011.カチャリ
最近、執筆時間の確保が大変です。
「お城の方からやってきました。ちょっと人形の事で伺いたんですが?」
桜とは違う声が聞こえた。
兵隊のひとりの声だろう。
俺が間違えるわけ無い。
桜の声だぜ。
桜の。
聞こえた声は、男の声だから、絶対に桜の声じゃない。
てか、セリフが怪しすぎるぜ。
この家の南方は全てお城の方なんだが?
まるで、アルカニダの宣伝文句のようだ。
あいつら、フルフラット王国の方からやってきましたって、相場以下の価格で商品を売っているんだ。
宣伝文句のセリフ通りに受け取れば、フルフラット王国製の商品が安い価格で買えるって事になる。
でも、『フルフラット王国の方』なんだよ。
フルフラット王国製とは、言っていない。
ただただ、フルフラット王国製と勘違いするようなセリフ回しなんだ。
こう言うところが、あいつら、アルカニダの売り込みが上手いところだ。
フルフラット王国や遮那王国の製品は値段が高いけど品質は良い、そして、あいつらの商品は安いんだよ。
悪かろう安かろうで、品質に対しては、その値段でも高いんだが・・・。
でも、フルフラット王国や遮那王国の製品に比べれば破格の値段だ。
だから、売れてしまう。
あいつらは、利益になるし、フルフラット王国製や遮那王国製と勘違いをした人は、フルフラット王国製や遮那王国製の製品は大したことが無いって判断してしまう。
売れさえすれば、あいつらのメリットは大きい。
人形業界もヒドい。
アルカニダが経営しているスリースターズ社、HG社、ノーフューチャー社が攻勢をかけてきている。
辺境5国のうち3ヶ国は、この3社がかなりのところまで喰い込んできている。
この3社から、軍用人形も導入されているようだしな。
本当に権力に喰い込むのも上手い。
アルカニダに、3国の中枢は乗っ取られているんじゃねぇか?
おっと、悪い癖だ。
思考がズレた。
さて、外の桜と兵隊は、どうしたものか・・・。
この家の中にいるのが一番安全なのは分かっている。
カーマ・ディーアイワイ、儂が作った家だしな。
難攻不落は、この家にこそ相応しい言葉だ。
「【四季】、結界はどれくらい保つんだ?」
昔、銘付き人形を見せて欲しいと言ってきた娘連れのハイエルフの夫婦の奥さんにお礼として指導して貰ってこの家に張った結界だ。
かなり強力で、桜や銘付き人形でも、許可がなければ力ずくで入ることが出来ない仕様になっている。
普段は、関係者以外には、教えたりしないレベルの結界だそうだ。
今思えば、この結界って【乙女流:陰陽術】だ。
『マスターが家の中にいるので、半永久的に可能です・・・』
半永久的か・・・食糧が続けばだが・・・。
『インダス』で出せば良いんだが、食糧の品揃えはイマイチなんだよ。
こないだ、カップラーメンって珍しい食べ物を出してみたんだが、パリパリパサパサしててのどが渇くんだよ。
袋に入ってた、味付け用の粉も味が濃すぎて、これまた、のどが渇く。
きっと、ほかのも変な味の食べ物なんだと思う。
『インダス』以外で、食糧さえ確保出来れば、半永久的に家の中なら安全に過ごせる。
だが、村人は安全ではないか・・・。
兵隊が村人を盾にするかも知れん。
まだ、ほとんどの村人に挨拶すらしてないが、見捨てる事はしたくないな。
【乙女流:接客術:売場把握】
家の外の状況を確認する。
桜と兵隊が10人と人形が10体か・・・。
村長夫婦と村人が、離れたところでオロオロしてるな。
ここは、前国王に襲われた村だからな。
その時と同じく先頭に立つのは桜。
出来れば、桜にもこれ以上、手を汚させたくはないが・・・。
チラッと、ひよこを見る。
エヘッと言う感じで笑顔を見せてくる。
こういったところは本当に人間っぽいな。
って、ひよこはまだ真っ裸のままじゃん!
シーツ姿での戦闘シーンを見てみたい気がするが・・・。
いや、是非見たい。
今、見たい。
すぐ、見たい。
さぁ、見よう。
そう思うだろ?
てか、切羽詰まった状態なので、冗談は置いといて、『インダス』で、ひよこの装備を準備する。
俺と同じ装備の色違いの雪をイメージした白色のをな。
ガルーダの毛で作った布を使った装備で、ベストとズボン、インナーが、短いタンクトップとスパッツで、フルフラット王国の王国軍で使われているヤツだ。
あの、金が有り余っているフルフラット王国の王国軍の標準的な装備だぜ。
問題があるはずねぇ。
俺のは、婆さんから貰ったヤツらしい。
母さんが、嬉しそうに自慢してたっけ。
婆さんが、ご先祖さんからお古を貰ったのを貰ったと。
神様から賜ったと言う嘘っぽい枕詞が付くヤツだ。
この家に置いてあったので、村が襲われた時も無事だった。
金色の刺繍が施してある真っ赤な装備で、結構気に入ってて、身体のサイズが合うようになってから、ずっとこの装備ばかり着ている。
後は、グローブとブーツ、そして、神珍鉄製の武器を準備する。
「ひよこ、この装備に着替えてくれ」
装備一式を、ひよこに渡す。
ひよこは、シーツでしっかりと肌をガードしながら、装備を受け取った。
「はいっです」
そして、片手で胸を隠しながら器用に装備を確認し、着替えを・・・。
【乙女流:接客術:早着替え】
サクッと、ひよこが装備に着替える。
ほんの0秒の出来事。
ちょっ、まっ。
何それ?
着替えシーンって、それだけ?
集中してたら、着替えてるとこを見れたけど・・・不意を付かれた。
てか、プログラム・【乙女流】を書き込むの許可したけど、普通、【乙女流:合気術】じゃないのか?
それも、【乙女流:接客術】って、街での工房の下積み時代に俺が編み出したオリジナルの【乙女流】だぞ。
さっき使った時のをデータ化したのか?
それとも、そんな時代から、【四季】は俺のデータを集めてたのか?
「マスター、ひよこ、どこか変ですかっです?」
子犬が自分の尻尾を追いかける様な感じで、ひよこは自分の装備をクルクル回りながら装備をチェックしている。
俺が、考え事をしていて、難しそうな表情をしてたから、不安に感じたんだろう。
本当に、人間っぽいな。
「別におかしくは・・・」
ひよこに返事をしている最中にドアを叩く音が聞こえた。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン
「桜さまがわざわざ足を運んでいるんだぞ、さっさと開けんかっ! 力ずくでドアを壊して開けるぞ」
さっきとドアを叩いたのと同じ兵士だ。
桜に良いところを見せたいのか分からないが、馬鹿なのは確実だ。
「貴様は、何を言っているんだ。今日は交渉に来てるんだ。馬鹿な事を言ったり、手荒な真似はするな! それに、ここは、私でも、壊せない強力な結界がはってあるんだ。中から扉を開けない限り、何やっても、やるだけ無駄だ」
以前の桜なら、この結界の中に入れたんだが、この村を襲った時に、【四季】が結界の中に桜が入れないように設定をし直した。
馬鹿っぽい兵士を窘めているところを聞くと、まともな感じがする桜。
それが演技だと言う可能性もある。
そうじゃなきゃ、馬鹿っぽい兵士の説明がつかねぇ。
村人を盾にされるまで、もう少し様子を見るか。
焦ることはねぇ。
家の中にいるうちは安全だしな。
とりあえずの方針をそう決めた。
後はたんぽぽたちに・・・。
「ダメですぅ。大事な家なんですから壊さないで下さいよぉ。すぐ開けますから、ちょっとだけ、待って下さいよぉ」
カチャリ・・・キィィィ・・・
家の玄関の扉が開く音がした。
目が点になるってこう言う事か、出来れば体験したくなかったな・・・。
本当に、このポンコツは、何をしでかしてくれるんだ。
「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
って、今度は、悲鳴かよ!
ちぃっ、扉を開けたまましゃがみ込むなよ。
結界が解除されちまったじゃねぇか。
まじかる☆ひより・・・。
いや、ぽんこつなのは、たんぽぽのほうです。




