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桜並木で

 次の日、学校に行く途中、僕はまた腹痛を起こしてしまった。もちろん頑張ろうと思ったものの、学校の駅が近づくにつれ、腹痛はどんどん悪化していく。たまらなくなった僕は、結局一つ前の駅で降りてしまった。


 ガラガラの駅のトイレから出ると、次に来る電車は十分後だった。なかなか来ない電車を待っている気になれず、昨日通った土手に向かった。


 今日は家をかなり早く出てきたし、歩いて行っても学校に間に合うはずだ。昨日より早いけれど、トワに会えるだろうか。そんな期待をしながら、僕は歩き出した。下を向く癖は、今日のところは封印していた。

 

 風が強い日で桜吹雪が舞っていた。それを見ていると、腹痛のことは忘れてしまっていた。僕は土手の桜並木に沿って早歩きで歩き出す。今日は少し早いからトワには会えないかもしれない。

 

 強い風が吹いたので僕は少し歩く速度を落とす。後ろから衝撃があって僕は足を止める。カバンが強い勢いで引っ張られ、思わず引き寄せた。斜めに倒れそうになっている自転車にトワがまたがっていた。自転車にしがみついているという感じだ。髪の毛が乱れていてきれいな顔立ちがあらわになっている。

 

 状況がよく飲み込めず、今の出来事を頭の中で反芻する。すれちがい様に衝撃があったのは、トワが僕のカバンを引っ張ったに違いない。僕が反射的にカバンを引っ張り返したのでトワが飛ばされてしまった。


 それならトワは相当スピードを出していた。それにしても相当危ないことをする・・・・・・。


「びっくりした!急に引っ張るから」

 トワが不機嫌そうな声をあげる。僕は大きくため息をついた。


「それはこっちのセリフだよ。トワが先にカバンを引っ張ったんじゃないか」

 いつも抑えていたのに、感情むき出しの声が出てしまい、僕は驚いていた。トワは自転車を留めると、こちらに近づいてきた。ちょっと怒っているような表情だ。


「乗って」

「え?」

「今ので自転車漕ぎたくなくなっちゃった。ほら。早く乗って」

 トワは僕のカバンをまた乱暴に引っ張ると自転車の前かごに投げ入れた。


「早く!」

 トワの口調が怖いので、僕はしぶしぶ従った。僕はなんとなく女の人に命令されると逆らえない性質なのだ。自転車にまたがると、サドルの高さにびっくりした。トワより僕の方が高いのに不公平だと思う。


「早く漕いで」

 後ろにまたがったトワが僕の腰に腕を絡ませる。


「早く。早く」

 リズムをつけながら言うトワの頭が僕の背中に当たってドキッとした。自転車に乗って校門を抜けようとすると西先生とすれ違ってしまった。西先生は、あきれたような顔をして下駄箱のところで待ち構えていて、僕たちを職員室に連れて行った。


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