵士を煽りやがった。
これは悪手だ。
何も考えていない、ただ、感情だけで動きやがった。
安物の素材を使った素組みの人形でも、もうちょっと・・・かなりまともな反応をする。
さすがに、フリーアルカニダの人形だがな。
ほんと、こいつはマジ斜め上過ぎるぜ。
まるで、獣のようだ。
注意深く気を探ると、笑顔の下のこいつの本質は、どす黒い感情・・・瘴気の塊のような兵士だ。
本当に、こいつがこの国の兵士?
煽られた兵士たちは、戸惑いながらも人形コントローラーを使って、軍用人形を操作しだした。
この操作の不慣れな感じ・・・実戦経験の少ない新人の兵士っぽいな。
それでも、人形コントローラーがあれば、それなりに役に立つのか・・・じゃなきゃ、軍用人形もここまで普及しないか。
そして、この状況に、桜は、焦った表情をして兵士を止めに入ったが一歩及ばなかったようだ。
まぁ、平常心以下の状態で、桜たち5人の銘付き人形は力を出し切る事が出来ないか・・・。
でも、そのおかげで、余裕綽々だぜ。
この隙に、たんぽぽを・・・って、マジ重い。
引き摺って、メイド服が破れるのはイヤだし。
いや、ほんと、マジに高いんだぜ。
そんなメイド服がマジ破れたら・・・今、金がねぇんだよ。
脱がしてから、移動させる手は、ロマンがあって魅力的だが、俺には刺激的すぎる。
後、細かいパワーの加減が出来ないから、本気出すのもヤバいしな。
と言うか、この状況で、パンツが見えないってどういう事だ?
不思議に思って、って、そういう魔石が組み込んであるだけなんだけどな。
それが無ければ、まだ、価格が抑えられてたんだがな。
そう思いつつ、たんぽぽのスカートの裾を持ち上げようとすると・・・。
「貴様ら止めろ! 人形を止めんか。このお方を傷付けたら、ここにいる全員の首を差し出しても収まらんぞ」
桜のセリフで、動きが止まった。
『貴様ら止めろ!』に反応した訳じゃない。
やましい事なんかしてない。
する前に止めたからな。
だから、ノーカウントだ。
マジに、チラッとも見てねぇぜ。
ほんとだぞ。
俺が、反応したのは『このお方』ってところだ。
『このお方』って、俺の事か?
それとも儂の事か?
たぶん、俺の事だろう。
赤ん坊の時にちょこちょこあった事があるし、桜がこの村を襲った時にもやり合ったからな。
赤い目に銀髪、そして、ハイエルフ。
そんな存在は、この世界で、4人しかいないからな。
男だと限定すれば2人だな。
まぁ、俺調べだが・・・。
いや待て、と言うことは、桜は俺の正体を知って、ここに来てる?
ひよこの存在がここに来るトリガーになったのは確かだと思うんだが・・・。
つまり、桜が言っていた交渉に来ているって話しは・・・。
まだだ。
そう言う設定で来てるかも知れないしな。
「大丈夫です。桜さま。すぐ、捕獲しますから」
殴りたくなるような笑顔なんて久々だ。
擬音で表すと『ホルホルホルホルホルホル』って感じだ。
笑顔は、普通、周りもほっこりさせるモノだろ?
こいつの笑顔は、きっと、誰が見ても殴りたくなるだろう。
いや、こいつの仲間だけは、殴らないだろう。
こいつと同じ考えを持つヤツ、俺と対極的な考えを持つヤツだけだ。
つまり、こいつは、悪党だ。
あー、だとしたら、仲間でも殴るな。
それくらいの笑顔だ。
「だから、捕獲はしなくて良い。今日は交渉しに来てるんだ」
9体の軍用人形は桜の制止を避けながら、ひよこの隙を狙っている。
攻撃が来ないのは、コントロールしている兵士が戸惑っているからだろう。
ひよこの牽制も巧いのもある。
桜が力を出せていないのも大きいだろう。
それでも、ひよこは、出来立てホヤホヤの人形とは思えねぇ。
まぁ、それだけ、【四季】に蓄積された判断・行動パターンデータが洗練されているのだろう。
「捕獲すれば、交渉せず、命令で済みますニダ」
「ニダ?」
兵士のセリフの語尾を桜が繰り返す。
ポロッと、口癖が出たようだ。
「『済みますよ』です」
一瞬、『まずった』と言う表情を見せたが、素知らぬ顔で言い直す兵士。
「貴様、アルカニダか?」
桜の表情が真剣になる。
さっきまでの表情が嘘のようだ。
アルカニダ。
犯罪者を捕まえると、ほとんどのヤツは、語尾に『アル』か『ニダ』を付けるのが口癖の民族だった。
また、そいつらは、150年ほど前の銀川大地震によって大被害を受けた民族の生き残りの子孫でもあった。
そして、そいつらをまとめてアルカニダと呼ぶようになった。
アルカニダって呼ばれた兵士は、何かを少し考えたようだ。
いや、計算したのか?
「ウェハハハ、いいえ、先月、帰化してるからちゃんとマーチ王国民ニダ。ただし、マーチ王国には忠誠を誓って無いニダよ。この国は色々とユルいから、忠誠をしなくても、入り込むのは楽だったニダ。ウェハハハ」
さっきの笑顔より、殺気が増した・・・・・・ごめん。
マジ、ごめん。
他の兵士たち、そして、桜も呆然としている。
あ、いや、俺の心の中のセリフに対してじゃないぞ、もちろん、元アルカニダのセリフに対してだ。
「マーチ王国の軍の情報を組織に提供して、金を稼ごうとしたニダが、人形12体・・・13体・・・、ノーフューチャー製は金にならないニダから、銘付き人形含めて3体ニダか。組織に、情報より、人形を持ち帰った方が、儲かりそうニダ」
元アルカニダの兵士は、桜、ひよこ、倒れた軍用人形を含めた10体の軍用人形・・・そして、たんぽぽを見て、そう呟いた。
と言うか、10体の軍用人形をノーフューチャー製と判断するなんて、こいつ馬鹿か?
確かに偽装はしてあるが、全然、形や素材が違うだろ!
「だから、反対だったんだ。帰化する前や帰化したての人間を国営の組織で働かせる事に・・・。せめて、帰化してから4世代目以降にしろと言ったのに・・・。まぁ良い。貴様のおかげで、これから、そう言うルールにするように提言出来る。その点だけは、礼を言っておこう。さて、ここまで、白状したんだ。後は、詰め所で洗いざらい聞き出してやる」
桜は、ゆっくりと、元アルカニダの方へ歩き出す。
それ以外の兵士も状況が理解できたようだ。
軍用人形を元アルカニダを囲むように仕向けた。
「何言ってるニカ? オレ様の方が、有利な状況だから話しただけニダ」
「貴様の方が、有利だと?」
首を傾げる桜。
あー、桜には、気付きにくいかもな、元アルカニダの不自然な格好に・・・。
念のために・・・。
使いたくないが・・・。
マジ、使いたくないが・・・。
本当に、使いたくないが・・・。
【乙女流:接客術:売場把握・改】
超精密モードで、元アルカニダを探る。
人形や女性ならまだしも、野郎相手に使いたくなかった。
特訓の賜物で、服の下の色や形まで分かっちゃうんだぜ。
この技を野郎に使うと、目の前に、野郎の裸が現れるんだ・・・見たくねぇだろ?
まぁ、見たいヤツは、置いておくとして、元アルカニダが右手を突っ込んでいるポケットを探る。
8cmほどの怪しい魔道具っぽいモノでスイッチが付いている。
プッ
見たくないが、偶然目に入った、元アルカニダのイチモツ。
思わず吹き出しちゃったじゃねぇか。
フルフラット王国では、『コリ○ンサイズ』って言われてるヤツだ。
どうも、今の状況に興奮して戦闘状態になっているんだが、魔道具っぽいモノより遥かにちっちゃい・・・。
プッ
笑ってちゃいけない。
ラーマふぉんのパーティ念話モードで、【四季】にこの事を伝える。
『プッ』
余計な事まで伝えたら、【四季】も同じ様な反応だった。
「思考の出来ない人形には、分からないニダよ。ホルホルホルホルホルホル」
やはり、ポケットの中の魔道具が、こいつの自信の源か。
元アルカニダの兵士は、ポケットから取り出した魔道具を天高く掲げた。
それと同時に、天が光り、その光は、元アルカニダの右手に握られた魔道具に向かった。
「それじゃあ、これで、言う事を聞いて貰うニダ。人形コントローラーのハッキングツール『50Rocks』で、全ての人形よ止まるニダ。そして、オレの言う事を聞くニダ。ウェ~ハハハニダ」
元アルカニダ・・・いや、組織に戻るような事を言っていたし、マーチ王国のためではなく、アルカニダの組織のために・・・、実際は、自分のためだろうが、アルカニダの組織の利益になるから、アルカニダのスパイで充分だろ。
そのアルカニダのスパイの命令と同時に、軍用人形の時間が止まった。
今週の土曜も午後から寝てました・・・
きっと今日も・・・




